3ヶ月前
私は出張から帰ってきた彼にキスをした。
いつもはもっとしていたくなるキスをすぐにやめたくなった。
リップも歯磨き粉も何も変えてないのに、何かが嫌だった。
でもその時は気分じゃないのかなって思って唇を離した。
ある日、友達から電話がきた。
飲みにでも誘われるのかなと思い、鍋の火を止めて電話に出た。
友達は聞いたこともないような震えた声で私の名前を呼んだ。
何か彼女の身にあったのではと思い、心配の言葉をかけると
「あんたの彼氏…他の女とキスしてた…。」
と告げられた。他にも色々言われたが、私にはこの言葉しか記憶に残らなかった。
平然と帰ってきた彼に私は
「誰とキスしてきたの?」
と冷たく言った。
彼は動きを止めて私を見つめた。
その後、浮気がバレたことを理解したのか醜い言い訳を始めた。
くだらない言い訳を聞き流して私は言った。
「いつからしてたの?」
彼は口を震わせながら
「3ヶ月前」
と答えた。
あぁ…本当に女の勘はよく当たる
きっと3ヶ月前の私は気づかぬふりをしたんだ。
ずっと好きだよ
彼はその言葉を軽々しく使う。
絶対元カノにも言ってるに違いない。
私と別れたら次の彼女にも言うに違いない。
あーあ。こんなこと考えずに、その言葉を素直に受け止められる可愛い女の子になりたかったなと思いつつ
私も
と毎回同じ返事をする。
彼の言うずっとはおそらくずっとじゃない。
私が今ここで別れようと言ったら、彼はきっと少しだけ駄々をこねてみるけどすぐ諦めて別れるだろうし。
彼の中で綺麗な記憶として残っている初恋の美来ちゃんが現れたら、私なんか捨てられるだろうし。
まあ、彼の言うずっとなんてそんなもんだ。
でも私があの言葉を私から発した時。
その時は多分1年、10年、100年、1000年などという決まりきってる時間なんかじゃ表せないくらい、私は彼をずっと好きでいるだろう。
ねえ、いつになったら私にあの言葉を言わせてくれるの。
これで最後
女は時にわがままだ。
優しい人がタイプとか言っておきながら、バカ真面目な男には目も向けず、少し悪いところがある男の方へ走る。その先に自分が期待しているような、報われるような結末が待っていないのは分かりきっている。
でも、そんな恋を突然終わらせようとするのも女のわがままだ。
どんどん沼っておきながら、ふとこのままだとダメだと思って這い上がってくる。彼の甘い言葉に再び沼へ戻されそうになるけれど、なんとか自分を言い聞かせて本当の幸せを手に入れようとする。
まさに今、私は沼から抜けて幸せへと走ろうとしている。でも、これは自分の人生におけるある意味幸せで、苦しくて、報われなかった恋だから。あなたにとっては多くあるうちの一つかもしれないけれど、少しでも記憶に残してほしいから。私は突然裏切るような悪い女を演じる。許してね…これが本当の幸せを見つけられなかった私たちの最後だから
君の名前を呼んだ日
ずっと先輩呼びだった。
大学生の時に好きになったけど伝えられなくて先輩は卒業した。そしたら社会人になって偶然出会って、3回デートした。3回目の時に告白されるかなと期待してたけど、先輩から告げられたのは海外転勤のことだった。私はずっと好きだったし、一緒にいたかったけど、先輩はずっと海外での仕事を目指してたから応援するしかなかった。
あの日から2年。もう先輩を忘れようと思ってからも2年経った。大事な時期に先輩を思い続けるのは良くないと、色んな人と関わって、時には出かけたりした。
それでもドキドキも安心感も何もかも先輩に敵う人はいなかった。ある日サークルの飲み会があって行ってみると、先輩の話題になった。どうやら明後日、日本に帰ってくるらしかった。先輩と仲の良かった私の同期が私に5時の飛行機らしいよとそっと教えてくれた。
今さら会って何が起こるだろうか。なんて捻くれた考えを巡らせながらも、ありがとうと同期に伝えた。
そしてすぐに先輩の帰ってくる日になった。運がいいのか悪いのかその日は仕事が午後休みになっていた。
仕事から帰って、お風呂に入って、化粧をして、髪を巻いて…会えないかもしれないのに、会っても何も起きないのに
デートと同じように、いやそれ以上に気合を入れて空港に向かった。
先輩が出てくるであろうゲートの近くの椅子に座った。
向こうで彼女ができてるかもしれない。私の顔を覚えてないかもしれない。そんなことをぐるぐる考えながら先輩を待った。
するとゲートから多くの人がぞろぞろ出てきた。
さっきまで考えていたことなんか忘れて、ただひたすらに先輩を探した。
「あ…いた。」
色んな思いが込み上げてきて泣きそうになる。
それでも頑張って立ち上がって、先輩の方を見た。
先輩は私に気づいて驚いた顔をしながらゆっくり近づいてきた。
なんて言おう…おかえりなさい?お久しぶりです?
いや、私がまずいうべきは私が今まで言えなかった
あなたの名前だ。
やさしい雨音
ぽつ…ぽつ…
わずかに聞こえる雨音で目が覚めて、ゆっくり目を開けた。
いつもは嫌いなこの音。
傘はささなきゃいけないし
濡れたら寒くなるし
洗濯物も乾かないし
…だからこの音はいいことが起きない証みたいなもの
でも今日は隣に君がいる
いつもなら夜帰るけど、帰らずに今も隣でぐっすり眠り続けている
この雨が止んだら帰ってしまうから、今はまだ止まないでほしい。
まだ私にやさしくいてほしい