失われた時間
時間とは、生きるということ。
時間をケチケチすることで、本当は別の大切なものを喪失しているということには誰ひとり気づいていないようでした。
時間とは、生きるということそのものなのです
そして人のいのちは心を住みかとしているのです。
廃墟となった劇場に住みついた、粗末な身なりの女の子モモ。街の人々は相談をし、モモの面倒を見ることになります。
孤児で不思議な空気を纏う女の子モモは、人の話を聞くのが得意で飽きずに人の話を聞く女の子でした。モモに話を聞いてもらうと硬くなった心が柔らかくなり悩みが消えてゆく…。不思議な力を持つモモは、街の人々に愛されました。
ところがある日、街に灰色の男たちが現れます。
「時間を貯蓄銀行に預け貯めるとお金が倍になる」と言う彼らの言葉に乗って、街の人々の時間は失われました。
ミヒャエル・エンデ「モモ」は「時間」がテーマのお話 副題は「時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子の不思議な物語」
「灰色の男たち」とは
灰色の男たち、「時間貯蓄銀行」を称する集団彼らの見せる幻想と語る言葉の言靈に乗せられ時間は奪われて行きます、彼ら時間どろぼうとは何者なのか?考える間もなく人々は、心の余裕を失ってしまうのです。
より沢山のお金を得るために、着飾るブランド品を買うために、時間貯蓄銀行に自分たちの時間を差出した街の人々は、その少なくなった時間を更に貪欲に生きようと、余裕を失って行きます。モモに四方山話を話に来る者も一人ひとり消えて行きました。
丁寧に生きる余裕
誰かとゆっくり語る余裕
時間どろぼうは、人の心に巣食う欲なのかも知れません。
モモという女の子と語らう余裕
毎日を忙しく生きている、大人たちのために
失われた時間の煌めきを思い出させる大人のための童話がミヒャエル・エンデ「モモ」なのかも知れません。
私の1番響いた台詞は「時間を感じとるために心というものがある」でした。
「モモ」はドイツ人作家の童話ですが、日本語でも、心を亡くすと書いて「忙しい」と読みますからね。
失われた時間の中にこそ大事な忘れ物を人はしてしまうものなのかも知れません。
過去を知らなければ明日は見えないのかも知れません。
時は偉大な作家である。
忘れ物を見つけるために失われた時間過ぎ去ってしまった時間を愛くしむ心の余裕は人生に深みを与えるのかも知れません。
2024年5月13日
心幸
子供のままで
子供の頃の思い出は大切な宝物でいつも傷ついたり立ち止まった自分の背中を撫でて押してくれる私の味方だ。
子供は洗いざらしで嘘がなく単純で馬鹿正直で未熟で素直であるからこそ癒やしの天使で明日を繋ぐ希望の味方だ。
けれど
子供のままでいたいいたかったとは思わない
だって
憂いを知ったから屈託のない日々が尊いと思う
だって
大人になったから子供の頃のを懐かしいと思う
だって
大人にならずに子供のままでいたら寂しいと思う
だって
ピーター・パンは寂しいだろう
だから
ピーター・パンは
大人にならなかった少年で
大人になろうとしなかった少年で
大人になれなかった少年だからだ。
分かるかい
子供のままでとか思えるのは
大人になったからなんだよ。
2024年5月12日
心幸
愛を叫ぶ
朝目覚める
感じたいぬくもりがない
冷たいダブルベットの左端
重い体を引きずり
カーテンを開けよう
眩しすぎる朝日と空いてる君の席
あの日の泣き顔
照らす夕日
体のぬくもりが消えてゆく
消し去ろうと思うたび
君を思い出させる
何時かは君のこと
なにも感じなくなるのかな
あの日の夕焼け
一緒に迎えた初めての朝は
日に日に消えて行くのに
君を思い出させる
なくしたものを越えるのか
君は…
そこにいろよ
僕の記憶の体の奥深く
君は咲き続ける
情熱の紅い薔薇
愛なら叫ばず偲んでみろと
僕に言う
激しく鳴く蝉よりも
鳴かぬ蛍が身を焦がす
2024年5月11日
心幸
モンシロチョウ
菜の花畑を舞っていた。
ユラユラと。
おばあちゃんと女の子が椅子を並べて座っていた。
女の子が駆けてくる。
逃げなければヤバいのかも知れない。
けれど、もう少し菜の花畑を待っていたくて
まだ、ちょっと足の遅そうな小さな女の子になら掴まらないだろうと、菜の花の黄色い花弁にしがみつきながら食事をとっていた。
女の子はそっと私の羽をつかんだ。
あっ、しまった掴まった。
女の子は私の顔をまじまじと見つめた。
「お願いします、離してください」
私は女の子の目を精一杯見つめた。
すると、女の子は。
「気持ち悪い、チョウチョの目ってブツブツいっぱいあって気持ち悪い」そういって振り回すように離された…。
「酷いわ、私は蝶よ!気持ち悪いだなんて」
「勝手に掴まえて、振り回した挙げ句に」
私は腹立ち紛れに、女の子の顔めがけ羽ばたいてやって、白い鱗粉かけてやった。
女の子は、怖がって逃げて行った。
私は、また菜の花畑を自由に飛んでいた…という夢を見た。
狐狗狸さんで前世はモンシロチョウと出た日の夢だった。
2024年5月10日
心幸
忘れられない、いつまでも
「もう一度、目が見たかった」
生涯忘れられない別れの言葉を私は聞いた
その人は子供のような顔をして子供のように泣いた。
何もかもが薄ぼんやりと頭の中から消えて行くその人は、泣きそうになりながら自分の頭を叩く、パニックになりながら不甲斐ない自分に壊れ散った自我の破片を拾い集めようとした皺だらけの小さな手は血に染まっていた。
愛を覚えていますか?
「あー、あー、あー」赤ん坊のように泣き叫ぶその人を突き離しても突き離せない赤い絆は、その人の小さな体に真一文字に刻まれていた。
愛を覚えています。
鮮明に痛々しいほど愛しい(かなしい)ほどに
その人は何時も謝っていた。
その人は何時も笑っていた。
その人は優しかった。
その人は温かかった。
その人は腹かっさばいて
私を産んだ。
私に命をくれた人
その人は
子供に帰り
愛しさ(かなしさ)の縁で
夫に呟いた
「もう一度、目が見たかった」
いつまでも、いつまでも
生涯忘れられない
愛の言葉を私は、その人に教えてもらった。
2024年5月9日
心幸