蒼ノ歌

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11/23/2024, 10:15:05 AM

『落ちていく』

目を閉じる。
落ちゆく感覚は引っ張られる感覚に似ていると気づいた。
今私は、限りなく空に近い。

9/16/2024, 5:29:55 AM

『君からのLINE』

いつもみたいに、家族グループのLINEにメッセージが届いていた。
大抵、このグループに流されるのは、誰が私や弟を迎えに行くかや夕飯の調査、その他諸々の事務連絡である(私は"彩"を加える為にしょーもないことを呟き毎度悉く軽くあしらわれるが)。私が実家を離れてからは、家族の近況や帰省の連絡などで使われることが多くなった。
さてなんの話だろうと思いLINEのトーク画面を開く。どうやら、父の今日のゴルフの結果についてらしい。父は大のゴルフ好きで、私が小さい頃から、車のトランクにいつでもゴルフバッグが積まされていたり、洗面所でスイング練習したり―――兎に角ゴルフの話が尽きない人であった。
相変わらずだな、と今も昔も変わらない父の健やかさを感じながらLINEを見ると―――なんだか文面が...少しポップな気がした。
(遂に父さんも絵文字というものを使って...?!)
生真面目で無駄を削ぎ落としたような父の文調とは全く違った。
(そんな顔文字、家族で使うの私ぐらいじゃん!!なんだなんだ!!)
可愛らしいニコニコの絵文字やら顔文字やらスタンプやらを好奇心の赴くままに連爆している気がした。珍しいじゃないのよ、と思っていたが、それもそのはず。なぜなら、そのLINEの主は"父ではなかった"のだから。
メッセージの最初に、まだスマホを所持していないはずの弟の名前があった。嗚呼そういうことか、と、納得した。
その日、丁度父のゴルフの予定が入っていたのだが、どうやら弟もついて行きたいとねだったのだろう。楽しいことは共有したい弟のことだから、父のスマホを借りてLINEにメッセージを打ち込んだのだと、そう思った。
身体には合わない大きな大人用クラブを一丁前に構えて、楽しそうに父の真似をする弟の写真が後に送られてきた。
(そっか、父さんについてったんだね)
思ったことをそのままメッセージにして返す。待ってましたと言わんばかりに、すぐ返信が返ってきた。
『うん、たのしかった‼️
 上手だって父さんほめてくれたんだよ(*^^*)😊』
LINE上で弟と会話をするのが珍しくて、また続いてメッセージを送る。その後も何分か今日のゴルフについての会話は絶えなかった。
『父さんにそろそろスマホ返すからお話しおわるね』
なんだか、すっっっっごく多幸感。なかなかできないことができて嬉しかった。
『バイバイ‼️』
その一言を見た時、何故だか涙が出そうになった。
普段は生意気でいかにも思春期の男子という言動の弟。そんな弟がやりとりの最後に「バイバイ」を言うとは。現実の行動としては何も珍しくないのだけれど、こうしてメッセージ上でそれを言う人はなかなかいないものだから、なんだか愛おしく思えた。
LINEでこんなに嬉しいと思ったのはこれが初めてだった。今更ながらに、私を唯一「姉」という存在にしてくれる弟にはなんだか良くしてあげたいなんて思った。
あまりに珍しいからスクショを撮ったのは秘密である。

8/9/2024, 4:56:01 PM

『上手くいかなくったっていい』

そう言ってくれる誰かは年々減るけれど。
その分私が誰かに言ってあげたいの。

7/20/2024, 8:10:04 AM

『視線の先には』

私が瞳に映す景色にはいつもキミが入り込んでくる。
キミがそんなにしつこいから、いつの間にか夢の中にまでキミは出てきてしまった。
でも、なんだか不思議と嫌ではないね。

俺の瞳が見据える向こうにはいつもあなたが居ますね。
あなたの所為ですよ、俺が朝目覚めたら思い出すのは真っ先にあなたです。
しかし、どこか安心します。



ああ、むしろ視線の先に捉えていたのは、こちらだった。

7/18/2024, 2:39:16 AM

『遠い日の記憶』

街の喧騒、コンクリートが敷き詰められ、背の高いビルディングが立ち並ぶ。人、パトカーのサイレン、ヒト、車、そして人。少しだけ息がしづらい。

私の記憶は、酷く静かなものだ。
それはまるで、広い平野の畦道で遠くに聳える山を眺むような、葉の擦れる音が空に舞うような、白い軌跡を残す飛行機の音が何処からか聞こえてくるような、そんな感じだ。
記憶の中の時間は緩やかで、今よりも少し周りが綺麗に見えていた。
色で例えるならなんだろう...青いかもしれない。青春の青さとは少し違った青。なんとなく白や緑な感じもする。毎日風を感じていた。嗚呼、"爽やか"なのかもしれない。
あの時は、私の瞳まで青く染まっていたような気がする。
...戻りたい、戻らせてちょうだい。そう願ってしまう。

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