・3『赤い糸』
男は一心不乱に、かと思えば慎重かつ丁寧に
切り取った雑誌の1ページに線を描いていた。
天気図のような……
よく見ると女性のグラビアページを切り取りその身体や顔にビッシリと曲線を描いているのだった。
その天気図のようなものに意味はあるのか聞くと
天気の神様の仕事だ、と言う。
天気を操っている、と。
高齢化の進むこの島の島民の安否確認で周っているが
変わった人というのはどこにでもいるものだ。
じゃあ、この島に台風がこないようにお願いしたいですね
と私も応える。
どの紙も黒か青の線だったが右上だけは赤い線が一本ひかれている。
これは?と聞くと
それは赤い糸なのだという。
【続く】
・2『入道雲』
とんと見なくなった入道雲は何処へいったか?
今は私の住処です。
あの人が好きな夏が
もう訪れないよう
遠くに遠くに
あの人の目の届かないところにあります。
閃光あり、雷鳴なし!
私は天気の神様なので
好きにできます。
うらやましいでしょう?
【続く】
・1『夏』
私が。
私が、
天気を操っております。
雷を起こし、豪雨を招きます。
暑くて、ひどく暑くて、
入道雲なんて、見ないでしょう。
私が消したんです。
恨みがあって
そうしました。
あの人の好きな夏が
もうやってこないように。
花火大会は全部潰します。
【続く】
・5『ここではないどこか』
もし次の生があるなら地球はやめておこうかな、そろそろ資源も限界が見えてきたし。
私は多分この星に一番モテたな。他の人達はほとんどいなくなってしまった。
いつまでも美しいまま、少しずつすり減ってゆく。
私もこの星も。
共にどこか足並みを揃えて年を経るところに行きたいものだね。
【おわり】
・4『君と最後に会った日』
もうヨボヨボのおじいちゃんおばあちゃんになったあなた達と会ったのはいつでしたっけね。
私の遺伝子のデザイナー兼、生物学的ご両親どの。
私の寿命では天国で再びお会いできるのはまだ先かもしれませんね。
このままこの星が滅びゆくのを見届ける運命かもしれませんね。初代デザインベビー達もどんどん脱落してしまって……白人ぽさに拘ったのが良くなかったんですかね?
なんで私はこうも美しく強いままなんでしょうね。
もちろん今でもモテていますよ。
だから早く会いにきてください。
私の最後を見届けてくれるどこかの、誰か。
【続く】