「ねぇ!颯太(ソウタ)くーん!」
「これなんだけどー!」
この学校でも、トップクラスに入るほどモテる颯太。
実は、彼と内緒でお付き合いしている。
理由は、私がそんなに目立ちたくないから。
颯太くんは、そんな私のわがままを受け入れてくれた。
そして、いくつかの約束が出来た。
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1 異性と仲良くしない
2 2人きりにならない
3 連絡は基本取り合わない
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颯太も、そんな仲良くはしていないけど、周りには私より何倍も可愛い子が沢山いる。
はぁ、
何回もため息が出てしまう。
これも、私自身のせい。
可愛くなる努力をしないから。
ダイエットとか、お肌のケアとか、どうもすぐ飽きてしまう。
10人中、あの周りにいる子と、私、どっちを恋人にする?と聞かれたら、10人全員が周りにいる子を選ぶだろう。
そう思うと、どんどんと不安が私を苦しめる。
もし、颯太に別の好きな子が出来たら?
もし、私が飽きちゃったら?
考えただけで恐ろしい。
颯太と出会ったのは、本当に奇跡としか言いようがなかった。好きになってくれたのも、奇跡だった。
はぁ、
私はもう何も考えたくなく、机に顔を伏せた。
「凛(リン)大丈夫か?」
心地よい低音ボイスが耳にスッと入ってくる。
えっ?颯太?
「どうしたの?体調悪い?」
心配するように顔を覗き込んだ颯太。
「保健室、行こう?」
普段強要はしないから、颯太が何を考えているのか分からないけど、こくりと頷いた。
教室を出て、しばらく歩く。
私は1つ疑問に思った。
「えっと、保健室はこっち側じゃ…」
「しーっ!」
唇に人差し指を当て、少し小走りで廊下を歩く。
少しして颯太はピタッと止まった。
「空き教室…?」
颯太は私の手を引き空き教室へ入っていく。
「どうしたの?颯太。」
何かあったのかな…
…このシチュエーション、もしかして…
昨日読んだ小説には、ここでヒロインの子が別れを告げられていた。
も、もしかして…
「あのさ、凛。」
ビクッと肩が震えた。
私、どうやって立ち直れば…
ポンっと、優しく私の頭に手を置いた颯太。
「お前、ずっと心配そうに俺のこと見てただろ。」
聞こえてきたのは、そんな優しい声だった。
「えっ?」
「大丈夫。俺、本当にお前しか見てない。気づいてないかもだけど、俺、結構凛のこと見てるからな?」
その言葉に、酷く安心した。
「颯太の周りの子、すごく可愛い子ばっかりだから、不安だったんだ…」
私がそう言うと、颯太は私を抱きしめた。
「お前が、1番可愛いよ。」
顔は見えないけど、私も、颯太も。どっちの心臓もドキドキしているのは分かった。
そして、私の不安はさっぱりと無くなった。
《安心と不安》
1/26/2023, 9:54:51 AM