るに

Open App

家族の中で浮いてたからか。
いつしか姉の真似を
少しするようになったのは。
私は髪を切るのが好きだった。
散髪屋さんに行く時
毎回遊園地にでも行くかのような顔で
髪を切りに行っていた。
姉はというと
髪を伸ばしてポニーテールにしていた。
別に興味は無かったが
姉は話も面白く
運動神経もいい方で
私には
世界全ての笑顔を操る人のように見えた。
歳が離れていたので
喧嘩することはなかったけど
行ってらっしゃい、ありがとう、
おかえりなどの
少ないが大きい言葉を交わすことは無かった。
私は根暗で
話は話題が浮かばず途切れ途切れで
運動神経は悪い、
世界中の人に迷惑をかけ、
イラつかせる人のようだった。
姉に憧れてしまうのも無理はない。
誰かのいい所を見つけるのは得意だった。
人のいい所を少しずつ真似ていけば
完璧なキメラになれるとでも思ったのだろう。
私は私じゃなくなった。
いつも
あの人なら…、この人なら…って
他の人の事ばかり考えるんだ。
自分の考えを持つ?
自尊心を大切に?
そんなもの遠の昔に無くしている。
ただ人というものは
自分を見つけて欲しいと
気付かぬうちに思ってしまうようで。
見つけて欲しい、見破って欲しいなんて
心のどこかにいる誰かが言ってくる。
"Good Midnight!"
無視しちゃダメだとわかっていても
耳を傾けることはできなくなっていて、
いつかの梅雨に見た
紫陽花の庭園が脳裏に焼き付いていた。

2/14/2025, 4:52:21 PM