るに

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7/9/2025, 4:16:04 PM

ただ沈んでいた。
だるま浮きみたいな体勢なのに
浮かずに沈んでた。
息が吸えずに
空気が体内に少ないからって
なんか理解はしてる。
不思議と水は冷たくなくて、
けど深海に近い暗さで。
こういう時
どこにでもある本なら
何も考えずに溺れてく、とかいう
表現を使うんだろうけど
実際は暇だから結構色々考える。
何より空気が無いから沈んでるのに
私が死んでないのが不思議。
あと水圧がかからないのも。
うーん、私沈む前何してたっけ?
そんなことを考えてた時、
ピーッという低い鳴き声が聞こえた。
いや、キューッ?
クゥーッかな?
とにかくそれはクジラの鳴き声だって
すぐわかったわけ。
だって真横にクジラがいたから。
身体もひれもすごく大きくて
目は私1人分ぐらいの大きさ。
どうせ死ぬならクジラに乗ってみたい!
とかいう私の最後の思いは
クジラの泳いだ時の流れで
流されていきそうだった。
お願い、届いて……。
なんとかしがみついたのは尾ひれ。
当たり前だけど
泳ぐのに使うから
ブンブン振り回されて大変だった。
"Good Midnight!"
あ、私このままクジラと暮らします。
地上は見たくないものばかりだから。
辛いことばかりだから。
どこかへ行って消えてしまいたいって
思っちゃうから。

7/8/2025, 11:20:32 AM

あの日の景色を思い出す。
なんて名前かすら
分からない虫が鳴いてて
暑くて太陽が出てた。
外国のようなところで
お城の見える丘。
日本離れした街並みは
中世ヨーロッパ風で
ここが日本じゃないって
よく思い知らされたものだ。
私は何故かここにいて
何故かこの世界に惹かれた。
魔法が存在していて
討伐などでお金が稼げて
旅人が山ほどいる世界。
私は1から魔法を学び、
風の魔法を習得した。
風は便利だった。
下から吹かせれば飛べるし、
音速を超える風を作れば
攻撃もできるし。
そして私は旅に出た。
前の日本では
夢を見ることしかできなかった旅。
家を持たずに毎日どこかしらへ向かう。
前は家があったし、
どこかホテルで毎日泊まることができるほど
金銭的な余裕がなかったから、
広く低い鳥かごを出た気分で
私は討伐依頼を受けつつ
どこかへ進んだ。
服はいかにも魔法使いっぽい服で
杖も長く地面につくか、つかないかぐらいの
私好みの格好にした。
私自身を好きなように
求めていた格好にできるなんて
夢みたいでとても嬉しかった。
"Good Midnight!"
それなのに
あれが本当の夢だったなんて!
私が学ぶことを
自主的に行ったこと自体、
なんかおかしいなと思ってたけど!
今でもあの世界にまた行きたいと思う
あの日みたいな暑い太陽の出ている日。

7/7/2025, 3:38:37 PM

今日は七夕。
どこかのイチャコラサボり魔らが
今日だけ会える日。
短冊に願い事を書くと叶う、
なんて言われてるけど
私は信じるつもりは無い。
まあでも、
気が変わって書くかもしれないから
短冊だけは持っておいただけの
いつもと変わらない日。
じりじりと暑くて
セミも鳴いてきた。
アイスなんか
ちょっと目を離した隙に溶けている。
ついてないなぁ。
ふと、
ガラスの冷蔵庫を見ると
ラムネ瓶のビー玉の中に
笹と短冊が入っていた。
すごい小さいやつ。
綺麗だったから
炭酸無理なのに買って、
帰りながらゆっくり飲んだ。
舌がピリピリと痛い。
あの手この手でなんとかビー玉を取りだし、
太陽に透かしてみた。
ビー玉の影が私の目の中に映り、
この世界には初めから
笹と短冊しか無かったように思えた。
家で寝っ転がると
すぐに寝ちゃって起きたら真夜中。
もう日付が代わったかもしれないけど
短冊を持っていたことを思い出し
何を思ったのか、
願い事を書いてみることにした。
"Good Midnight!"
クソみたいな人生と毎日だったけど、
私が幸せになれるまで
私が死にませんように、
年に一度の願い事。

7/6/2025, 3:57:13 PM

そうだな…。
空みたいに届かない恋を
空恋というなら
私の恋愛というのは
全てが空恋なのだろう。
単刀直入に言うと
私はメンクイと言うやつで
顔が良ければ好きになる、
チョロいやつだ。
もちろん顔から入るだけで
性格が良いだろうなという仮定でも
好きになる、
本当にチョロいやつだ。
そう、すれ違う人間
ほぼ全員を好くのだ。
だけどそれはただの軽い恋。
届く届かないどころではない
可笑しすぎる恋だからね。
私は他とは違うであろう好きな人
という人を常に2以上作る。
通りすがりの人を好くのと
特定の人を好くのとで
違いがあるかもしれないと思った人が
他とは違うであろう好きな人。
私は好きの違いがわからないから
もしかしたらそれは
軽い恋かもしれないので
違うであろう、にしている。
そしてその人を複数作ることで
私は安定する。
依存しにくくなる。
けどもちろん
相手は私のことを好くはずがない、
そう思い込んで、思い込むようにして、
墓場まで持って行くつもりの恋。
私は残りの人生で
あと何百人の人への恋心を
墓場まで持って行くのかと思うと、
面白くてたまらない。
"Good Midnight!"
まあ、こういう訳で
私の恋愛は全て空恋。
空みたいに届かなくて
空っぽの恋。
なんて私にピッタリなのでしょう。

7/5/2025, 4:08:55 PM

ある神社に
たまたまお守りを買いに行った時、
真っ白でしっぽが2つに分かれている
綺麗な猫に出会った。
けどその猫は
少ししんどそうな顔をして
飲み物をくれと言っているかのように
手招きの仕草をした。
ちょっと待っててと言い、
神主さんに
何か飲むものが無いか聞いてみる。
ここの神主さんは少し変わった人で
お祭りなどのイベント事で見かけるけど
いつも甘酒を飲んでいる。
神主さんが持ってきたのは
やっぱり甘酒で、
猫に飲ませる飲み物が
欲しかったんですけど…と言うと、
うん、ここの神社の猫でしょ?
多分甘酒が欲しいハズだよ。
そんなことを言って
元いた場所へ戻ってしまった。
仕方なく
白猫に甘酒を与える。
すると見る見るうちに猫は化け、
猫目で白髪の綺麗な人になった。
いやぁ、助かりました。
甘酒切らしちゃって
化けれなくて困ってたんですよぉ。
ところでお嬢さんは何で神社に?
びっくりしすぎて
返答するのに10秒ほどかかった。
最近何をするにも上手くいかなくて、
気休め程度ですが
お守りでもと思いまして。
それを聞くと白髪の人は
そういうことなら
私に任せてくださいなぁ。
まあまあ、
いい事が起きると信じていれば
勝手に起こるものですよぉ。
私に出会えたみたいにね。
あなたのこの先に、
神のご加護があらんことを。
"Good Midnight!"
気がつくと神社は見当たらなくて、
けど白髪の人の声は
まだ頭の中に響いていた。
何だか安心するような
優しいその声と
波音に耳を澄ませて。

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