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5/1/2025, 10:54:15 AM

令和7年5月1日

お題「風と」

早苗揺れ 風で風邪との 知らせあり 

           作 皐月 さなえ  



「まだ見ぬ、波濤」   作 碧海 曽良 

 タモリさんが「また来週〜」と言った、そう今日は週末金曜日、タモリさんまの「笑っていいとも」は金曜日いつも録画して深夜にビール片手に観ていたが、今日はリアタイで観た。

まだ、お昼過ぎだ寝込んでいた数日分の留守電を整理今夜、おこまに電話してみようかと考えていたところに、インターホンが鳴った、こんな時間に約束もなくインターホンを鳴らす奴なんてろくなもんじゃないと無視を決め込もうとしていたところに、「ねえ、おるー?」と、おこまの声が響いて、慌ててドアを開けた「なによ、ビックリした」と、おこまに言うと「こっちこそ、なんべん電話してもでんし死んでのかって心配したよ」おこまは海内からの電話で粗方のことを知り、海内の伝言を持ってお節介やきに来たのだ。「ちょっと、面倒くさいかなぁ」と内心呟きながら、おこまを通す前におこまは入っていた。

「コーヒーでええ?」
「有り難う、そんなことより体もうええん?」
「うん、もう快復したで」
「地獄よりの帰還お疲れでした、ちょっと痩せたんちゃう?食べれてるん」
「食べてる食べてる、お昼にカツ丼食べたで」
「なら、良かった、、海内から電話有って売り場行ったら無断欠勤で知らんかって逆に聞かれるし心配したで」
「有り難う、心配かけてごめんや〜」
「元気なら良かったわ、海内もだいぶ心配してたよ」
「雨ん中、追いかけても来んとかいな笑えるやちゃなぁ、相変わらず」
「そんなけ毒吐けたら大丈夫やな」おこまは笑った。
「今さっき、卒業写真を押し入れの奥の異次元空間にある五番街に閉じ込めて鍵を掛けました」
「燃やしては捨てれやんのかいな」
「今は、まだ、、、」
之子は俯いて笑った。
「嫌いには、絶対なりたくないんや」
「嫌いになれたら楽やのになあ」おこまが呟いた。おこまの聞いた話では、海内は随分と仕事で悩んでいたらしい、元々群れるのが苦手なスプリンターグランドを一人走っている姿が印象的な海内だった、それが先輩同僚締め切り前には編集室に泊まり込みで、その頃流行り出した写真週刊誌の編集部は、地獄の体育会ノリ、軽薄な学生生活の延長ではない。そんな野次馬達の好奇心を満たすプロが写真週刊誌記者だ、軽薄で格好だけの正義感なんぞ捻り潰されるそんな世界だ。それでも何故その世界に身を投じるのか?勿論入社1年目の海内には解らず、それを聞き解しまた仕事に向かわせるそんな堪忍袋の紐は年上の女の方が1枚も2枚も上手であった。海内は気づけば、元彼女であり先輩でもあった女性記者と縒りを戻してしまった。彼女は人妻で子供も居たらしいので、とんだ間男の若い燕よろしくの話だ、それ以上之子は聴く気がせず、おこまのお喋りを遮った。

「もう、ええわ。やめて、それ以上、嫌いになりたくないねん、アイツのこと」

「あ、ごめんや分かった」

流石に、お喋りなお節介おこまも黙り、いきなり「なあ、体もうええんやろ?映画でも見に行かへん」「ええ、職場の人に会ったらマズイし、明日から仕事やし」「ええやん、見つからへんて、銀座くらいまで行きゃあ、東京はそんなに狭ないで、ドラマみたいに(笑)」「なに観るん」とりあえず行ってみようやという話になって、之子は新しい革のジャケットにツイードスカートに着替えた。ラッシュ時間にはまだ早い午後3時少しヒヤヒヤしながら銀座へ出た。

観る映画を探して之子とおこまはぶらぶらと歩いた。途中、学生と思しきナンパに二組ほど会い、之子は忘れられない映画に出逢う「男女間に友情は成立するか?」「彼が彼女を見つけたのは?」チャーミングでウィットに富んだ会話劇「恋人たちの予感」1989年の映画。
之子はメグ・ライアンの虜になった。

ラブストーリーが大好きな之子に対してアクション映画派の、おこまだがこの日は之子に合わせてくれた。「失恋した後でラブストーリー観れるその精神的強さ尊敬するわ」とおこまに言われても臆することなく、メグ・ライアンが子供の台詞「家族が見えた〜」に涙する姿に涙する之子であった。

二人は映画の後で、これも来る前におこまが予約を入れていてくれた少し高めのフレンチレストランで夕食をした。それから、クリスマスのイルミネーションの中早めに帰った。

「来月は誕生日やん、クリスマスもどうすんの?」
「今年は、年末まで仕事!走りますやん笑笑」之子は迷いなく答えた。

「おこま、今日は本当に有り難う感謝よ」と之子が手を合わすと「おおっ」と、おこまは胸を張って見せて笑った。

平成元年11月も終わろうとしていた、冷たい風がイルミネーションを揺らしていた。

つづく





4/30/2025, 11:45:47 AM

令和7年4月30日

お題 「軌跡」

軌跡… 〇与えられた条件全てを満たす点の集まりが作る図形。

    〇車の輪が通った跡。比喩的に辿って来た(移り変わって来た)道筋。

奇跡… 常識では考えられないような神秘的な      
    現象。

奇蹟… 宗教的な真理の徴。

「キ・セ・キ」  作詞 GReeeeN.

明日今日よりも好きになれる 溢れる想いが止まらない
今もこんなに好きでいるのに 言葉に出来ない

君がくれた日々が積み重なり 過ぎ去った日々二人で歩いた「軌跡」

僕らの出逢いがもし偶然ならば 運命ならば
君に巡り合えた それって「奇跡」

二人寄り添い歩いて 永久の愛を形にして
いつまでも君の横で 笑っていたくて
有り難うや 嗚呼 ア・イ・シ・テ・ルじゃあまだ足りないけど

せめて言わせて 君に出会えて

「幸せです」と 

2008年のヒット曲
1989年の彼女はまだ知らない。

「まだ見ぬ、波濤」  作 碧海 曽良

 初恋が泡に消えた人魚姫は、死んじまっがまだ死ぬ訳にはいかない之子は、空腹を満たす為に冷蔵庫をあさる、果物プリン食べやすいものを気を遣って入れてくれた同期の小暮に感謝しながらそれらを平らげた。さっき、ばあちゃんの声を聞いたら、迷いは彼方に消え、母の声に生きている心臓の鼓動と流れる血潮が流れる音を聞いた。それから、4日ぶりくらいに化粧をし洋服も部屋着から着替え外へ出た。

近くのスーパーまで食料を買いに。
無性に脂こいものが食べたくなり、トンカツの材料を買う。キャベツとキュウリトマトも忘れずに。数日の間に随分季節が流れた様に感じもう一重のはおりものでは寒い。4日間ほどまともに食べていなかったから体がふあふあと宙に浮いているようだ。もともと痩せ型肉はつきにくい体が一回り痩せて見えて、「なんか辛気くさーい」と自分に発破をかけて早足で歩いて帰った。帰るとトンカツを揚げキャベツの千切りとトマトキュウリも添えて炊きたて白米となめこの味噌でガッツリ食って薬を飲んで寝た。

ばあちゃんは昔からこんなことをよく言っていた。「腹が減っては戦は出来ぬ、ここがどん底かと思う場所でも食えたら生きろって体が言ってるってことや、体の声に従え」そんな言葉を思い出していた。

夜が明けた。
あの、三人模様の絶体絶命の最後の雨の日からそろそろ1週間が経とうとしていた。もう、熱は平熱だ、明日からは仕事に戻る。なんやかや丸1週間休んでしまった「今月の売り上げ終わったわ〜、前半頑張ってたのに」寝ぼけた顔は寝過ぎで少し浮腫み目がなくりそうになっていた「終わっとるわ」洗面台の鏡に映る自分の顔に語り両手で頬をピシャリとやった。それから溜まっていた洗濯やら掃除やらを片付けて、熱めの風呂を入れ半身浴をした。禅僧のように瞑想しながらBGMは…。

お湯に潜らないし
あたし泣かないけど
あんな浮気なおとこなんてさ
あたしの方から別れてやるわよ…

22才の恋なんて忘れてやるけど
あんたわたしの青春だったから
嫌いになんてなれないの
だから卒業証書を五番街に仕舞うわ…

なんだか色々ごちゃまぜの歌を歌い之子は気持ちを切り替えた。

風呂を出たらお腹がなった。

昨日揚げたトンカツを玉子でとじてカツ丼にした。

「お昼休みはウキウキウォッチング…」タモリさんとさんまちゃんの日だった。

腹いっぱいになって腹から笑って 22才の長い初恋がゆっくりと遠ざかり遠い海に沈んで行くのを感じた。

つづく 

使用曲 バスルームより愛を込めて
    悲しい色やねん
    卒業証書 
    五番街のマリー  失恋ソングベスト
    
全て分かりましたかぁ?


久しぶりに後書き


どんなに言われても言ってくれても、あなたは無理だから🌾🦜🌙 何故だか解る?ゲロ吐くくらい嫌いだから🌾🦜🌙


4/29/2025, 4:05:03 PM

令和7年4月29日

お題 「好きになれない 嫌いになれない」

多分二人共わかり始めていた。

彼は自然消滅を狙っているあの時と同じで、嘘を考えるより優しくて良い。許せるかしら?また、仕舞い込めるかしら五番街に。別れるより想い出に変わるまでが辛い。

燃え上がる愛しさほど
焼け跡は悲惨
灰になった恋心
残り火に積もる

別れましょうわたしから
消えましょうあなたから

好きになれない 嫌いになれない

なら、せめて想い出の中の二人になりましょう

無駄にしない大切な1人
嘘にしない優しさを
綺麗なだけの秘密の国の王子様
扉を閉めて閉じ込めろ!

好きになれない、今のあなたを
嫌いになれない、あの日の二人を

マイナスだらけの未来も
お花畑の王子様もいらないから

作詞 大黒摩季

「別れましょうわたしから 消えましょうあなたから」 リスペクトオマージュ。

作 夏色 悠 




「まだ見ぬ、波濤」   作 碧海 曽良

それから、眠りは海の底のように深く。之子は丸二日間飲まず食わずで眠り続けた。体が熱くてまだ心が疼くのか?とメンタルを心配したらなんのことはない、風邪だしかもかなり引き込んで熱は9度7分ほどあるが、動く気になれず会社に電話しようとしたら、同僚たちが心配して大家を連れてやって来た。「二日間も無断欠勤で電話にも出ないで」之子が海の底を彷徨うようにドロドロの睡魔を貪っていた頃、現世ではちょっとした騒動が起こっていたらしいが、赤い顔をした之子の顔を見た同僚たちと大家は一瞬した安堵の表情をまた心配顔に変化させて、之子を病院へと運んだ、入院は免れたが脱水が酷く点滴を2本してアパートに帰り着いたのは昼前だった。心配して駆けつけてくれた友人大家はそれぞれの仕事に戻り、同期の小暮だけが今日公休日ということで残ってくれて、冷蔵庫の中に果物や飲み物食べやすいものを入れお粥を作ってくれた。「ごめんね、有り難う」「イイわよ、困った時はお互いさま、とりあえず熱下がるまで大人しくしててね、売り場には連絡行ってるけど部長には連絡した方が良いかも」「了解、何から何まで」之子は両手を合わせて微笑んだ、小暮も微笑んで「じゃあ、行くね、ゆっくり休んで」「うん、分かった」之子はそう返して小暮を見送った。

お腹は空いておらず、まだ意識が熱のせいか朦朧とする中、どうにかお粥を一膳と水分補給をし薬を飲んだらまた睡魔に襲われる中、部長と売り場に連絡をし、3日間+3日間計1週間を有給扱いにしてもらい、なだれ込むように深い海の底のようなシンとした眠りの淵に落ちて行った。留守番電話がチカチカと赤信号のように点滅していたが確かめる気力もなく落ちていった。

次に目覚めたのは翌日の昼だった。

どうやら、昨日の昼から丸一日また海の底をひたひたと寝息を立てながら漂う白河夜船のようであったらしい。カーテンをあけ陽の光を浴びようやく人間として目覚めたような之子はお風呂にしっかり入り髪を乾かし着替えをしてようやく空腹に気がついた。昨日小暮が冷蔵庫に揃えてくれたものの中から見繕い、鍋焼きうどんをつくり、ようやく人間らしい食事をとった。

後かたづけをしながら留守番電話を確認した。

海内、会社、同僚、勧誘、会社、同僚、実家、大家、実家、実家、海内、海内、おこま、桐子、おこま、桐子、おたか、実家、とりあえず
之子は、会社から連絡は行ったという実家に恐る恐る電話をした。

「なんや!生きてたんか!」ばあちゃんの声の後から母の声が聞こえた。

込み上げるように涙が溢れて言葉を失った22才の之子だった。


つづく

4/28/2025, 10:23:41 AM

令和7年4月28日

お題 「夜が明けた」

 「ちょっと、待て🌕🥷」 

泥棒猫は絹の靴下に左脚を通しながら囁いた。窓の外夜明け前の静寂が支配している。元野良猫は上流気取った毎日が我慢できずに情熱を無理に閉じ込めることを止めたの。この夜明けとともに、砂の上をつま先立ててキャットウォークで歩く夜明け前夜が明けたら一緒に駆け出す朝日に向かって
獣のように…。
           作 春野 若葉
          
           


「まだ見ぬ、波濤」  作 碧海 曽良 

さよならと心で呟いた。
傘を揺らして駆け出してゆく。
大粒の雨だれが、激しく傘を叩いてその音だけが耳に入る。11月の雨は体の芯から寒さを伝え心臓が凍てつきそうだ。煙る街中が銀色に染まり流される、之子は珍しくTAXIに手を上げて飛び乗った。クリスマスの化粧を始めた街並みが玩具箱をひっくり返したように、雨にうたれ輝いて見えた。

バスタオルで髪を拭き、冷えた体を包んだ愛らしい青春の日々を思い出し包んだ優しさは今は要らない。不安な波に拐われる怖くて誰かを求めたのか?きっと。海内の気持ちに思いを寄せた。きっと、私じゃあ彼の隙間を埋められない。そして、私自身の隙間も彼には埋められない。きっとそうだ、遠廻りしたけれどこれで良かったんだ。

明日の互いを救えるのも隣で笑うのも互いじゃないと気づけた、有り難う私の青春このままあなたのかけらが消えるまで見つめている。

好きや嫌いで片付けられないのが愛なら、いつかこの痛みも愛となるだろうか?愛のおもかげとなるだろうか?今はまだ湯気をあげジンジンしている行き場のない想い、濡れた傘を広げ廊下に転がした。

眠ってしまおう、明日考えよう。
今日が少しづつ遠退けば、心も熱を失くすだろう。

之子は、ハイボール350ml入りを3本続けて煽りベットに潜り込んだ。


つづく



4/27/2025, 10:11:14 AM

令和7年4月27日 

お題 「ふとした瞬間」

ふとした瞬間に 視線がぶつかる
幸せのときめき 覚えているでしょ
パステルカラーの季節に恋した
あの日のように 輝いてる あなたでいてね

負けないで もう少し
最後まで走り抜けて…

昭和平成歌謡メロディー 「負けないで」

            作詞 坂井泉水

なに、昨日からこれしかないやん藁藁 

はい、続けます 

負けないでもう少し
ゴールデンウィークは近づいている〜♪


「まだ見ぬ、波濤」  作 碧海 曽良 


その日は、朝から冷たい雨が降っていた。
11月半ばの雨は氷のように冷たかった。

海内の元彼女だと名乗る二十代後半の女性が、ふいに店に訪れた、黒いスーツにショートカットがよく似合う如何にも出版社勤めのキャリア風の彼女だった。こっちだって負けてないわと背筋を伸ばし腹に力を入れた之子、「お話出来ないかしら」と言う彼女に、「今、仕事中ですから」と退店願った、彼女は店が終わるのを待っていた。

二人で、喫茶店に入ったのは午後8時近かった深夜迄やっている夜はお酒も飲める喫茶店。

向かい合せて座ったが、会話はない、「ビールでも」と勧められたが、飲む気にはなれずコーヒーを注文した「同じものを」と彼女は言った。沈黙はどれくらい続いたか、Winkの「悲しい熱帯魚」一曲分くらいの沈黙の後に「別れてくれない彼と」と彼女からで、山口百恵だと「そんなことは出来ないわ」と返すところだろと一瞬頭を過ぎる之子ではあるが、この時は「そんなことは出来なくもない」と内心呟きさっきまで店内に流れていた「悲しい熱帯魚」がリフレインされた。

Stop 星屑で髪を飾り
No-Stop 優しい瞳を待つわ…

あなたは来ない
私のおもいをジョークにしないでぇ♪

いや、ジョークにしてるのは私か?とも思いながら、少し間を置き「彼はこのこと知ってますか?」そう言って、店の電話を取り海内に電話しようとした時、彼が来た…。示し合わせていたのかどうか、海内は慌てた風もなく項垂れるように席についた。その姿を目にした時之子の中で何かが弾けた。話し出そうとする海内を遮るように之子は言った

「今なら大丈夫、嫌いになりたくないから何もいらない、、バイバイ」

そう言って、之子は伝票を握り席を立とうとした、その伝票を海内は押さえた。之子は何も言わずにそのまま店を出た。

カランカランと店のドアが鳴ったが続く音は無かった。之子は深呼吸をひとつして振り返らずに店に背を向け雨の中を歩き始めた。

雨脚は強さを増していた。

つづく






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