るに

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8/31/2024, 11:20:15 AM

すみません。
本当は僕、アンドロイドなんです。
戸籍や住所は全部デタラメで、
飲食も
食べること、飲むことは
できますが、
エネルギーにならないので
幻影機能を使っていました。
あなたが人間と間違えるのも
無理はありません。
柔らかい体、
長い黒髪、
僕はどこから見ても普通の少女ですからね。
でも、すみません。
防水機能は無くて、
プールは行けません。
不完全な僕で
申し訳ないです。
気持ち悪いですよね。
アンドロイドと友達なんて。
今後一切接触しないので
ご安心ください。
え?
別にアンドロイドでも構わない?
プールはやめて山でも登ろう?
ありがとうございます。
僕といてくれるんですか。
すごく嬉しいです。
あ、そうだ。
この間お借りした漫画、
とても絵柄が好みでした。
言葉選びがお上手な漫画家さんなのでしょうか。
僕は特に、1番最初の一言が好きです。
"Good Midnight!"
ってやつです。
今度漫画お返ししに行きますね。
山登り楽しみにしてます。
僕のことアンドロイドだと知っても、
人間と同じように扱ってくださり
ありがとうございます。
これからもずっと仲良しでいましょう。

8/30/2024, 10:57:07 AM

誕生日にあげようって決めてた。
雨とコアジサイという
紫陽花の香りがする香水。
普段香水なんて買わないし、つけないもんだから
値段の高さに驚いた。
どんなのがその人に合う香水なのか
お店の人に聞いた。
匂いのキツイものでなければ
どんな香水も合うとのことだった。
だからパッケージで選んだ。
雨が好きだし、
紫陽花も好き。
紫陽花に匂いはないけど、
コアジサイには虫を寄せつけるために
甘い香りがするらしい。
目を惹かれるに決まってる。
午前3時、
早速つけてみた。
雨の匂いの中に
ほんのり香る甘い匂い。
この香水には
きっと
私の大好きな漫画の一言が
1番合う。
"Good Midnight!"
自分の誕生日に
自分へのご褒美にあげようと
奮発して買った香水。
夜はどこにも出かけないけど、
出かけるためだけにつけないってのも
悪くないのかなと
金平糖を砂糖がわりに入れた
コーヒーを飲んだ。

8/29/2024, 12:48:37 PM

私の命の恩人は、耳が聞こえなかった。
私の家族は
どこにでもいるような普通の家族だった。
けど、
肌寒さが微妙で
鬱陶しかったあの日、
家族はバラバラになった。
父も母も姉も
事故で亡くした私に
残ったものなんて何も無かった。
親戚の中でも
私を引き取ってくれる人はいなかった。
だから歩いた。
何日も飲まず食わずで
ひたすら歩いた。
誰か、
神様みたいな人が
私を助けてくれると信じて。
そして本当に神様みたいな人が
助けてくれた。
何不自由無い生活を送らせてくれた。
でもその人は耳が聞こえなかった。
昔は聞こえたらしいけど、
年をとると共に
キレイさっぱり
聞こえなくなったみたい。
手話を習い始めて
最初はぎこちなかったけど、
話せるようになってきて
すごく嬉しかった。
そんなある日、
その人が倒れた。
入院して今日で半年。
ずっと目を覚まさないまま。
私はまた目の前で家族を亡くすのか。
また何も出来ずに終わるのか。と
沢山泣いた。
毎晩泣いた。
数日経った時、
夜中の2時49分
容態が急変した。
その人は死に際に
1度だけ目を覚まして
口を動かした。
声は出ていなかったけど、
拾ってくれた時から
ずっと手話で話していた
あの大好きな漫画の一言のことだろう。
たしか、
"Good Midnight!"
だったっけな。
あなたは一体どれほどの物を
私にくれるんだろう。
熱い涙が頬を伝った。
言葉はいらない、ただ…
続くとは限らない毎日、
目の前で死にゆく人を見る気持ち、
それも大事で
記憶に残さなければならない物なんだって、
人生はここで終わんないって。

8/28/2024, 12:08:08 PM

たしか、出会いは8月頃でしたね。
すごい暑い日でした。
私がコンビニにアイスを買いに行った帰りに
家と家の隙間から
ひょこっと顔を出した黒猫の君。
オッドアイで
珍しい子だなと思っていました。
首輪などは見当たらず、
野良猫のようでした。
他の猫にでもやられたのでしょうか。
傷だらけで
弱っていました。
可哀想だったので、
動物病院へ連れていきました。
命に別状はないとのことで
安心して
すごく大きな声で
よかったぁ〜と、
言ってしまいました。
もしかしたら飼い主がいるかもしれないので、
元いた場所に放しました。
1ヶ月ほど経った頃の
突然の君の訪問は
驚きましたよ。
お礼のつもりなのでしょうか。
ネズミをくわえて
にゃあ
と、
可愛い声を聞かせてくれましたね。
でも私はネズミが苦手なので
悲鳴を上げて逃げてしまいました。
あの時はすみません。
後から謝ることはいくらでもできますが、
実体がなくなってから
謝ることになってしまった
私を許してとまでは言いませんが、
どうか恨まないでほしいです。
真夜中に空へ逝ってしまった君には
この言葉が1番いいと思います。
私の大好きな漫画の一言です。
"Good Midnight!"
永遠におやすみなさい。
大好きですよ。
今も、これからも、ずっと。

8/27/2024, 1:11:54 PM

夜、変な時間に起きてしまった。
雨が降ってるようで
ザーという音が気になって眠れない。
仕方ないので
ベッドから起き上がって、
お気に入りの藍色のソファに腰を下ろす。
猫がお茶会を開いている絵画は
いつ見ても心が落ち着くなぁと、
甘すぎるぐらいの抹茶を飲んだ。
私の家は
窓が多い。
だから外もよく見える。
だんだん強く、
カーテンのように降る雨を
15分ほど見つめていた時だった。
長いマフラーが目に映り、
その少年を見つけた。
片足は義足だろうか。
木でできている。
傘もささずに雨に佇む姿は
堂々としていて、
羨ましい限りだった。
でもこんな時間になぜ外に?と
30秒ほど見つめてようやく疑問が湧いた。
視線に気づいたのか、
少年はこちらを見て
口を動かしていた。
何か言っているように見えるが、
雨の音で聞こえない。
少年はにこやかに微笑み
そのままどこかへ行ってしまった。
はっとした。
あの笑顔を
どこかで見たことがあると思った。
急いで本を引っ張り出した。
この子だ。
この子が一番最初に話した言葉。
私が大好きな漫画の一言。
"Good Midnight!"
そう言ってたのか。
気づいたらベッドの上だった。
なんだ、夢か。
少し寂しい気持ちになった。
外は晴れていて
水たまりをキラキラと光らせていた。

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