蒼ノ歌

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『星空の下で』

「これは398エンね〜......はい、毎度あり〜」
客は男から2〜3cm程の光る玉を受け取る。
珍しそうに眺めると、ポッケに突っ込んで店を後にした。
「次のお客様ぁ〜...」
「...あの」
目の前に現れたのは幼い少女だった。
「んぁ?これはまた小さいお客サマだねぇ」
男はカウンターを乗り越えて少女の元に屈み目線を合わせた。
「おじさんは...なんで星を売ってるの?」
男は少しだけハッとすると、すぐにいつもの切れ長な目で少女に答えてやった。
「それはなぁ、お星様が消えようとしてるからよ」
「...消える、の?」
まるでわけが分からないという風に少女は首を傾げる。
「あぁそう、死ぬんだ。お嬢ちゃんにはちぃと"ショウゲキテキ"かねぇ?」
男は少女に怪しく微笑んだ。
「消えるのに売るの?すぐに光らなくなるのに?」
「そうよぉ、寧ろ消える"から"売るんだ」
「なんだかよく分からない」
男は少女の頭をくしゃりと撫でる。そして呟いた。
「分からなくたっていいさ」

4/5/2024, 2:08:59 PM