制服を脱ぎ捨てて、私服に着替える。
学校指定のカバンから、
プリントファイルを引っ張り出す。
あと何回、これができるんだっけな…
「これから、どう学校生活を過ごして行くか」
について、原稿用紙3枚〜4枚程度で書きなさい。
そんなん、いつも通りに決まってんじゃん!
なんてツッコミはできない。
だって、いつも通りになんてできない。
透明なデスクマットの下。
もう4ヶ月も前の部活予定表が入ってる。
すぐ触れる場所のちっちゃい本棚。
教科書や参考書で、ほぼ埋まってる。
はぁーっ……こっからの学校に楽しみとか、
友達とかに会えるくらいしかないじゃん…
ふと、カバンでスマホがぶるると鳴った。
別の学校に通う友達からのLINEだ。
「進路決まったってね!おめでと〜!!」
……そういえば、高校受験の時もそうだったっけ。
あの時は、確か…
気がつけば、朝になっていた。
思わず机から飛び上がったけど、どうせ休日だし、作文の提出期限は1週間先。
はぁ…よかった……。
それに、昨日の夜に書いたノート、
ヨダレの餌食になってない。
進路先でやりたいことリスト。
ふと、後ろでスマホがぶるると鳴った。
あ……やっべ…
夢の中。
寝過ごしたあとみたいな、
こわ〜っとした音が頭の中で流れていた。
酷い頭痛。
それも忘れるくらい、
不思議で綺麗な光景が広がっていた。
空いっぱいの、緑の縁を持つ金字。
点と、線と、円とが規則正しく並んでいる。
星座円。時計。魔法陣。
真っ黒な草原に佇む自分は、
ただ、口を開けて眺めるしかなかった。
それ以降、明晰夢を見ていない。
時計の針の音、車が走る音、筆を走らせる音。
1人の部屋では、どんな音も激しく聞こえる。
時報、クラクション、人が話す声。
街中では、どんな音も小さく聞こえる。
どっちが静寂に包まれているんだろう。
自室で作業をしていると、
景色が白むほどのゲリラ豪雨がやってきた。
街全体を水が覆っていく。
大きな音を立てて、人々をずぶ濡れにして。
まるで、寂しがるいたずらっ子のように。
いじわるなことを言われても、
まったく手を緩めない。
加減がわからず、
誰かに迷惑をかけてしまっても、
雨は変わらず雨のまま。
少し、いや、とても羨ましい。
どうしてそこまで、
誰かに対して何かをしようと思えるのか。
どうしてそこまで、
雨として自身を貫き通せるのか。
話ができるなら聞いてみたい。
屋内の声も掻き消えるほど、
激しい激しい通り雨。
誰にも聞こえないなら、
私も何か口ずさんでみようか。
秋になると、私は本とお茶が恋しくなります。
一冊の本とフレーバードティー。
本来、いつの季節でも楽しめるものですが、
友人に「なんだかお洒落だね」と言われて以降、何故か手が伸びなくなってしまっていました。
素朴な自分でいたかったのでしょうか。
からかわれるのが嫌だったのでしょうか。
自問してもわかりませんが、
どちらにせよ、人目につかなければ
いいだけのはずですが……
そんな謎のプライドを吹き飛ばすほど、
「読書の秋」「食の秋」と言う言葉は魅力的なようで、無意識に本とお茶の準備が進みます。
(大義名分の問題…?)
時間も忘れて本に没頭したら、寝る頃には
頭痛に襲われることもしばしば。
花粉と寒暖差が激しくなければ、
ずっと秋でもいいのに…