しらじら

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私は高校に入ってすぐの頃、
同性の先生からのハグに救われました。

当時、私は散財恐怖症とでも言いましょうか。
お金を使うことが怖くて、食べる時もシャワーを浴びる時も、できるだけ節約しよう、少なくしようとしていました。
それは病的な程で、白いはずのシャツが、
いつも汗で黄ばんでいるような程でした。

なんせ思春期。
当然の事ながら、同級生は私をからかいます。
詳しい脈絡は忘れてしまいましたが、
その事を問題視した先生が、音楽室の小部屋で吹奏楽の練習をしていた、私のところに来られました。

からかわれる事は嫌なのに、どうしたらいいのかわからない。
当時は散財恐怖症を自覚していなかったため、
支離滅裂にそう先生へ訴えました。
「ちょっと立って」突然の指示に言われるがまま従うと、先生は両手で私を抱きしめました。

「ごめんね、ごめんね」泣きそうな声を絞り出して、強く抱きしめてくださいました。
数日に1回しか洗濯をしていなかった私からは、
きっと悪臭が出ていたでしょうに。

何故抱きしめたのか。何故先生が謝ったのか。
視野の狭かった私にはわかりませんでしたが、
「負けちゃいけない」「強く生きなさい」
一見、押し付けがましいその言葉からも勇気を貰えました。

国語の先生だったその方は、きっと形の無いものの価値をわかっておいでだったのでしょう。
お金のためではなく、自分が自分であるために行動できるようになったのは、それからのことでした。

9/24/2022, 10:41:34 AM