束の間の休息は、別にいつもと変わらない。
特に予定も立てず、気分次第で動いていく。
それで良い。
だって、束の間の休息なんだから。
「はあー、うだるーーーー」
ぐだぐだ、ぐだぐだ、まるで自分がこのまま液体になるかのように、私はうだりまくっていた。
そんな時……………
ピロンッ
スマホが鳴った。
「うーん。だれだ〜」
スマホをのぞくと、そこには友達の桜があり、「今から会えない?」という文言が書いてあった。
私は特にやる事もなかったので「準備に時間かかるけど行けるよー」と返信をした。
すると、「分かったー。待ってる!」との返信。
「準備しなくちゃ………」
私は重い腰を上げ、なるべく早く準備を済ませていく。
あっという間に出来た準備に、やるじゃん私!と思いながらも家を出発。
桜に指定されたお店へ向かっていくと、そこに桜は居らず、代わりに樹(いつき)がそこに居た。
「なんで樹がここに居るの?桜は?」
「綾崎は先に帰った。俺が頼んで、真琴を呼んで貰ったんだ。……ごめん。騙して」
樹とは、高校生の頃に出会って、数少ない喋れる男の子だった。
当時の私は、樹に淡い思いを持っていた。けれど、樹はいつもその時付き合っていた彼女と一緒にいて、私に入れる隙はなかった。
「……何で、呼んだの?」
「……真琴に会いたいと思ったから。綾崎とは今日、ここでたまたま会って、無理言って呼んで貰ったんだ。」
別に気まずくなった訳では無いけれど、私の記憶は高校生の頃の私の感情に戻っていく。
楽しかったことも、悲しかったことも、全部。
「樹は、どうして私に会いたいと思ったの?……彼女が居なくなって寂しくなった?」
「違う。そんなんじゃない。もっと、その、純粋な気持ちだよ」
「ふーん。そっか……」
これからどんな話をするのか、私には想像も出来ない。
束の間の休息は、あっという間に流れて消えてしまった。
10/8/2023, 9:19:22 PM