ふうり(小説家希望の13歳)

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2/13/2023, 10:31:21 AM

私には初恋の人がいた。
もう、小一の頃だから、曖昧だけれどもね。
でも、よく公園で遊んでたな。
確か、彼が遠くへ引っ越してしまったんだっけ。

『ねぇ、龍くん!どこへ行くの?』
『ごめんね。さくちゃん。』
『結婚するって言ったよね!龍くん!』
『うん。ねぇ、さくちゃん、俺、必ずさくちゃんのこと迎えに行くから、待ってて』

あの時は、帰って、ずっと泣いて…
なんか、懐かしいことを思い出したな。
龍くんとは、5歳差で、本当にお兄ちゃんみたいだったな。
自分の席に座る。
龍くん、私、今日で高校生になったよ。

ガラガラガラ

教室のドアが開く。
「はーい。座ってください。」
聞き覚えのある声が聞こえ、伏せていた顔をバッと上げる。
え…もしかして
「今日から1年、皆さんの担任の藤田龍介です。よろしくお願いします。」
龍…くん…?
なんで?ここにいるの?
「まぁ、一通りの説明は以上です。この後は授業とかないので、気をつけて帰ってください。」
皆各々と教室を出ていく。
それに紛れ私も教室を慌てて出る。
待って、なんで、龍くんが…?
「おーい。片倉ー?お前説明聞いてたか?」
後ろから、私の大好きな声が聞こえる。
「お待たせ。さく。」
私の目からは、沢山の涙が溢れ出た。

《待ってて》

1/27/2023, 12:03:10 PM

私のクラスには、すこし変わった男子がいた。
名前は、たしか杉田(スギタ)くん。
誰とも関係を持たずに、ずっとひとりでいる。
まるで、一匹狼のようだ。

そして、最近彼からの視線をやけに感じる。
わ、私の顔に何か着いているのかな…?
はぁ、それより、今日はやけに頭が痛い…
「莉央(リオ)ー!体育一緒に行こー!」
仲の良い友達から誘いを受け、「うん」と言って席を立った。
あー、今日ちょっと体調が優れないかも…
寝不足かな…
まぁ、成績を上げるためなら、少々無理をして体育出るか…

「じゃあ、グラウンド5周自分のペースで走れー」
あぁ、もう最悪だ。
こういう時に限って、こう言う辛い内容だ…
「莉央ー!一緒に走ろー?」
「あー、ごめん、私足怪我してて、先行ってて!ゆっくり行くから!」
そう断って、ゆっくり走る。
あー、本当に痛い…
休むべきか…?
どっちにするか迷っている時、後ろから声をかけられた。
「おい、ちょっと。」
私を呼んだのは杉田くんで、グイッと腕を引っ張られた。
「えっ!」
連れてこられたのは、校舎の日陰になる場所。
「ほら。これ。羽織っとけ。」
杉田くんは着ていたジャージを脱ぎ、私に渡してくれた。
「えっ、でも…」
「お前、体調悪いんだろ。安静にしとけよ。」
ひょいっと背中を向けてしまった杉田くん。
ドキッ
「えっと、ありがとう…」
杉田くんって、少し、不器用なのかもしれないな
私は、彼の事をもっと知りたいと思った。

《優しさ》

1/26/2023, 10:24:53 AM

午前0時。
今日も、現れてくれなかった。
少し派手な窓を開ける。
はぁ、夜の空気は心地が良い。
『日付が変わる頃、必ず僕が貴方を迎えに参ります。』
"必ず"
彼が最後に残した言葉を頭で再生させる。
もう、1年がたつ頃か…
私は、ある貴族の一人娘。
昔から両親が過保護で、外にはあまり出られない。
それに合わせて、恋愛なんてしてこなかった。
けど、私はある1人の執事に恋をした。
私達は話していくうちに、仲良くなり、しだいに、恋人同士になった。
けど、ある日、ほかのメイドに関係がバレてしまった。
そして、彼はクビになった。
私がクビにしたようなもの。
「早く、迎えに来てよ。」
そんな声は、誰にも聞こえなかった。
「迎えに来ましたよ。お嬢様。」
えっ?
今、幻聴?彼がここに来れるはずがない。
声がした後ろを振り向く。
そこには、紛れもない、彼がいた。
「ふふっ、随分待たせちゃいました。」
「な、なんで、ここに…」
緊張で手が震える。
まさか、会えるなんて。
「ご主人に、『なんでもします。全て期待に応えますので、どうか、お嬢様との婚約を認めることは出来ないでしょうか』って、何度も、何度も申したら、許してくださいました。」
お父様…
すると、彼は静かに跪(ヒザマツ)いた。
「私と、結婚してください。」
嘘…指輪まで用意してくれたの…?
もちろん、私の返事は…
「喜んでっ!」
外は真っ暗な中、私達の周りは真夜中の夜空の星達よりも輝いていた。

《ミッドナイト》

1/26/2023, 9:54:51 AM

「ねぇ!颯太(ソウタ)くーん!」
「これなんだけどー!」
この学校でも、トップクラスに入るほどモテる颯太。
実は、彼と内緒でお付き合いしている。
理由は、私がそんなに目立ちたくないから。
颯太くんは、そんな私のわがままを受け入れてくれた。
そして、いくつかの約束が出来た。
__________________
1 異性と仲良くしない
2 2人きりにならない
3 連絡は基本取り合わない
__________________
颯太も、そんな仲良くはしていないけど、周りには私より何倍も可愛い子が沢山いる。
はぁ、
何回もため息が出てしまう。
これも、私自身のせい。
可愛くなる努力をしないから。
ダイエットとか、お肌のケアとか、どうもすぐ飽きてしまう。
10人中、あの周りにいる子と、私、どっちを恋人にする?と聞かれたら、10人全員が周りにいる子を選ぶだろう。
そう思うと、どんどんと不安が私を苦しめる。
もし、颯太に別の好きな子が出来たら?
もし、私が飽きちゃったら?
考えただけで恐ろしい。
颯太と出会ったのは、本当に奇跡としか言いようがなかった。好きになってくれたのも、奇跡だった。
はぁ、
私はもう何も考えたくなく、机に顔を伏せた。
「凛(リン)大丈夫か?」
心地よい低音ボイスが耳にスッと入ってくる。
えっ?颯太?
「どうしたの?体調悪い?」
心配するように顔を覗き込んだ颯太。
「保健室、行こう?」
普段強要はしないから、颯太が何を考えているのか分からないけど、こくりと頷いた。
教室を出て、しばらく歩く。
私は1つ疑問に思った。
「えっと、保健室はこっち側じゃ…」
「しーっ!」
唇に人差し指を当て、少し小走りで廊下を歩く。
少しして颯太はピタッと止まった。
「空き教室…?」
颯太は私の手を引き空き教室へ入っていく。
「どうしたの?颯太。」
何かあったのかな…
…このシチュエーション、もしかして…
昨日読んだ小説には、ここでヒロインの子が別れを告げられていた。
も、もしかして…
「あのさ、凛。」
ビクッと肩が震えた。
私、どうやって立ち直れば…
ポンっと、優しく私の頭に手を置いた颯太。
「お前、ずっと心配そうに俺のこと見てただろ。」
聞こえてきたのは、そんな優しい声だった。
「えっ?」
「大丈夫。俺、本当にお前しか見てない。気づいてないかもだけど、俺、結構凛のこと見てるからな?」
その言葉に、酷く安心した。
「颯太の周りの子、すごく可愛い子ばっかりだから、不安だったんだ…」
私がそう言うと、颯太は私を抱きしめた。
「お前が、1番可愛いよ。」
顔は見えないけど、私も、颯太も。どっちの心臓もドキドキしているのは分かった。
そして、私の不安はさっぱりと無くなった。

《安心と不安》