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令和7年4月29日

お題 「好きになれない 嫌いになれない」

多分二人共わかり始めていた。

彼は自然消滅を狙っているあの時と同じで、嘘を考えるより優しくて良い。許せるかしら?また、仕舞い込めるかしら五番街に。別れるより想い出に変わるまでが辛い。

燃え上がる愛しさほど
焼け跡は悲惨
灰になった恋心
残り火に積もる

別れましょうわたしから
消えましょうあなたから

好きになれない 嫌いになれない

なら、せめて想い出の中の二人になりましょう

無駄にしない大切な1人
嘘にしない優しさを
綺麗なだけの秘密の国の王子様
扉を閉めて閉じ込めろ!

好きになれない、今のあなたを
嫌いになれない、あの日の二人を

マイナスだらけの未来も
お花畑の王子様もいらないから

作詞 大黒摩季

「別れましょうわたしから 消えましょうあなたから」 リスペクトオマージュ。

作 夏色 悠 




「まだ見ぬ、波濤」   作 碧海 曽良

それから、眠りは海の底のように深く。之子は丸二日間飲まず食わずで眠り続けた。体が熱くてまだ心が疼くのか?とメンタルを心配したらなんのことはない、風邪だしかもかなり引き込んで熱は9度7分ほどあるが、動く気になれず会社に電話しようとしたら、同僚たちが心配して大家を連れてやって来た。「二日間も無断欠勤で電話にも出ないで」之子が海の底を彷徨うようにドロドロの睡魔を貪っていた頃、現世ではちょっとした騒動が起こっていたらしいが、赤い顔をした之子の顔を見た同僚たちと大家は一瞬した安堵の表情をまた心配顔に変化させて、之子を病院へと運んだ、入院は免れたが脱水が酷く点滴を2本してアパートに帰り着いたのは昼前だった。心配して駆けつけてくれた友人大家はそれぞれの仕事に戻り、同期の小暮だけが今日公休日ということで残ってくれて、冷蔵庫の中に果物や飲み物食べやすいものを入れお粥を作ってくれた。「ごめんね、有り難う」「イイわよ、困った時はお互いさま、とりあえず熱下がるまで大人しくしててね、売り場には連絡行ってるけど部長には連絡した方が良いかも」「了解、何から何まで」之子は両手を合わせて微笑んだ、小暮も微笑んで「じゃあ、行くね、ゆっくり休んで」「うん、分かった」之子はそう返して小暮を見送った。

お腹は空いておらず、まだ意識が熱のせいか朦朧とする中、どうにかお粥を一膳と水分補給をし薬を飲んだらまた睡魔に襲われる中、部長と売り場に連絡をし、3日間+3日間計1週間を有給扱いにしてもらい、なだれ込むように深い海の底のようなシンとした眠りの淵に落ちて行った。留守番電話がチカチカと赤信号のように点滅していたが確かめる気力もなく落ちていった。

次に目覚めたのは翌日の昼だった。

どうやら、昨日の昼から丸一日また海の底をひたひたと寝息を立てながら漂う白河夜船のようであったらしい。カーテンをあけ陽の光を浴びようやく人間として目覚めたような之子はお風呂にしっかり入り髪を乾かし着替えをしてようやく空腹に気がついた。昨日小暮が冷蔵庫に揃えてくれたものの中から見繕い、鍋焼きうどんをつくり、ようやく人間らしい食事をとった。

後かたづけをしながら留守番電話を確認した。

海内、会社、同僚、勧誘、会社、同僚、実家、大家、実家、実家、海内、海内、おこま、桐子、おこま、桐子、おたか、実家、とりあえず
之子は、会社から連絡は行ったという実家に恐る恐る電話をした。

「なんや!生きてたんか!」ばあちゃんの声の後から母の声が聞こえた。

込み上げるように涙が溢れて言葉を失った22才の之子だった。


つづく

4/29/2025, 4:05:03 PM