いしか

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放課後は、俺にとっては嫌な時間だ。
俺は自業自得だが勉強が出来ない。そのせいでいつもテストは赤点。
ほとんどの教科で補修を言い渡される。

今日は、国語の補修だ。

「あー、わかんね。めんどくせぇ……」

漢字はまだしも、文章問題が難しい。
何となくわかるものの、答えのまとめ方が分からない。

「あー、今日は何時に帰れるかなー」

教室で何時ものようにわからず項垂れていると教室に誰か入ってきた。

「林君。どうしてまだ教室に居るの?」

声をかけてきたのはこのクラスで一番の優等生で、眼鏡をかけていて、髪の毛はロング。
新学期でたまたま席が後ろ前になった俺達は、何となく話すようになったものの、席替えをしてからは話さなくなってしまった。

彼女の名前は松輪 ひかり(まつわ ひかり)

「どうしてって、見りゃわかるだろ?
補習だよ補習。ま、わかんねーからいつ帰れるかわかんないけどね?……そういう松輪は?いつもならもう帰ってるじゃん」

「今日は、先生に頼み事されて、職員室に行ってたの」

「ふーん。先生のお気に入りは大変だな」

「あはは、うーん。正直、少し面倒くさかった」

彼女はそう言いながら、俺の机に近づいてきた。

「国語の補習?」

「そうだよ。漢字はわかるけど、文章はむりだわー」

そう、俺が言うと彼女は俺の前の席の椅子を後に引いて、背もたれをこちら側に向け、座った。

「?なにしてんの?」

「国語、私得意だから。早く終わりにして、帰ろう」

いわゆる、勉強を教えてくれるという事だろうか。それは、とても助かる。

彼女の教え方はとても分かりやすく、今まで悩んでいたのが嘘かのようにスラスラ解けた。そして、あっという間に終わってしまった。

「……スゴッ……もう終わった」

「はい。お疲れ様でした」

「うん。ありが……………」

補習のプリントから彼女に目を移すと、彼女は、とても綺麗に、可愛い顔で笑っていた。
夕日に照らされてそう見えるだけだったのかどうかわからないが、俺は………見惚れてしまった。

「…、林君?どうしたの?」

「えっあっ、いや、その!!」

彼女に見惚れてました、なんて絶対に言えない!!そう思いながらも、小さな恋の芽が生まれようとしている事をこのときの俺は、何となく感じたのだった。

10/12/2023, 9:33:57 PM