百合

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4/9/2025, 4:15:31 PM

元気かな

ふと思い出す時がある。
同じ名前の人がいたとき。
好きだと言っていた音楽が流れたとき。
一緒に行った場所を通ったとき。
別に未練があるわけではない。かといって凄く嫌いなわけでもない。
ただ私の人生の中で少しだけ存在感のあった人。
この先一緒にいていいかもと少し思えた人。

…元気かな

4/8/2025, 4:11:49 PM

遠い約束

「何があっても守ってあげる」
そう言った幼い彼に幼い私は
「ほんと!?約束だよ」
と無邪気に返した。

そんなこともあったなと目の前にいる彼を見ながら思い出す。幼いながらに頼もしかった彼は今、私にひどく冷たい目と鋭い刀を向けている。
私は私の信念を貫いた。
彼も彼の信念を貫いた。
でも2人の信念は何一つとして交わらなかった。
私は彼に理解をしてもらえない信念のために命を投げ打つ。
彼は私が理解できない信念のために私を殺す。
ただ交わらなかったというだけで…
彼が今からすることはあの時の約束を果たすものではない。逃げられなくなった私をある意味救うための行動である。
彼が刀を振り上げた時、冷たい目の中にひどく悲しいものが見えた。
きっと彼は人を、幼馴染を安易に殺せるような人間ではないのだ。きっと昔のように優しい彼のままなのだ。
そんな彼の不器用さに呆れと哀れみと嬉しさを感じ、微笑みを浮かべた。
私の微笑みに僅かに怯みながらも、彼は私の首へと刀を送った。

私をあの世へと送る彼を恨みはしない
約束を守ってくれなかったと恨みはしない
ただいつか、交わらなかったが故にどちらかが犠牲になることがない平和な世で、あの約束を守ってほしい。

4/7/2025, 3:47:28 PM

フラワー

盛大な音楽と共に出てきた私たちにあれを届けられる。
ふわりと優しく舞うように届ける人もいれば、打ち付けられているのではと笑いたくなるように届ける人もいる。
幼い頃は何が嬉しいのだろうかと思っていたけれど、愛する夫と愛する家族や友人に囲まれてこれを届けられるのはなかなかに嬉しく、幸せを感じるものだった。

そう幸せだったのだ、あの時は…
私はもうあれを二度と受けないかもしれないし、もしかしたら別の人と受けることになるかもしれない。
でも今の私にはそもそも受ける資格がない。 
そして幼い頃のように何が楽しいのかと馬鹿にするまでになってしまった。
今あれを私とは違ってキラキラとした目で見る愛する娘があれを受ける時
私は誰よりも彼女を想って届けられるだろうか
私が一度は幸せを感じたあのフラワーシャワーを。

4/6/2025, 3:04:57 PM

新しい地図

もうすぐ大学2年生としての生活が始まる。
大学は地元から離れたところにあるから、大学1年生の時は右も左も分からずいつも地図アプリと睨めっこしていた。
あれから1年。大学周辺の地形がだいぶ分かってきて、移動しやすくなった。友達や先輩から〇〇集合ねと言われても、迷わず辿り着けるくらいには成長した。
でも動きやすくなった分、何気なくあるものが見えるようになった。
必ず猫が通り過ぎる小道とか、1年中花が絶えない公園とか、ずっと商品が変わらない自販機とか。
何気ないというか、知らなくても別に得も損もしない
でも地図アプリには載ってない私だけの地図。
私の地図はどれだけ詳細になるのかと考えると、この1年も楽しめる気がする

4/5/2025, 11:40:57 AM

好きだよ

幼稚園の頃は難なく言えたこの言葉。
いつだろう、この想いを伝えられなくなったのは

漫画みたいに隣の家同士とはいかなかったけど、比較的近くに住んでいていつも一緒にいた幼馴染。
幼い頃からお互いのことを知り尽くしているから、どのタイミングで会うとか、話したくなるとかが感覚的に分かって楽だった。そしてなにより彼の前では自分らしくいられた。
でも中学生になった時、その関係は今まで通り行かなくなってしまった。違う学校に通っているわけでもない、彼に彼女が出来たわけでもない。
何も変わってはいないはずなのに何かが変わってしまった。だからくだらない冗談で笑い合うことも、2人で帰ることも、どちらかの家でゲームすることもなくなった。
そして彼は陸上部で私はダンス部に所属し始めて忙しくなったから、そもそも会うことも少なくなってしまった。
たまに会えたとしても、名前を呼ぼうとすると目を逸らされてしまって話しかけることすら出来なくなってしまった。
先週も見かけたのに、昨日も帰っているところに出くわしたのに何もしなかった、というか怖くて出来なかった
(なんでこんなになっちゃったかなぁ)
ひとり部屋で嘆いてみても改善も解決策も見当たらなかった。





いつからだろう、好きだよと彼に言えなくなったのは
好きの形が変わったあの時からだろうか

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