・3『繊細な花』
今や禁止されたデザインベビー達がすっかり大人になった頃我々は『繊細な花世代』と呼ばれた。
あとは枯れゆくのみ。そのうち遺伝子操作された美しい者たちはいなくなってゆく。
実際には『自然に』産まれ落ちた後世の方が我々には繊細に見えたのだが。
たったの70年ほどしか生きられないなんて。
80を過ぎても青年の見た目の私は今もたいそうモテている。
【続く】
・2『1年後』
デザインベビーを作ることを禁止されてから1年後
再び人間は様々な姿を見せることに……とはもちろん急にはならず
社会は圧倒的に『白人ぽい』見た目の人間ばかりだった。
変化が見て取れるようになるにはあと三十年ばかりの時間が必要だろう。
青年の見た目の私は相変わらずモテている。
【続く】
・1『子供の頃は』
デザインベビー初代の私達世代は髪の色は明るく、瞳の色は青が定番だった。肌の色は白が圧倒的に多い。
髪は白く、ダークブラウンの肌で産まれた。
私もデザインされて産まれた子供の1人だった。
そうは思われていなかったようだが。
物珍しい私は
子供の頃はたいそうモテた
【続く】
・13『日常』
キルケーが海上に浮き上がった時スキュラは一目見てピンときた。
元凶だ。私に怒りを感じている、優越感も。
見下されてたまるか。スキュラの腰辺りに顔を出している犬達もキルケーに向かって唸り声をあげている。
「お前の顔を犬にしても良かったんだぞ」
「やりたいならやれば?」
「お前をこの海で一番の怪物にしてやろう。海は荒れ、船は転覆し男達が最後に見るのは醜いお前だ」
「暇なわけ?他にやることないの?私は行くわ」
こうして
スキュラは意外とその持ち前の精神で海の日常も受け入れた。足の代わりの犬達も可愛らしい相棒だ。
海で溺れた人間達を飽きることなく助ける毎日を送っている。
結局あれからグラウは姿を見せない。
どーでもいーけど。
【おわり】
・12『好きな色』
スキュラは散り散りになったあじさいの花びらを見ていた。どこまでも流されていく。
どれも好きな色だった。
なぜ私はこの広い海でひとり取り残されなければならないのだろう
その時魔女キルケーが現れた
【続く】