もやもやしてた。
黒くて大きくて
もじゃっとしたものが
ずっと引っかかってた。
何をやっても取れなかった。
涙で流すことも出来ずに
淡々と行き当たりばったりで歩いた。
少ししたら
毛並みの綺麗な黒猫が
にゃーっと鳴いて
路地へ入っていく所を見た。
私は涙でぼやけた視界を頼りに
猫を追いかけた。
そしたら「雨傘」と書かれた
面白そうなお店に着いた。
黒猫は軽やかな足取りで
屋根の上に登っていった。
私は静かにドアを開けて
お店に入ってみた。
店員さんと見られる人は
私を見ると会釈した。
あの、黒猫ってここで飼ってるんですか?
純粋に気になったことを聞いてみる。
いえいえ、最近よく来るようになった
ただの野良です。
でも、助かりました。
あなたを連れてきてくれたから。
独特な雰囲気で
珍しい傘を売っているこのお店に
ずっといたいとすら思ったけど、
傘屋なのに長居するのは…と思い、
店員さんにおすすめの傘を聞いた。
すると
黄色の傘を渡された。
あなたにピッタリの傘です、と。
眩しいくらいの黄色は嫌いだけど
こういう目に優しい黄色は
雨の日に見たいなと思っていた。
買おうとすると
代金は要りません。
お気持ちだけ頂きますね。
と言われてしまった。
仕方ないので会釈をして
お店から出た。
丁度小雨が降ってたから
傘をさしてみると、
傘からシトシトとひんやりした雨が
降ってきた。
"Good Midnight!"
なんで?って思ったけど、
その雨は冷たいけど
包み込んでくれるような
優しい雨で、
水たまりに映る空は
さっきまでの私の気持ちを
スっと連れ去って。
6/5/2025, 3:32:16 PM