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忘れられない、いつまでも

「もう一度、目が見たかった」

生涯忘れられない別れの言葉を私は聞いた
その人は子供のような顔をして子供のように泣いた。

何もかもが薄ぼんやりと頭の中から消えて行くその人は、泣きそうになりながら自分の頭を叩く、パニックになりながら不甲斐ない自分に壊れ散った自我の破片を拾い集めようとした皺だらけの小さな手は血に染まっていた。

愛を覚えていますか?

「あー、あー、あー」赤ん坊のように泣き叫ぶその人を突き離しても突き離せない赤い絆は、その人の小さな体に真一文字に刻まれていた。

愛を覚えています。

鮮明に痛々しいほど愛しい(かなしい)ほどに
その人は何時も謝っていた。
その人は何時も笑っていた。
その人は優しかった。
その人は温かかった。
その人は腹かっさばいて
私を産んだ。

私に命をくれた人
その人は
子供に帰り
愛しさ(かなしさ)の縁で
夫に呟いた

「もう一度、目が見たかった」

いつまでも、いつまでも

生涯忘れられない

愛の言葉を私は、その人に教えてもらった。


2024年5月9日

心幸




5/9/2024, 2:47:15 PM