ぬいぐるみを抱き締めながら眠りにつく
黙ったまま、文句も言わず、身動ぎもせず、おとなしく抱きしめられているだけの綿の固まり
それでも心は少しだけ救われる
『寂しくて』
「嫌」は「嫌」って意味しか持たないし
「無理」は「無理」って意味しか持たない
「やめて」も「やめて」って意味しか持たない
なのになぜか勘違いして
『実はこういう気持ちが隠されているんじゃ!?』
って勘違いのまま突っ込んでくる人もいる
それはあなたの心であって、私の心じゃありません
あなたの心を私の心にすり替えないで
『心の境界線』
誰の背中にも羽根は生えている。
ただ、透明で見えないだけ。
見えないから、自分の羽根の大きさや柔らかさを誰も気にしない。
誰も気にしないから、どんなに傷ついても無頓着。
無頓着だから、多くの背中からは羽根が抜け落ちている。
たまに見える人がいて、その人たちだけが丁寧に扱おうとしている。
「せめて本人だけには自分の羽根が見えればいいのに。そうすればもっと大切に扱うはずなんだ」
『透明な羽根』
ぱちはちと木が爆ぜる、心地よい音。
オレンジ色に照らされ、柔らかい表情をする君。
自宅じゃ味わえない開放感。
「準備してるときは大丈夫かなって心配だったけど…来てよかった」
温かな炎を見つめながら君が言う。
つられて僕も笑う。
「ね、なに話す? やっぱり恋バナとか? 古いかな?」
「なんで恋人といるのに恋バナするのさ…」
「普段とは違う雰囲気の中で、本音を伺おうかと思いまして」
「だからってわざわざ…」
「ほらほら、マシュマロ準備して。あっ、ココアも淹れてよ、やっぱ甘い物が無いとさぁ…」
なぜか張り切りだす君に、はいはいと苦笑する。
夜はこれから。
二人きりでどんな話をしようか。
『灯火を囲んで』
ふかふかになった犬の毛。
暖を求めてレースカーテンの間に入る犬。
そして暑くなって出てきたときのハカハカした顔。
頭に触ると、お日さまの熱を吸収してじんわり暖かい。
ストーブを点けると、自力で布団を引っ張り出して絶対に動かない。
そしてなにより、
ヒーターと炬燵を繋いでいたはずのホースを勝手に移動させている、
なんともふてぶてしい姿。
どうりで炬燵の中が冷え冷えなわけだ!
温風を全身で受け止めている!
おかげで人間は寒くてたまらん!
…なんて、冬支度の度に蘇る記憶。
『冬支度』