同じ茎から同じ花を咲かせていた。
淡い水色の小さな花。ひとつでもとても可憐に見えるのに集まっていると、妖精のブーケの様でかわいらしい。私が目に止めたものはぎゅっと寄りすぎな気もする。
「案外、寂しがりやさんなのかな」
周囲の花壇にも同じ花が咲いて、背の高いものがポキリと折れてしまっていた。
重みか風か、それとも小動物のいたずらか。これでは萎れてしまう。
「寂しいかもしれないけど、私の部屋にどうそ」
浅い花瓶と言えない容器に1本だけ差した。部屋が花を中心に色付いた感じがする。こんなに小さな花なのに。
ポキリと折れてしまった『勿忘草』は私が持ち帰るとき大急ぎで「私を忘れないでね」と、花壇の友人達に告げていたのかもしれない。可哀想なことをしたかも…。
花言葉になぞらえて彼に話すとそっと容器を持ち上げて
「ここなら花壇が見えるよ」
窓際に移動させ、友人達に会わせてくれたのだった。
キィ、キィ…
支柱から伸びた鎖が風に押されてぎこちなく鳴り、ブランコが揺れている。
「懐かしい…。乗ってみても?」
行きとは別の道を歩きたいと公園を横切る買い物帰り。
ブランコに乗ってもいいか、と聞いた君は俺が答えを言う前に座っていた。ちょこんと座って足なんて地面に着くのにぶらつかせてさ、幼子みたいだった。
「ふふっ、背中押して下さい」
頼まれるまま背中を押す。近付いて、離れて。また鎖がキィ、と音を立てた。
子どもの頃を思い出しているのか君は目を閉じてブランコと一緒に揺れて
「子どもの頃はどこまで空に近付けるかって乗ったんだけど…。大きくなって乗ると意外と怖いね…!故郷ではどうだった?」
「ブランコは見かけることが少なかったから、あんまり乗った記憶がないな」
「そうなの?」
「年中、雪が降るから。錆び付いてしまうんだ」
買い物袋を柵に寄りかからせ俺も、もうひとつのブランコに乗った。勢いをつけると君より大きく、時計の振り子になった気分だ。空がぐんと近くなって一気に後ろに引かれる。大した高さじゃないと括っていただけに。
「見ているだけだと分からないもんだね!」
「うわぁ、高い。そうだ、こうやって靴を飛ばして、天気を聞いて遊んだの。…えいっ!」
君は器用に片方の靴を一番高い位置から飛ばした。柵を飛び越え転がって、俺はそれをブランコから降りて取りに行く。忘れ物のように靴底を下にしていた。君は片方の足でブランコから立とうとするけど危うく、やんわり声をかける。。
「そこに居てよ。シンデレラ」
君に合うもう片方の靴を届けに。
「晴れ時々、王子様だ」
クスクスと笑った君の前で跪き、靴を履かせ終えるとごちそう様と『ブランコ』の鎖がまたキィ…と鳴った。
俺の旅の目的は「力を手に入れる」こと。
力はなんだって手に入れたい。言葉や技術、ないよりは多く、ありとあらゆるものを吸収して自身のものに。
求める力の中には代償が大きなものもあるだろうけど、俺は君と家族、全てを守りたいんだ。
我が儘だなんて言わないでくれよ。誰だって失くしたくはないものがあるだろ?
『旅路の果てに』。力を得た俺は君にどう映る?
愛する君を優しく見守る人間のままか
それとも、見せることがなかった一面が俺を変えているかもしれない。
この旅を終えて、俺が人ではない怪物になったとしても…
どうか、隣に君がいることを願う。
…君に否定されたら耐えられそうにないな。
散歩をしていたら風のささやきの中に次の季節の気配を感じて、ふと足元を見れば小さな蕾が。まだきつく口を閉じて、寒さに耐えているようだった。
「もう少ししたら暖かくなるからね。咲いたらあなたの写真を一枚撮らせて欲しいな」
私が季節の妖精ではないけど、そんな気がして蕾に告げる。蕾は「わかった」と風に揺られて頷いてくれた。
楽しみと伝えたいことがひとつ、増えた。
手紙に書いて、彼に送ろう。きっと届く頃にはこの花が咲いて、今度は「咲いたよ」って写真を撮って「そちらでは何が咲いていますか?」と聞いてみよう。彼はどんな花の話をしてくれるんだろうか?
まだ凍てつくような風が吹いていますが、小さな春を見つけました。
春とうたうにはちょっと大袈裟かもしれないけど書き出しはこんな感じかな。
次の季節を連想させる、花が描かれた優しい色の便箋を、新しく買いに行かないと。
マフラーを整えて目的のものを探しに雑貨店へと足を向けた。
私がみた景色を『あなたに届けたい』
いつも読んでくれる皆様にたくさんの感謝を
私の彼に対する愛情を表現するならどれがしっくりくるのだろう?
「好き、大好き、愛してる…」
突然の愛の告白に目を瞬かせながら彼は私の髪を撫でた。私と視線を合わせたまま、髪を掬い上げキスを落として、彼の愛情が言葉にしなくても触れた先から流れ込んでくるようだった。
「そんなに言われると照れてしまうよ。もっと言ってくれる?」
「どの言葉もしっくりきてないけど」
気持ちいっぱい言葉に詰めているはずが、いざ声にだすとなんか足りない。そもそもこの想いをピタリと当てはめることはできる?言葉ではなく彼みたいに態度で伝えようか。
「俺は君が言ってくれるならどんな愛の言葉でも嬉しいよ。君は?好き、大好き、愛している。どれがいいんだい?」
「全部好き」
間髪いれずに答えていた。
彼から与えられるものはなんだって。彼は言葉や態度以外にもありとあらゆる方法で愛を伝えてくれるから、私だって返したいと思ったの。
「なら同じじゃないか。気持ちがこもっていればそれでいいんだよ」
「照れてるようにも見えないのに?」
私は恥ずかしく頬が熱くてなっているのに、この人はずっとニコニコして照れてる要素がひとつも見えない。…ちょっと悔しい。
「そんなに照れさせたい?なら、ココに君からの愛が欲しいな」
自分の唇を指差して彼は器用にウィンクをした。「まぁ、その後受け取った以上の愛を返すけど」付け加えられた言葉にちょっと危険な雰囲気があるものの、彼が喜んでくれるならそれでいいかと唇に、想いを
ありったけの『I love 』youをのせて