るに

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6/9/2025, 3:26:49 PM

どうしてこの世界は
泣きたくなることが
多すぎるんだろう。
誰でも少しはそう思ったことがあると思う。
普通に生きていたい。
けど生きにくいし
頭を抱える夜もある。
そんないつも頑張る人たちの
何でもない日の
ちょっとしたご褒美を提供するのが
ネオンサインで
「Starry sky Uranus」
と書かれた看板が目印の
アイスクリーム屋さん。
スターリースカイは星空で
ウラヌスは天王星。
店主である私が
天王星が惑星の中で一番好きで
お店の名前に入れたいと思って。
星空は、なんかオシャレそうだから?
ここでは青系統のアイスに
アラザンをかけたり、
星型のわたあめを乗せたりして
まるでなんにも考えなくていい
宇宙空間に放り出されたような
縛るものがない空間を作り出している。
私はこの店を始めて
よかったとすごく思ってる。
自分の居場所にもなるし
来るお客さんは
何か首枷が外れたみたいに
力を抜いてアイスを楽しんでくれる。
他のアイスクリーム屋さんのアイスと
味はさほど変わらないと思う。
けどそれでも
私の店に人が来るということは
非日常を少し求めて、
毎日頑張る自分にご褒美を、
夜更かししたくて、
そんな人が1人はいたってこと。
観光地ってほど
周りの街が有名なわけじゃないし
むしろただの街の背景の一部っていうか
ネオンサインだけ目立つお店だから
立ち寄りやすいかと。
基本的には22時から深夜まで開いてます。
私はいつでもお待ちしております。
"Good Midnight!"
広く美しい宇宙の星屑、
アイスクリームで体験しませんか?

6/8/2025, 3:50:47 PM

こんばんは。
文通は久しぶりなので
少し文がおかしくなるかもしれません。
実は私、
最近外に出られないんです。
そんなことどうでもいいよって
君は言うかもしれませんけど、
どうしても言っておきたくて。
外に出れるのは出れるんですけど
お腹が痛くなったり
吐き気がしたりして
体調が悪くなるんです。
それに家って怖いものを
見ずにすむじゃないですか。
でも欲しい本があって。
変ですよね。
食欲はこれっぽっちもないのに
物欲だけはあるんです。
本を買いに行くために
外に出る練習がしたいんです。
よければお手伝いを頼みたいのですが…。
めんどくさがりな君は断るかもですね。
そう思っていたのに、
良いお返事が来て嬉しかったです。
暇すぎるし仕方ないから、と
ぶっきらぼうに来て
私を外に連れ出して
腹痛薬や頭痛薬、吐き気止めを
くれましたよね。
結局薬を飲んでも治らなかったので
家へ走って帰ってしまいましたが、
あんなに家から出て歩けたのは
久しぶりかもしれません。
本当にありがとうございます。
この1回が100となって
本屋さんまで行けるように
これから練習を続けようと思います。
"Good Midnight!"
今日は昨日君と歩いた道を少しだけ。
明日はコンビニにでも
行ってみようと思います。

6/7/2025, 7:19:39 PM

ある所に
クマが酷いから
クマさんと呼ばれる
黒髪の少女がいた。
クマさんは不思議な力を持っていると
街中で噂になっていて
毎日何人かが
クマさんのツリーハウスを訪ねてくる。
私は人の心を虫めがねで覗けるのだよ、と
クマさんは言う。
どうやらそれは本当のようで
悩みを抱えた人たちが
ツリーハウスを訪れ
帰る時には何か引っかかっていたものが
スルッと解けたように
穏やかな表情になって帰っていく。
ツリーハウスはクマさんが作った
人々の安らぎの場なんだとか。
家の屋根から見えるクマさんは
今日も呑気でクマは酷い。
仮眠でも取ればいいのに、と
常々思う。
やれやれ…。
いつもカップラーメンを
3つ作る時間くらいは
人が来るってのに、
こう、1人も来ないと
それはそれで寂しいもんだねぇ。
特にすることもなくて
ただ小さな窓からの景色を見ていた。
するとギシッ、ギシッ、と
ツリーハウスのハシゴを登る音が聞こえた。
チリンッとベルが鳴り
ドアが開く。
あのー、クマ…さん?
様子を伺う私より少し年上の女性。
クマですけれども。
わ、えーっと、私勇気が欲しくて…。
あなた今心が複雑だよ。
解くからじっとしてて。
私はその女性が話始める前から
虫めがねで心を覗いていた。
色んな色の糸が心に絡まり
締めあげられている。
黒いピンセットで
慎重に解いていくと
1本の糸が原因だったことがわかった。
最近仕事が辛いんだろ?
見透かしたように私は言う。
そうなんです、
何故かわからないんですけど
毎日辛くて。
でもこれって普通の…ことですよね。
私が怠惰でトロくてマヌケで
言われなくても出来なくて
言われても出来なくて。
死んだ方がいいんじゃないかって。
そんなことない。
私はね、今日あなたに初めて会ったし
あなたのことなーんにも知らない。
けどね。
気がついたら死んでた、で良くない?
わざわざ死にに行かなくてもさ
勝手に死ぬんだし
ちょっとでもいいから
来世に期待できるぐらいの
何かをやったら?
女性は涙を何回も吹く。
それは違うんだと。
今が辛いから
待てないのだと。
来世は無くてもいいから
今世を終わりにしたいと。
仕方ないから
福が舞い込んでくるメイクを教えた。
それはクマメイク。
目の下にクマを作るのだ。
心配してくれる人が街にはいる。
何でもしてもらっておいで。
両手に大量のお土産を抱えて帰ってきた女性は
人の温かさが嬉しくて
ここに来てよかったと言った。
"Good Midnight!"
翌朝ぐっすり眠れた女性は
夢見る少女のように森を駆け
元の場所へと帰っていく。
もう大丈夫。
いつもツリーハウスに来る人が羨ましい。
悩んで悩んで
最後が人生の終わりで
羨ましいと思う。
私はもう、
死ぬのもめんどくさくなってしまったから。

6/6/2025, 5:13:23 PM

さあ行こう。
まだ見ぬ景色を求めて。
笑っちゃうほど遅い船に乗って
行き当たりばったりで進んでいく。
最初はただ
あんまり行ったことのない
港町の店に顔を出してみただけ。
すごく綺麗な人がいたから
私は思わず話しかけて
ここじゃないどこかへ行きたいと話した。
するとその人から
海上タクシーみたいな船を説明され
乗りなよ、咎めないよ。と言われ
乗ることに。
最低限の生活品だけ持って
冒険者のように
大股で自信たっぷりに歩く。
綺麗な人は他にもたくさんの人を
船に乗せていて
ホントにタクシーみたいだった。
私は人見知りだから
話しかけれなかったけど
少しの期間共に過ごしているようで
よく笑い声や話し声が聞こえた。
港が見えたら
とりあえず止まって休憩って感じの
ゆるーい旅で
私にはちょうど良かった。
寧ろやみくもに歩き回るより
こっちの方が良かった。
寝付きが悪くて外へ出てみた午前2時。
海は相変わらず
ザブーンという音が漂っていて
月の光を反射していた。
綺麗な人は午後8時〜午前1時までしか
寝ないらしく、
操縦室には綺麗な人が立っていた。
少し世間話をし、
そろそろ眠くなってきた頃
港が見えてきて船が止まった。
こんな真夜中にも着くことがあるんだ、と
少し驚いた。
私と綺麗な人は1度船から降りて
ベンチに座りながら
船と海を眺めた。
綺麗な人に
どのくらい旅をするのかを聞いてみた。
すると
いつか
どこかの港を一番好きになるかもしれない、
そんないつかが来るまで
旅を続ける。と、
どこか遠くを見つめながら言った。
"Good Midnight!"
朝目が覚めると
船の中で
午前10時の太陽に照らされる
綺麗な人が操縦室に見えた。

6/5/2025, 3:32:16 PM

もやもやしてた。
黒くて大きくて
もじゃっとしたものが
ずっと引っかかってた。
何をやっても取れなかった。
涙で流すことも出来ずに
淡々と行き当たりばったりで歩いた。
少ししたら
毛並みの綺麗な黒猫が
にゃーっと鳴いて
路地へ入っていく所を見た。
私は涙でぼやけた視界を頼りに
猫を追いかけた。
そしたら「雨傘」と書かれた
面白そうなお店に着いた。
黒猫は軽やかな足取りで
屋根の上に登っていった。
私は静かにドアを開けて
お店に入ってみた。
店員さんと見られる人は
私を見ると会釈した。
あの、黒猫ってここで飼ってるんですか?
純粋に気になったことを聞いてみる。
いえいえ、最近よく来るようになった
ただの野良です。
でも、助かりました。
あなたを連れてきてくれたから。
独特な雰囲気で
珍しい傘を売っているこのお店に
ずっといたいとすら思ったけど、
傘屋なのに長居するのは…と思い、
店員さんにおすすめの傘を聞いた。
すると
黄色の傘を渡された。
あなたにピッタリの傘です、と。
眩しいくらいの黄色は嫌いだけど
こういう目に優しい黄色は
雨の日に見たいなと思っていた。
買おうとすると
代金は要りません。
お気持ちだけ頂きますね。
と言われてしまった。
仕方ないので会釈をして
お店から出た。
丁度小雨が降ってたから
傘をさしてみると、
傘からシトシトとひんやりした雨が
降ってきた。
"Good Midnight!"
なんで?って思ったけど、
その雨は冷たいけど
包み込んでくれるような
優しい雨で、
水たまりに映る空は
さっきまでの私の気持ちを
スっと連れ去って。

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