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8/2/2024, 2:57:17 PM

病室

彼女は、毎日病室の窓から向かいの病棟の外壁に絡まり伸びる蔦の葉を見つめている日々。一枚ずつ散っていく蔦の葉と自分の命を重ね 「最後の一枚が散ったら、わたしも死ぬんだわ」と呟く。そんなジョンシーの呟きを売れない絵描きは聞いた。

そんな絵描きは、人生最大の一枚を描き上げる決心をするのであった。

彼女が病室の窓から、自分の命を重ね見つめていた蔦の最後の一葉は、次の日も次の日も、その次の日も、嵐が来ようとも散らなかった。

彼女は、この生命力に満ちた最後の一葉に励まされ、少しずつ体調を回復させた。

やがて、彼女の病気は全快し病室から動き出せるようになった。嬉しさに彼女は活動的になり病室の窓から、蔦の最後の一葉を見つめることもなくなった。

退院が決まった日、ふと病室の窓から外を見つめた… 「あの最後の一葉は何故散らないのかしら」窓際に近づいて目を凝らしてよく見るとそれが絵であることに彼女は気づいて驚いて尋ねた、病室に居た黒い服を着た老人が「あの絵は、貴女のために描かれました」そう言って、彼女の前に歩み寄った。

生きる希望を無くして生気を失いかけながら、絡まる蔦の最後の一葉を見て呟いた言葉「最後の一葉が散ったらわたしも死ぬんだわ」その言葉を呟いた時の目とはまるで違う力強く生気に満ちた目で彼女は問うた。

「どういうこと?」



黒い服を着た老人は、売れない絵描きがこの病室の扉の向こうから、来る日も来る日も彼女を見つめ、窓際のベットに座り壁に絡まる蔦の最後の一葉を見つめ溢した言葉を聞いたことを打ち明けました。

そして、その売れない絵描きが嵐の夜に描き上げたのが、あの蔦の最後の一葉だと話しました。

彼女は胸をつまらせ、カーテンを掴んだ。

「わたしは、この散らない最後の一葉にどれほど励まされたことか、是非お会いしてお礼が言いたいわ」そう言った彼女に黒い服の老人は首を横に振りました。

「絵描きは、この絵を描いた2日後に肺炎を拗らせ亡くなりました」

けれど、嵐の中この絵を描いたことが原因だとは言いませんでした。けれど、彼女は察して泣き崩れました。

老人が言いました。

「わたしは、貴女には彼の存在を知って欲しかった、絵描きはそのことを望んでいないかも知れないが、わたしは、貴女に絵描きの真実を迷惑でしょうが知って欲しかった、それが絵描きのこの最後の絵を最高傑作にするのだとわたしが信じたからです」

彼女は、涙をふいて「わたしは生きます、わたしのために描かれた最後の一葉に誓って」

胸に手をあて彼女はキッパリと言いました。

朝露に濡れた、最後の一葉の絵はキラキラと光っていました。


オー・ヘンリー著書 
「最後の一葉」オマージュ。


                 心幸
           
          












8/1/2024, 10:52:57 AM

明日、もし晴れたら

明日、もし晴れたらって近頃ギラギラ燃えてる太陽とムッとする大気を肌に纏うと生命の危険さえ感じるんですけど…。

もしも、明日が晴れならば
愛する、人よあの場所でなんて外での待ち合わせは避けましょう。

もしも、明日が晴れならば
愛する、人よ紅茶の美味しい喫茶店で待ち合わせましょう。

明日も、御堂筋はこぬか雨は降らなくて
熱中症警戒アラートよ。

もしも、夕方雨ならば
愛する、人よそばにいて相合傘でなんて帰れないわ。

降る雨は、電車も止める
ゲリラだからよ。

もしも、季節が変わったら
愛する、人よあの歌を
歌いながら逢いに行きます。

もしも、明日が晴れならば

そんな、約束が出来た
季節は、戻らない

もしも、明日が晴れならば
熱中症警戒アラート
夏は、本当に御用心。


令和6年8月1日

心幸

7/31/2024, 1:26:59 PM

だから、一人でいたい。

二人でいる寂しさよりも
一人でいる寂しさのほうが
いっそ、せいせいすると
あの子は、言った。

自由が先で自由こそ大事と
馬鹿な自称天才は
訳知り風に、シュプレヒコール
あの子は、叫んだ。

だから、一人でいたい。

二人でいる寂しさの方が
一人でいる寂しさよりも
冷たいと、知っているから
あの子は、言った。

不自由な決まり事があるから
こそ、自由を知ることが出来る
全てを知ると豪語する自称天才に
不自由だからこそ自由になれると
あの子は、言った。

自称天才には、わからなかった
何故なら、彼は守られて
安穏とくらしているから
自由っていったいなんなのか
知っていなかった。

だから、一人でいたい。

なんて、嘯くのだ

本当の孤独を知らない呑気
本当の自由を知らない呑気

しんしんと、凍てつくような孤独
触れたものが、端から凍てつくような孤独
深い深い山の奥で一人きりで自由
そんな自由欲しいか?まるで自慰行為みたいな
フリーの根無し草

人と人の間で、不自由だと思ったり
気遣ったり、気遣われたり
満ち引きする潮の流れのような
引力のような何か根子のような柵
例えば、家族、仕事、近くの他人
そんな不自由があるからこその自由だと
あの子は言った。

だから、一人でいたいなんて私のことを分かって慰めてと言ってるみたいなこと言ってんじゃねえよ。

そう言って、あの子は笑った。

令和6年7月31日

                 心幸 






7/30/2024, 4:31:48 PM

澄んだ瞳

ビー玉みたいな瞳だった
光の加減で大きくなったり小さくなったり
暗闇でキラキラ光って見えてた
片目だけ覗いて私を見てたね
友達が帰るまでじっとそうしてた

多分、私を守ろうとしてくれていた
あいつ、友達を送り帰ったアパート
あいつは、姿を隠していた

暫くしたら、ひょっこり当たり前に
テレビを観ている私の横にあらわれた
ちょっと、距離を置いているのは
ご立腹か? 手を出してみた
スンスンと手の匂いを嗅いでいる

全く二人だった空間に
今日は知らない人を連れて来て
二人で騒いでゴメンナサイ
どうぞお許しを

差し出した指先で
首を撫でてみた
頭を突き出してゴロゴロ
澄んだ瞳で見つめられた
ゆっくりまばたきゴロニャン

あの頃ペニー・レインとのように
私とあいつは一緒だった

ビー玉みたいに
澄んだ瞳のあいつ…
幸せをありがとう

令和6年7月30日

心幸

7/29/2024, 2:28:42 PM

嵐が来ようとも

嵐の夜の前の日赤い月が不気味に輝いていた。
あれから1年が丁度過ぎました。

1年とは短いようで長いものだと染み染み感じた1年をまた赤い月が静かに輝く空を見ていました。

これからまた嵐が来るのでしょうか?
今年の夏は去年の夏より暑さが増しているような赤い月も熱気を帯びた土さえ撒きそうなそんな宵です。

高揚とした赤い月
朧な春の月とは違う
土用の赤い月

めぐる盃に かげがさすのは

春でも秋でもなく

こんな暑くて赤い月が昇る夜のような
気がしてならないのです。

今 荒城の夜半の月
かわらぬ光 誰がためぞ
垣に残るは ただかつら
松にうたうは ただ嵐

天上 影は 変わらねど
栄枯は移る 世のすがた
写さんとてか 今もなお
あゝ荒城の 夜半の月

私は、この歌に今
土用の赤い月を写して
義母(あなた)のことを思っています。

私たちの勝負はまだついていません。

きっと、来世で会おうです。

私は、去年と同じ赤い月を見上げ
義母(あなた)のことを思っています。

嵐が来ようとも

きっと、来世で会おうと思っています。

きっと、その時も憎しみ合うのでしょうね(笑)

楽しみにしています

来世で会いましょう

義母(お母さん)

義母さんならきっと助太刀無用と言うでしょうね。

多勢で無勢を狙うようなそんな卑怯千万な人ではないからこそ、義母さんは私の盟友であり宿敵であります。

人生は嵐が来ようともサシの勝負ですよ(笑)


令和6年7月29日

                心幸




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