足音
足音を立てれば
孤独が胸に響く
前へ進もうとする一歩は
現実の重さに押し戻され
恐怖と共に孤独を知る
近くにいるはずの音も
遠くに去った音も
全てが自分を孤立させる証
踏み出すたび、心は震え
未来への道は遠く、揺らぐ
それでも足音は消せない
一歩一歩が自分の存在を示す
孤独を知りながら歩くこと
それ自体が、挑戦の始まり
昼休み。
AはBの机に肘をついた。
「なぁB、相談なんだけどさ、」
「恋愛相談か?」
ニヤつきながらBは言った。
見抜かれて驚くと同時に照れた顔をバレないように下をむいてAは言った。
「ま、まぁな」
「お、ついに動いたか?誰だよ、あの可愛い子?」
「…まあ、違うけど、」
「図書委員の子?それとも…体育祭で一緒だったあの女子?」
Aは笑ってごまかす。
「まぁ、そんなとこ」
放課後。
二人で校門を出る。
オレンジ色の夕日が長い影を作っていた。
Bが自販機でコーラを買い、Aに聞く。
「で、そいつとはどんな感じ?」
「よく一緒にいて…なんか、話してると落ち着く」
「ふーん、結構仲いいじゃん」
夜。
今日もBとのトークを開く。
Aはベッドの上でスマホを握ったまま、送るか迷っている。
結局、短い一文だけ打ち込んだ。
『好きなのは…お前だよ』
『ただいま、夏。』
「おかえり!」
玄関を開けると、3人が笑って迎えてくれた。
A男、B男、C男
みんな、あの頃のままだ。
「うわ、髪型変わった?」
「成長したなー笑」
「久しぶりに4人そろったね」
――なんて、懐かしすぎる夏の会話。
部屋にあったサイダーも、冷蔵庫のスイカバーも、
あの夏と同じ位置にあって、
僕は「ただいま」ってつぶやいた。
笑って、しゃべって、ふざけて。
まるで時間が巻き戻ったみたいな一日だった。
その夜。
海の見える丘で花火。
浴衣姿の3人と、いつもの道。
何もかも、あのときと一緒だった。
「これ、去年の残りなんだ」
A男が出した線香花火。
「よく取っといたな」
って言ったら、彼は笑ってこう返した。
「だって、ずっと“待ってた”もん」
違和感。ほんの一瞬。
でもすぐに笑ってごまかされて、またいつものバカ話に戻った。
最後、4人で写真を撮った。
線香花火の火が落ちる瞬間のやつ。
きっと一生の思い出になる。
はずだった。
翌朝、スマホを開くと、通知が来ていた。
「◯◯町の海岸にて、昨年行方不明だった高校生の身元が判明しました。」
名前は、僕だった。
画面をスクロールすると、
昨日撮ったはずの写真が1枚だけ残っていた。
線香花火が落ちかけてる。
その中に写っていたのは、3人だけだった。
『ぬるい炭酸と無口な君』
夕方の縁側、ひぐらしの声。
田舎の空気は甘くて、重くて、どこか遠くの記憶みたいだった。
「炭酸、ぬるいね」
そう言って、君は瓶のラムネを俺に差し出した。
ビー玉がカランと鳴って、俺たちは笑った。
夏休み。母の実家。
俺は数年ぶりにこの村に帰ってきた。
ここには電車もコンビニもない。
あるのは、山と畑と、そして君だ。
君は、たしか隣の家の子だったと思う。
昔も一緒に遊んだような気がする。でも思い出せない。
無口で、いつも遠くを見てる君は、昔と変わらない。
「秘密基地、まだあるよ」
そう言われて連れて行かれたのは、竹林の奥の古い祠。
「ここ、幽霊が出るんだって」
「うわ、それ言う?」
「だから誰も来ない。僕らだけの場所」
風鈴のような虫の声が、どこかで鳴っていた。
俺はその夏、毎日のように君とそこへ行った。
ラムネを飲んで、くだらない話をして、ただぼーっと空を見てた。
君は相変わらず無口だったけど、それが心地よかった。
夏の終わり。帰る日の朝。
君は、最後にもう一度秘密基地に行こうと言った。
祠の前で、君はラムネの瓶を渡してきた。
「また来年も、来る?」
「うん、たぶん来ると思う」
「そっか。じゃあ、待ってる」
カラン、とビー玉が鳴った。
──それから1年後。俺はまたこの村に来た。
祠に行って、君を探した。でも、誰もいなかった。
不思議に思って祖母に聞くと、
「ああ、その祠? 昔ね、事故で亡くなった男の子の魂が、そこに戻ってくるって言われててねえ…」
と、何気なく言った。
「その子ね、たしか名前は…」
口にされたその名前は、君のものだった。
ラムネのビー玉が、頭の中で、カランと鳴った。
眩しくて
昔の記憶
夜の高速道路
親の小さな声が
前の座席から
ラジオみたいに流れてく
笑ってるのかも
泣いてるのかも
わからない
小さな声
窓の外には
知らない家の灯り
知らない誰かの生活が
ぽつぽつと流れていく
そのひとつひとつが
自分よりまぶしくて
目をそらした
追い越していくライト
遠ざかる星の列
それはまるで
少しずつ会えなくなる人
時間とともに
遠くなっていく関係
なのに 月だけが
何も言わず
私の隣を走ってくれてる
…ように見える
自分を見放さないでいてくれる
あの人のように
いつもどこかで照らしてる
…ように見えてるだけだとしたら
みんなが眩しく見える夜は
闇よりも
光のほうが怖い
どこかに行けたら変われるって
信じたくて走ってるのに
どこまで行っても
自分の影だけが
同じ速度でついてくる
眠れそうで
眠れない
心の中だけ
いつまでも渋滞してる