いしか

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10/12/2023, 9:33:57 PM

放課後は、俺にとっては嫌な時間だ。
俺は自業自得だが勉強が出来ない。そのせいでいつもテストは赤点。
ほとんどの教科で補修を言い渡される。

今日は、国語の補修だ。

「あー、わかんね。めんどくせぇ……」

漢字はまだしも、文章問題が難しい。
何となくわかるものの、答えのまとめ方が分からない。

「あー、今日は何時に帰れるかなー」

教室で何時ものようにわからず項垂れていると教室に誰か入ってきた。

「林君。どうしてまだ教室に居るの?」

声をかけてきたのはこのクラスで一番の優等生で、眼鏡をかけていて、髪の毛はロング。
新学期でたまたま席が後ろ前になった俺達は、何となく話すようになったものの、席替えをしてからは話さなくなってしまった。

彼女の名前は松輪 ひかり(まつわ ひかり)

「どうしてって、見りゃわかるだろ?
補習だよ補習。ま、わかんねーからいつ帰れるかわかんないけどね?……そういう松輪は?いつもならもう帰ってるじゃん」

「今日は、先生に頼み事されて、職員室に行ってたの」

「ふーん。先生のお気に入りは大変だな」

「あはは、うーん。正直、少し面倒くさかった」

彼女はそう言いながら、俺の机に近づいてきた。

「国語の補習?」

「そうだよ。漢字はわかるけど、文章はむりだわー」

そう、俺が言うと彼女は俺の前の席の椅子を後に引いて、背もたれをこちら側に向け、座った。

「?なにしてんの?」

「国語、私得意だから。早く終わりにして、帰ろう」

いわゆる、勉強を教えてくれるという事だろうか。それは、とても助かる。

彼女の教え方はとても分かりやすく、今まで悩んでいたのが嘘かのようにスラスラ解けた。そして、あっという間に終わってしまった。

「……スゴッ……もう終わった」

「はい。お疲れ様でした」

「うん。ありが……………」

補習のプリントから彼女に目を移すと、彼女は、とても綺麗に、可愛い顔で笑っていた。
夕日に照らされてそう見えるだけだったのかどうかわからないが、俺は………見惚れてしまった。

「…、林君?どうしたの?」

「えっあっ、いや、その!!」

彼女に見惚れてました、なんて絶対に言えない!!そう思いながらも、小さな恋の芽が生まれようとしている事をこのときの俺は、何となく感じたのだった。

10/11/2023, 11:35:15 AM

カーテンを閉めたら、部屋は間接照明の明かりだけになった。

私はついさっき失恋した。
私から別れを切り出した。浮気した最低彼氏に、私から別れを切り出したのだ。

「クソ野郎っ…………、罰当たれっ…っ!」

一人間接照明の中、悲しみ、暴言をぶちまけていると〜♫とスマホが鳴った。
誰からだろうとスマホをのぞくと、そこには男友達の将吾(しょうご)からだった。

「ずっ……もしもし」

『みずえ?今、平気?』

「平気……、へいきだよ〜〜っ」

『えっ?何!?どうした?』

私は将吾にどうして今こんななのかを説明した。私の説明の間、将吾はただ静かに相槌を打つだけだった。

「どうしてっ!どうしてっ男はこうなのっ!どうして浮気するのっ!私、わたし……っ何か………っ浮気されるようなこと…っしたの?ねぇ、どうなのっ!!」

私の電話の声は、きっと音割れしていたに違いない。それでも将吾が耳を傾けてくれているのが伝わってくる。

『………みずえ、』

「………………なに?」

『そんな奴、別れて正解だよ。そんな奴にみずえは勿体無いよ……。
ごめんな…みずえの元彼だった奴、今思いっ切りディスってるわ』

「……良いよディスって……あんな、最低なやつ………」

『……みずえ、…』

「だから、なに?…………ズッ」

『今から、みずえのうち行っていい?みずえの大好きなものばっかり買ってくるからさ』

「………ス。」

『うん?何?』

「アイスが一杯食べたい。チョコ味の……」

『チョコ味ね。はいはい。ちゃんと買ってくるよ。………それじゃあ、いまから行くから、待っててな』

「………うん。」

これから将吾がうちに来る。
私の好きなものを沢山買って来てくれる。

私は立ち上がり、部屋の明かりをちゃんと点ける。少し部屋を掃除して、座布団を一枚置く。

私の我儘や愚痴に、何も言わずいつも付き合ってくれる将吾…。
それに甘えっぱなしの私。

ごめんね将吾。ありがとう将吾。

私、将吾にちゃん返せるかな?
色々な事、ちゃんと返せるかな?

そんな事を考えていたらチャイムがなる。

私は玄関に向かい、将吾を迎えるのだった。

10/10/2023, 11:33:15 AM

涙の理由は、考えたくない。
自分で流している涙だけれど、私はその理由を今以上に思ったり、考えたりしたくない。
それに、泣いてる理由なんて、思ったり考えたりしなくても平気。私はそんなことしなくても、もうちゃんと知ってる。

「私……、泣かないって決めてたの……
 でも………っ私、今自分で自分との約束破った……っ」

鏡と向き合った私は、テーブルの上に置かれた鏡の前に座り、自分の不細工な顔を見つめている。

「………真尋(まひろ)………、2位だって………、凄くない?あのレースで2位に入ったんだよ」

真尋とは、私の彼氏。
彼氏である真尋は、普段は物腰も柔らかく、優しい人だ。
けれど、一度自転車に乗るとその顔つきは変わり、アスリートの表情に変わる。

真尋は、私が働いている会社に所属する自転車選手の一人でもある。

いわゆる、プロアスリートだ。

「……凄いな……、お祝い、しなきゃ」

大きい大会での表彰台。きっと、真尋も喜んでいる事だろう。本当は、今日、会場へ観に行きたかったけれど、私はダイレクトに風邪をひいてしまった。泣いている今も、熱は37.8度ある。
このまま熱が下がらなかったら病院に行こうねと、大会当日の真尋に言われたのだった。

〜♫〜〜♫

聞き慣れた着信音。

「ばい、もしもし?」
『もしもし楓。熱は?大丈夫?』
「分かんない。今熱はかってないがら…、」
『駄目だよ。ちゃんと計んなくちゃ。はい。今すぐ測る!』

真尋に促され測った熱は下がらず37.8度のままだった。

『……俺が帰ったら、一緒に当番医に行こうね?いーい?』

「ばい。わがりまじた。」

『凄い鼻声だね。本当大丈夫?』

「大丈夫だよ。ごの鼻声は、真尋の事でうれじなぎしただけだから……。
2位、おめでとう」

『………うん。ありがとう。ほんとは、優勝……、したかった……』

「うん。ちゃんとわがっでるよ……」

『あはははは!鼻声だと真面目なこと言ってても面白いね!表彰式終わったら直に帰るから、大人しく布団で休んでるんだよ?
わかった?』

「はい。わかりました……」

真尋との電話は、一旦ここで終わり。私は布団に戻り、ウトウトする。
真尋が帰ってきたら、風邪引いてるけど、抱きついていいかなー?


どうでもいい事を考えながら、わたしは大好きな真尋が返ってくるのを寝ながら待つのだった。

10/9/2023, 11:30:22 AM

ココロオドル。

カタカナで変換された文字。
何だが凄く軽く感じる。
文字の威力が一気に無くなった気がした。

連絡をしようと思って、やめた。

心躍る、なんて、どんな内容の連絡なんだ。

「でも……、顔が見たかった……」

こんな変な文章で送れば、何これ?って返信が直に来そうな感じがした。
けれど、私はそれが出来なかった。

なんだか、邪魔になったら嫌だなって思ったから。

「せいじー、会いたいー」

私の彼氏の誠司は、今大学の野球部の合宿で
遠方に居る。
なかなか連絡は繋がらず、すれ違い気味。

それでも、ちゃんと連絡を文面でしてくれる所が私は大好きだ。

「……もう一度……、してみようかなー」

スマホを持っては置いて、持っては置いてを繰り返している私。
早く連絡すれば良いのに…、と、もう一人の私が言っている気がする。

意を決してスマホを持ったとき、
〜♫とスマホが鳴った。


そこに書いてあった名前は、私の大好きな人
誠司からだった。

10/8/2023, 9:19:22 PM

束の間の休息は、別にいつもと変わらない。

特に予定も立てず、気分次第で動いていく。
それで良い。
だって、束の間の休息なんだから。

「はあー、うだるーーーー」

ぐだぐだ、ぐだぐだ、まるで自分がこのまま液体になるかのように、私はうだりまくっていた。


そんな時……………

ピロンッ

スマホが鳴った。

「うーん。だれだ〜」

スマホをのぞくと、そこには友達の桜があり、「今から会えない?」という文言が書いてあった。

私は特にやる事もなかったので「準備に時間かかるけど行けるよー」と返信をした。
すると、「分かったー。待ってる!」との返信。

「準備しなくちゃ………」

私は重い腰を上げ、なるべく早く準備を済ませていく。
あっという間に出来た準備に、やるじゃん私!と思いながらも家を出発。
桜に指定されたお店へ向かっていくと、そこに桜は居らず、代わりに樹(いつき)がそこに居た。

「なんで樹がここに居るの?桜は?」

「綾崎は先に帰った。俺が頼んで、真琴を呼んで貰ったんだ。……ごめん。騙して」

樹とは、高校生の頃に出会って、数少ない喋れる男の子だった。
当時の私は、樹に淡い思いを持っていた。けれど、樹はいつもその時付き合っていた彼女と一緒にいて、私に入れる隙はなかった。

「……何で、呼んだの?」

「……真琴に会いたいと思ったから。綾崎とは今日、ここでたまたま会って、無理言って呼んで貰ったんだ。」

別に気まずくなった訳では無いけれど、私の記憶は高校生の頃の私の感情に戻っていく。
楽しかったことも、悲しかったことも、全部。

「樹は、どうして私に会いたいと思ったの?……彼女が居なくなって寂しくなった?」

「違う。そんなんじゃない。もっと、その、純粋な気持ちだよ」

「ふーん。そっか……」

これからどんな話をするのか、私には想像も出来ない。
束の間の休息は、あっという間に流れて消えてしまった。

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