るに

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2/18/2025, 1:41:09 PM

喋るカモメに手紙を渡した人は
必ず手紙の行方を聞いてくる。
あのお喋りカモメは
面倒だからって
説明を全部私に押し付けてきた。
最初は丁寧に全部言ってたけど、
だんだん私も面倒くさくなってきて
今ではまたカモメに会った時に聞いて
と言っている。
最近働き詰めで疲れがたまっていたので、
人気って程ではないが
そこそこ人が賑わう明日屋に足を運んだ。
洋風な店内には
大きな瓶がいくつも並び
ラベルに明日が書いてある。
睡眠不足が解消する明日、
ストレスが緩和する明日、
体が軽く動きやすい明日。
どれにしようか凄く悩んだけど
リラックスできる明日にした。
レジへ持っていくと
商品確認の時に
この安らぎ運アップでお間違いないですか?
と聞かれ、
ラベルを1度見直した。
どうやら店員は
全ての明日を運と言っているようだった。
問題ありませんと言って受け取り
早速明日を楽しみに待った。
翌朝目が覚めると
昨日寝ぼけながら
皿洗い等を終わらせてることに気づき
今日はすることが無いんだと喜んだ。
どう思い出したのかは覚えていないけど
アロマキャンドルを取ってきて火をつけた。
ため息と一緒に疲れも出ていくような気がして
ゆっくり目を閉じた。
"Good Midnight!"
こんな毎日がいいなぁ。
そう思うリラックスできる1日だった。

2/17/2025, 2:40:05 PM

明日食べたいものがある。
明日を迎えたい理由がある。
けどそれは
全ての人に当てはまることじゃない。
明日涙をこぼすことがある。
明日を生きたくない理由がある。
いざ明日になると
目がぐるぐるしてきて
輝き放つ太陽を
どうしても見れない。
かみさまはどうやってこの世界を
明日を作ったんだろう。
まだ寒いのに薄着で外に出て、
知ってることも知らないフリ。
向かったのは私が持つ店、
「明日屋」という所。
どこかの誰かであるあなたの
明日を変えれる所。
未来というものはわからなくて見えないから
未来というもので。
でもこの明日屋では
明日をカスタマイズできる。
金運アップの明日は
道端で100円を拾えるくらいだけど、
健康運アップの明日は
どんな病にかかっていたとしても
その1日だけ治る。
店の奥の奥にあるのは
幸運の続く明日と不運の続く明日。
別名、天使の明日と悪魔の明日。
この明日だけは売れない。
差が大きすぎて
ネブラスオオカミの手に渡ると危険なのだ。
明日を変えたい人は沢山いて
毎日大忙しだけど
おかげで儲かっている。
今日はどんなお客さんが来るんだろう。
人間観察も楽しいものだな、と
窓の外の緑の木を眺めた。
きっと今日もいい真夜中で
明日もいい真夜中だと
木は葉を揺らしながら囁いた。
"Good Midnight!"

2/16/2025, 11:28:47 AM

時間よ止まれ、
止まってくれ。
私はあのバスに間に合いたい。
老若男女、
みんなが乗ってる目の前のバス。
バス停を通り過ぎてしまったバス。
私が乗るハズだったバス。
ちゃんと早めに着いたのに
バスは1回ちゃんと止まったのに
乗客の1人が
コーンフレークの牛乳をこぼしたとかで
バスのドアをすぐに閉められちゃって
コーンフレークなんか食べてる人いなかったのに。
でも私の一歩守の紐は切れてない。
切れたらもうバスには乗れないかもしれないけど
このまま走って追いかけてたら
いつかきっと。
信じて願って
どうこうなる話ではないことはわかる。
でも私も
メロスみたいに走ってみたい。
踏み込む足に体重を7割かけて
風の流れをイメージする。
髪が揺れるのと同時に
前へグッと体制を倒して
そのまま足を出していく。
バスの窓から
何人かの手が私を招く。
近づいていくと声も聞こえてくる。
来ないで。
早く来て。
壊される。
話を聞いて。
大切を奪わないで。与えないで。
色んな人の声。
私に対してかも分からない声。
キーンと耳が痛くなったけど
私の思いが届いたのか、
3秒ほど時間が止まったように感じた。
追いつき、
手を伸ばして掴んだ手を
私は間違えたと思った。
腕にトランシーバーがはめられていたから。
このバスじゃなかった。
もう1つ後のバスだった。
"Good Midnight!"

2/15/2025, 3:52:25 PM

浜辺で見つけたトランシーバー。
砂で汚れていて
水で濡れていたので
もう機能しないと思って
コールしてみたのに、
すぐに少女の声で
"Good Midnight!"
こちら、白雲峠より旅に出た者です。
状況報告します。
星が降っています。
いい夜です。
と聞こえた。
つい、
君の声がするって言っちゃって。
私は慌てて、
すみません。
昔の友人の声に似ていたもので。
えっと、状況報告?ですか?
私もすればいいんですかね。
満月に少し届かない
欠けた月が見えます。
肌寒い夜です。
と言った。
向こうからはしばらくした後
私の声が聞こえ、状況確認が完了しましたら、
また川に流してください。
と聞こえた。
なるほど。
川から海に流れて来たのか、と
少し関心してしまった。
でも今日は
ただ真夜中の海を見て
時間を忘れたかっただけなので
海に放り投げた。
向こうは川じゃないって怒るかもしれないけど
もし向こうが君だったのなら
きっと海の方がよかったはず。
いつか向こう側の浜辺で
向こうの求める人が
トランシーバーを拾いますように。
そんなこと思いながら投げても
何も変わらない気はしたけれど。

2/14/2025, 4:52:21 PM

家族の中で浮いてたからか。
いつしか姉の真似を
少しするようになったのは。
私は髪を切るのが好きだった。
散髪屋さんに行く時
毎回遊園地にでも行くかのような顔で
髪を切りに行っていた。
姉はというと
髪を伸ばしてポニーテールにしていた。
別に興味は無かったが
姉は話も面白く
運動神経もいい方で
私には
世界全ての笑顔を操る人のように見えた。
歳が離れていたので
喧嘩することはなかったけど
行ってらっしゃい、ありがとう、
おかえりなどの
少ないが大きい言葉を交わすことは無かった。
私は根暗で
話は話題が浮かばず途切れ途切れで
運動神経は悪い、
世界中の人に迷惑をかけ、
イラつかせる人のようだった。
姉に憧れてしまうのも無理はない。
誰かのいい所を見つけるのは得意だった。
人のいい所を少しずつ真似ていけば
完璧なキメラになれるとでも思ったのだろう。
私は私じゃなくなった。
いつも
あの人なら…、この人なら…って
他の人の事ばかり考えるんだ。
自分の考えを持つ?
自尊心を大切に?
そんなもの遠の昔に無くしている。
ただ人というものは
自分を見つけて欲しいと
気付かぬうちに思ってしまうようで。
見つけて欲しい、見破って欲しいなんて
心のどこかにいる誰かが言ってくる。
"Good Midnight!"
無視しちゃダメだとわかっていても
耳を傾けることはできなくなっていて、
いつかの梅雨に見た
紫陽花の庭園が脳裏に焼き付いていた。

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