るに

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12/9/2024, 12:19:37 PM

ある所に
小さな魔女がいました。
いい魔女でも悪い魔女でもない
普通の魔女。
双子の姉が大好きで
いつも2人手を繋いでいました。
街でも有名な仲良し姉妹で
2人の作るレモネードはとても美味しく、
星屑アイスが上にのっていて
クリームソーダのようで
見た目も味も最高なのでした。
そんな平和な日が
火の海になったのは
少し後のことでした。
1人の悪い魔女が妖精の村を襲ってしまい、
怒った妖精たちは
魔女の街に火を放ったのです。
消火しようと
何人かの魔女は魔法で水を出しますが、
火には妖精の粉が混ざっており、
中々消えません。
双子は何とか避難出来ました。
しかし、
安全に暮らせそうな場所は見当たりません。
妖精に見つかると殺されてしまうかもしれない。
そう思った双子の姉は
妹だけでも守ろうと、
0.5日の招かれた者しか行けない所へ案内しました。
ずいぶん前に、
ここを作った別の星から来た人と
仲良くなったので、
勝手に使わせてもらいますと
手紙をそこら辺に置いておき、
妹にこの空間のことを隅から隅まで話しました。
そして妹には
私はここにはいられない。
魔女の街の近くで
安全そうなところを
必ず見つけて迎えに来る。
その間ここには招かれた者が
何人かやってくるから、
だからここの案内人になってくれと言いました。
少し考えてから頷いた小さな魔女は
またレモネードを作ろうと約束しました。
別れ際、
いい魔女になって、ここに来る人に
幸せな人生を与えてあげて欲しいと姉に言われました。
暖かいハグをして
悲しそうな笑みを浮かべながら
2人は別れました。
小さな魔女は
それから毎晩、
"Good Midnight!"
と言っていました。
これは魔女の街の暗黙のルール。
どこに居ても、
夜はそこにあって
いい夜を過ごしましょうと言う意味です。

12/8/2024, 12:41:05 PM

薄暗い路地裏。
品揃えが良さそうだから
少し離れた大きなスーパーに
行きたかっただけなのに。
Googleマップを見ながら歩いてたのに
こんなに迷うとは。
この路地裏に入ってから
一度も人とすれ違わなかった。
教えてもらうことすらできない。
大人しくコンビニで買い揃えればよかった。
もう日没が近い。
風も強くなってきた。
震えた足で歩いていると、
前から寝癖が凄い人が歩いてきた。
ぴょんぴょんと跳ねた髪の毛は
その人の雰囲気にとても合っていた。
道を聞こうと声をかけると、
あー、えーっと、うち来る?
何をどう解釈したら
道を教える前に家に呼ぼうと思ったのだろう。
そんな顔をしていると、
慌てて付け足していた。
いや、もう日暮れちゃうし、
そのスーパーここからちょっと離れてるから。
なるほど納得。
早足で手を引かれてその人の家に行った。
路地裏に面していて、
こんなところに入り口が…
なんて思うところだった。
なんでも、
賑やかな所が苦手だそうで。
暖かいお茶といなり寿司を
ご馳走してもらった。
真夜中、
外から人が路地裏を歩く音が
結構聞こえてきた。
夜行性の人が多いのかな、この辺は。
朝、その人に道順を教えてもらった。
なんだか急いでるように見えたので
お礼を言ってすぐ立ち去ろうとするが
なにか引っかかる。
そうだ。
昨夜、
私ここから出たいんだよね。
はぐれ者だからさ、
一刻も早く帰りたいと思ってる。
と、その人が言ってたんだ。
あの!
よかったら一緒に来ませんか。
目を合わせようとしないその人は
無理してるような笑顔でこう言った。
私のことなんかどうでもいいから、
こんなところ二度と来ないで。
ていうか、
いい歳して迷子とか笑えてくるんですけど。
こっちは用事あるんだから
さっさと行ってよ。
昨夜との態度の違いに
少し戸惑ったが、
まあ、急いでたら誰でもこうなるかと、
教えてもらった道を歩いていった。
別れ際に
ありがとう、ごめんね。
という声が聞こえた気がして、
振り返ると
その人は
"Good Midnight!"
と言っているように見えた。
声は聞こえなかったけど、
なんとなく。

12/7/2024, 2:05:16 PM

あの子より上手く描けないなら、
あの子を妬んでしまうなら、
私に才がないのであれば、
一生自分の殻にこもって
部屋の片隅ですすり泣いてもいいですか。
昔から私は怒りっぽくて
よく物に当たってた。
今に近づくにつれて
怒りの感情はない方がいいことが分かった。
押し殺すのは大変だった。
知らないうちに耳を引っ掻いていたり、
注意力が散漫して怪我を沢山したり、
不眠になったこともあった。
それでも私は絵を描いた。
自分を落ち着かせるために。
あの子に出会った時は
おわったと思った。
自分より才能があって
自信もあるはずなのに
絵の自慢ばかりしてくる嫌な奴。
第一印象は酷いものだ。
でも話してみると
いい人かと聞かれたら
いい人?かなと言えるくらい
普通の人だった。
絵と字の綺麗さだけズバ抜けているが。
私の仲の良い友人とあの子が
ぼちぼち仲が良いので
嫌でも一緒にいなければならなかった。
私が持ってないものを持ってるくせに、
私が頑張って取ったものを
何食わぬ顔で既に持っているくせに、
あの子は私の大切なものを
一つ一つ持っていった。
妬んではいけないとわかってはいるが、
妬んでしまうのが人間というもののようで。
私から離れずに
私を幸せにしてくれるのは
下手な絵とスマホだけ。
"Good Midnight!"
昨日3時間かけて描いた絵は
左右非対称で線もガタガタ。
スマホは容量が無くなり
アプリが急に勝手に閉じてしまい
何度も文を書く羽目に。
それでも私を幸せにしてくれよ。

12/6/2024, 2:54:25 PM

逆立ちはできないけど
いつも逆さまでぶら下がってるみたいに
ふわーっと生きてた。
寒くなってからお風呂に入るし
眠くなるまでスマホ見るし。
座った時に長い髪が床に着くのを
ずっと待ってた。
流石にそんなぼーっとしてても
楽しく生きれないわけで、
とりあえず自分が好きそうな絵柄の
漫画を探すけど、
売ってるかどうかはまた別で。
来年の2月発売とか
ちょっと先のものばかり。
いつもなにか
ここにない感じがして。
上手くいい表せないけど
きっと私は
人生の大半を寝て過ごす
だらしない生活を送る人になるんだろうなぁと。
そんな中出会ったのは
ぽっかりと空いた胸の穴を
埋めることができないとわかった日々だった。
そりゃあ
宇宙の謎とか
そういうのに全てを賭けたら、
熱心になれると思うし
つまらない人生は送らないはずだ。
でも足りない。
違うんだよな。
愛情でも、食欲でもないのは
とうに分かりきっている。
じゃあ他に何が…?
そんなことを考え始めたらキリがない。
頭が痛くなってくる。
だから今日は
"Good Midnight!"
今日こそは幸せを掴んでやるんだ。

12/6/2024, 8:42:02 AM

ふーっと息を吹くと
飛んでいってしまうシャボン玉。
大体のシャボン玉はすぐそこで
割れてしまうけど、
私が今まで見てきたシャボン玉の中で
1番飛んだのが1つあった。
そのシャボン玉は
風に乗って屋根より高く、
ふわーりふわりと
空へ飛んでいった。
街灯よりも高く高く上がって、
割れて帰っては来なかった。
なんであんなに飛んだのか
眠れないほど考え込んだ。
でももしかしたら
シャボン玉もなんであんなに飛べたのか
わからないかもしれない。
もう1回あのシャボン玉に会いたくて
毎日シャボン玉を飛ばした。
もちろん全てすぐそこで割れてしまった。
そんな中、
私はある映画を見た。
割れないシャボン玉と
割れるシャボン玉が
街中に飛ぶ映画。
その映画を見てから
私は1日に2回シャボン玉を飛ばした。
影響受けすぎ、
お金の無駄って思われるかもしれないけど、
大丈夫。
私はこの目で見たから。
空に飛んで帰ってこなかったあのシャボン玉を。
ちゃんとずっと覚えてるから。
"Good Midnight!"
明日もシャボン玉は割れてしまうかも。
でも何故か悲しくはないんだ。
それは多分あの映画の結末のせい。

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