るに

Open App

ただ沈んでいた。
だるま浮きみたいな体勢なのに
浮かずに沈んでた。
息が吸えずに
空気が体内に少ないからって
なんか理解はしてる。
不思議と水は冷たくなくて、
けど深海に近い暗さで。
こういう時
どこにでもある本なら
何も考えずに溺れてく、とかいう
表現を使うんだろうけど
実際は暇だから結構色々考える。
何より空気が無いから沈んでるのに
私が死んでないのが不思議。
あと水圧がかからないのも。
うーん、私沈む前何してたっけ?
そんなことを考えてた時、
ピーッという低い鳴き声が聞こえた。
いや、キューッ?
クゥーッかな?
とにかくそれはクジラの鳴き声だって
すぐわかったわけ。
だって真横にクジラがいたから。
身体もひれもすごく大きくて
目は私1人分ぐらいの大きさ。
どうせ死ぬならクジラに乗ってみたい!
とかいう私の最後の思いは
クジラの泳いだ時の流れで
流されていきそうだった。
お願い、届いて……。
なんとかしがみついたのは尾ひれ。
当たり前だけど
泳ぐのに使うから
ブンブン振り回されて大変だった。
"Good Midnight!"
あ、私このままクジラと暮らします。
地上は見たくないものばかりだから。
辛いことばかりだから。
どこかへ行って消えてしまいたいって
思っちゃうから。

7/9/2025, 4:16:04 PM