蒼ノ歌

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6/6/2024, 7:01:32 AM

『誰にも言えない秘密』

私はどうやら、周りからあまり(自分のことに関して)秘密主義だとは思われていないらしい。
「貴女ってあんまり秘密なさそうだよね」
「私達に素直に自分のこと話してくれるよね」
「逆に秘密聞いてもらっちゃってるわ」



私は、秘密主義だ。それであって自己に関して保守的だ。
秘密っぼいことを“秘密っぽく”話す。
そうすれば、“本当の秘密”はバレない。
今まで他人から聞いてきた恋愛事情やテストの成績とは、申し訳ないが比にはならない。
そう安くは売り飛ばせない秘密。

6/4/2024, 6:30:50 AM

※今日のお題に関係ありませんが、読んでくださると幸いです。
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『母の日〜ありがとうママさん〜』


「ねぇママさん、そうだ。今年は母の日と誕生日、どっちにプレゼントほしい?」
「うぅ〜ん、どっちもかな」
「ちょっと冗談よしてよ」
「欲しいもの後で連絡するからそれ買ってくれると嬉しいな」
「え、嘘、こういうのって私から何か選んで贈るものじゃないの⁉︎まさかのオーダー⁉︎」
「えぇ〜いいじゃん‼︎」
「いいじゃんじゃないよォ〜‼︎ママさんが欲しがるもの、私からしてみれば毎年結構なお値段するからね...流石にどっちかだけにしてくれ‼︎パパさんは私の金銭面をちゃんと気遣ってくれたのに」
「じゃあ〜そうだな━━━━」


〜〜〜
昔から、買って‼︎、と言っても買ってくれない母親だった。だからといって特別不満があるわけでもなかったし、それに“本命”は誕生日とかクリスマスに貰える。気づけば物をねだることはあまりしなくなった。

でも、その日は少し違った。

何年前だったか、もう記憶はないが、その時私は母と一緒にショッピングモールを訪れていた。夕飯の買い出しだ。
その頃の私はまだまだお子ちゃまだったから、レジに並ぶのは到底耐えられるはずもなく、お菓子コーナーを物色していた。
そう、ただ物色していた、眺めていただけだった。
私の生まれつきだろうか、いっぱいに並んで揃えられているものを見るのが好きだった。今日も、それなだけ。
お子ちゃまだったから、しゃがんでものを手に取ったりした。箱の中身が気になってシャカシャカと振ってみたりもした。お子ちゃまだから。
その時、私の足元が陰った。
不思議に思って少し見上げると、レジに並んでいたはずの母がいた。私が口を開く前に、母は言った。

「それ、買うよ」

じゃあ買って‼︎ありがとう‼︎、と私は即答した。ほんの少しだけ、“ワクワク”しながら。
まぁでもお子ちゃまだから、そんな感動は尾を引かず。1日足らずで食べてしまったのだが。

私はあの時を確かに記憶している。
当時はあの衝撃を自分の言葉で形容出来なかったが、今思えばそれは単純で、きっとものすんっっっっごく、ただ“嬉しかった”んだと思う。
お菓子に感動していたのではない。母が買ってくれたという事実が、とてつもなく嬉しかった。
〜〜〜


「じゃあ〜そうだな〜...」
母は、その時何を思ったのだろう。



「薔薇、かな」



「え、薔薇?...だけで良いの?」
金銭面を気遣ってほしいと言ったばかりの我ながら、おかしな返しをしてしまったと思った。
「うん、お花欲しい‼︎お花‼︎」
あの時の私も、そんな顔をしていたのだろうか。
「...はァ...なるほど。じゃあ...」
私は昔を思い出して、あの時の母の気持ちが少しだけわかった気がする、なんて思ったりした。
そして、お子ちゃまを卒業した私は今度こそ口を開いた。



「それ、買うよ」

4/30/2024, 12:29:52 PM

『楽園』

少年が手に取った古文書に、それは書かれてあった



「楽園」
 日の光の音が聞こえた時
 鳥の囀りが棚びく時
 風が身体を巡る時
 暖かな手に招かれる

 人々が雲の上に夢見るそこは
 鮮やかな花々で溢れている
 
 楽園とは決して手の届かない場所ではない

 しかし行こうと思い行ける場所でもない

 
 月のかげが水面に映る時
 鳥の地鳴きが星屑に掬われる時
 全ての音が一つになった時
 涼やかな声に導かれる
 
 その時は
 突然としてやってくるかもしれない

 






♡200到達
読んでくださる皆様、ありがとうございます

4/20/2024, 7:14:44 AM

『もしも未来を見れるなら』

もし未だ来ないものを今見られるのなら
きっと私は見ないだろう

ネタバレ、喰らいたくないから

4/5/2024, 2:08:59 PM

『星空の下で』

「これは398エンね〜......はい、毎度あり〜」
客は男から2〜3cm程の光る玉を受け取る。
珍しそうに眺めると、ポッケに突っ込んで店を後にした。
「次のお客様ぁ〜...」
「...あの」
目の前に現れたのは幼い少女だった。
「んぁ?これはまた小さいお客サマだねぇ」
男はカウンターを乗り越えて少女の元に屈み目線を合わせた。
「おじさんは...なんで星を売ってるの?」
男は少しだけハッとすると、すぐにいつもの切れ長な目で少女に答えてやった。
「それはなぁ、お星様が消えようとしてるからよ」
「...消える、の?」
まるでわけが分からないという風に少女は首を傾げる。
「あぁそう、死ぬんだ。お嬢ちゃんにはちぃと"ショウゲキテキ"かねぇ?」
男は少女に怪しく微笑んだ。
「消えるのに売るの?すぐに光らなくなるのに?」
「そうよぉ、寧ろ消える"から"売るんだ」
「なんだかよく分からない」
男は少女の頭をくしゃりと撫でる。そして呟いた。
「分からなくたっていいさ」

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