しらじら

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9/29/2022, 10:26:54 AM

時計の針の音、車が走る音、筆を走らせる音。


1人の部屋では、どんな音も激しく聞こえる。


時報、クラクション、人が話す声。


街中では、どんな音も小さく聞こえる。


どっちが静寂に包まれているんだろう。

9/27/2022, 10:24:26 AM

自室で作業をしていると、
景色が白むほどのゲリラ豪雨がやってきた。

街全体を水が覆っていく。
大きな音を立てて、人々をずぶ濡れにして。
まるで、寂しがるいたずらっ子のように。

いじわるなことを言われても、
まったく手を緩めない。
加減がわからず、
誰かに迷惑をかけてしまっても、
雨は変わらず雨のまま。

少し、いや、とても羨ましい。

どうしてそこまで、
誰かに対して何かをしようと思えるのか。
どうしてそこまで、
雨として自身を貫き通せるのか。
話ができるなら聞いてみたい。

屋内の声も掻き消えるほど、
激しい激しい通り雨。

誰にも聞こえないなら、
私も何か口ずさんでみようか。

9/26/2022, 11:07:39 AM

秋になると、私は本とお茶が恋しくなります。

一冊の本とフレーバードティー。
本来、いつの季節でも楽しめるものですが、
友人に「なんだかお洒落だね」と言われて以降、何故か手が伸びなくなってしまっていました。

素朴な自分でいたかったのでしょうか。
からかわれるのが嫌だったのでしょうか。
自問してもわかりませんが、
どちらにせよ、人目につかなければ
いいだけのはずですが……

そんな謎のプライドを吹き飛ばすほど、
「読書の秋」「食の秋」と言う言葉は魅力的なようで、無意識に本とお茶の準備が進みます。
(大義名分の問題…?)

時間も忘れて本に没頭したら、寝る頃には
頭痛に襲われることもしばしば。

花粉と寒暖差が激しくなければ、
ずっと秋でもいいのに…

9/25/2022, 12:28:18 PM

私が住んでいる町は、
高台ならどこでも海が見える。

中でも、3階の音楽室の窓から見える、
たった数センチの海が一番好きでした。
中高と吹奏楽部に入っていたのは、
そこから海を見るためでもありました。

海を見ながら練習したり、
仲のいい部員とサボってぼーっと眺めたり、
戸締りの時には海風を感じたり…

「おくのほそ道」の授業をしていた頃、
それに感化されて海へ行くことがありました。

両親が仕事で遅くなる日。
家の門限を破って、自転車で夜の海へ。
超特急の弾丸旅行です。

でも、何かが違う。
音楽室の海ほど好きになれない……

きっと、「安心感」がなかったからでしょう。
あの音楽室には、部員である仲間と、
海に飲み込まれない距離がありましたから。

恐怖心にうち勝てば、
いつか直接見る海も好きになれるでしょうか。

9/24/2022, 10:41:34 AM

私は高校に入ってすぐの頃、
同性の先生からのハグに救われました。

当時、私は散財恐怖症とでも言いましょうか。
お金を使うことが怖くて、食べる時もシャワーを浴びる時も、できるだけ節約しよう、少なくしようとしていました。
それは病的な程で、白いはずのシャツが、
いつも汗で黄ばんでいるような程でした。

なんせ思春期。
当然の事ながら、同級生は私をからかいます。
詳しい脈絡は忘れてしまいましたが、
その事を問題視した先生が、音楽室の小部屋で吹奏楽の練習をしていた、私のところに来られました。

からかわれる事は嫌なのに、どうしたらいいのかわからない。
当時は散財恐怖症を自覚していなかったため、
支離滅裂にそう先生へ訴えました。
「ちょっと立って」突然の指示に言われるがまま従うと、先生は両手で私を抱きしめました。

「ごめんね、ごめんね」泣きそうな声を絞り出して、強く抱きしめてくださいました。
数日に1回しか洗濯をしていなかった私からは、
きっと悪臭が出ていたでしょうに。

何故抱きしめたのか。何故先生が謝ったのか。
視野の狭かった私にはわかりませんでしたが、
「負けちゃいけない」「強く生きなさい」
一見、押し付けがましいその言葉からも勇気を貰えました。

国語の先生だったその方は、きっと形の無いものの価値をわかっておいでだったのでしょう。
お金のためではなく、自分が自分であるために行動できるようになったのは、それからのことでした。

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