・1『星空』
星空と書いてきららと読みます
ワタシの名前。
まあわかりますよね、どんな親か
どんな教育を受けたか
どんなに愛されたか
早く改名したいなあ
でもめんどくさいなー
【続く】
・7『神様だけが知っている』
あれから部署移動もあり
グラビアページに線を引き、コラージュを作成している天気の神様と自称する男性と会うことはなかった。
ただ他の職員に聞き込みをした限り会話らしい会話をしたことがある者はいなかったのは不思議だ。
季節が夏から秋にさしかかろうという頃
夢を見た
頭上に入道雲があり目を凝らすと雲の中に雷がピカピカしている。まるで入道雲が飼っているやんちゃな犬のように雷は形を変えながら踊っているようだった
それから私は雲の中に吸い込まれ打ち上げ花火のような稲光を見るのだった。
今年の夏の花火大会は天候不順で全て中止になってしまった事を神様が「申し訳なかったね」と計らってくれたようだった。
私は怖がるべきか楽しむべきか悩むのだった。
『欲がないんだねぇ』と言う男の言葉が蘇る。
【おわり】
・6『この道の先に』
立ち上がって、この家を出よう。
簡単なことだ。
少しふらつきながら外へ出た。
さっき男が変なことを言っていた気がするけど
良く分からない。
欲がない?とか
一旦役所に戻ろう。
ふと、このまま進めば雷に打たれるのでは?という恐怖が襲った。
【続く】
・5『日差し』
稲光を確かに感じたのに次の瞬間には夏の日差しに戻っていた。急に怖くなった私は廊下で腰を抜かしてしまった。
家主は落ち着いた声で
「貴方はまだ若い。なのに欲がないんだねぇ」と言う
振り返って男を見上げるとさっきより溌剌としているように見える。声もハリがある。
座り込んでしまった自分がひどく情けなく感じる。と、同時にさっきまでペンを握っていた老人をただの変人だと、痴呆も入ってるかもしれないと思い込み礼儀を欠いていたのではないか?という気がしていた。
自分を天気を操れる神様だと言った男を
私は下に見ていたのだ。
【続く】
・4『窓越しに見えるのは』
「赤い糸ですか……私も運命の赤い糸で結ばれた人と早く出会いたいものです。それじゃあ私はこれで」
私は男にそう告げ玄関に向かった。
わざわざ見送ってくれる男が言う
「奪い、与えるのが私の仕事だからね。貴方はまだ若い。奪うことも与える事も不慣れでしょう。しかし経験を積めば少しくらいのワガママもなんとかなるものです」
「そら、外をご覧なさい」
廊下の窓から外を見ると、随分とアヤシイ雲行きになっていた。さっきまであんなに明るかったのに。
その時雷が光った
窓全体が白く光り、家の中が見えなくなるほどだった。
しかし雷鳴はしなかった。
【続く】