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5/5/2024, 1:22:47 PM

君と出逢って

まだ、あげたばかりの君の前髪が
桃の花の下に見えた時
前髪にかかった桃の花が
髪飾りのように見えて
なんて美しいと思った。

楓のような手をのばし
桃の実をもぎ取って
頬張り僕に笑いかけた
桃をぺろりとたいらげて
屈託なく笑う君に

僕は初めて甘酸っぱい
香りに胸を踊らせた

思わずもらした
ため息が
君の髪にかかったとき
恋に踊る愉しさを知った

甘い香りの立つ
桃の樹の下に
自然と出来た
細い道

誰かが通って出来たのか
これから 君と僕も
通るのか

誰もがみな
この道を通るのか

初めて君と
手を繋ぐ
甘い桃の香りが
鼻をかすめた

君と僕は
出逢った
君の花は散らない

50年前の
あの日のまま
君の花は散らない

皺の刻まれた
手も あの日のままに
小さくて楓のようで

桃の実を
頬張り笑う
横顔もあの日のままに
快活で

愉しそうに
笑う君と
手を繋ぐ

「ありがとう」と言う変わりに

ぎゅっと
その手を握りしめる

君は
この細い道は
あなたとわたしの道のり
そう言って
また 笑う

「ありがとう 待っていてくれて」

「待っていたは 遅れないでね」

僕と君は
初めて出逢った場所から
また、その細い道を歩き始める
彼岸まで一緒に・・・

「いいや、来世でも君を見つける」

「待っていてくれ、君の好きな桃の樹の下で」

「見つけてくれて有難う」

微笑む君が愛おしい。


2024年5月5日

                 心幸  


5/4/2024, 12:55:47 PM

耳を澄ますと

カントリー・ロード♪
それは、耳をすませば

耳を澄ますと

虫の声
それは、秋の詩

耳を澄ますと

清い声ばかりが
聞こえるとよいが

耳を澄ますと

悪魔の囁き
それは、案外甘かった

耳を澄ますと

自分の弱さの声と
自分の強さの声が

耳を澄ますと

自分の寂しさと
自分のおおらかさが

耳を澄ますと

母の声と
父の声が

耳を澄ますと

あなたの声が
聞こえる

だから 私は
今夜も 耳を澄ます 


2024年5月4日

心幸

5/3/2024, 1:24:37 PM

二人だけの秘密

今更 好きだなんて言えない
ますます好きなのに…
逃げ出したいの?
あたし

雨の中スピードあげて
誰の声も無視した
燃えつきるまで
二人でいさせて

二人の秘密 築き上げようとしたけど
あなたの微笑みさえ嘘になる 
信じたくない
信じさせて

昨日明日今 
ただ あたしを責める
胸えぐるくらい 
浮かぶ微笑み

後悔が引き寄せる
不幸な幸せ体で感じる
ただ あなたを責める
信じたくない
信じさせて

二人だけの秘密 


2024年5月3日

心幸

5/2/2024, 3:08:32 PM

「優しくしないで」

女は、意地を張ってそう言った。

「一人でも大丈夫だから」

女は、泣かないようにフッと息を吸った。

「どっか、行ってよ鬱陶しいなぁ」

女は、背中を向けてそう言った。

男と遊んでるふりしてみたり
女のつけぬ香水つけてみたり

夜明けを待って帰れば
背を向けて捨て台詞

可愛い悪女は
素直になれずに
独り泣く

「優しくありたーい」

女は、私は優しいと言わんばかりにそう言った。

「みんな違ってそれで良い」

そのくせ、顔の見えないところで
馬鹿だの下品だの下衆だの指を指す。

そのくせ、繊細さん
そのくせ、ヒステリック
そのくせ、他人のそれは許さない。

本当の悪女とは
こんな感じかと…。

「優しくしないで」って人ほど優しさを求めていて、優しさのなんたるかを知っている。

「優しくありたーい」って人ほど優しく出来ない、人に優しくするのはとても簡単ということを知らない。


自分の定規を心にあてて
真っ直ぐな線を引こうとしても
笑いや涙の絵具で描く人生は
誰もが主人公だから一直線には
線は引けない。

白くて大きな優しさは
笑いや涙で染められた
誰もが主人公の脱線だらけの
線を包むこと。

「優しくしないで」って人ほど、そのことを知っているもの。


2024年5月2日

心幸  


















5/1/2024, 1:54:53 PM

カラフル

光のプリズムが君を背中から照らした。
君の笑顔が逆行で見えなくなったけど
笑顔の残影がしっかり残ったよ。

1986年冬、やって来た、謎の転校生。

本当は2024年の少年、私の会えなかった息子なのかも知れないと思った。

少年は17歳の私を見に来た、15の夜の姿で。私の青春で私と同じにその時代の学生服を着て一緒に暮らした。

暮らせなかったから、そうした。

砂漠みたいな世の中で、カラフルに光る虹の橋を渡って、謎の少年は会えなかった人に会いに来た。

年下だけど、ずっと前から知っていたような、守られているような、そんな気にさえなる、まだ何者でもない17歳の私だった。

やがて、光のプリズムは君を背中から照らし君は光の中に消えて行った、見えなくなったけど笑顔はしっかり私の心に残ったよ。

2024年冬…。

もう、私はおばあちゃんになった。

私には、会えなかった息子が一人います。

今時々その虹の橋に消えた少年のことを思い出すのは、あれは会えなかった息子が会いに来てくれていたのではなかったかそう思うのです。

もっと、抱きしめてあげれば良かった。

そんな昔話を語ってくれる認知症のおばあちゃんがいました。

随分と歳を召され
記憶は時々曖昧になり
忘れぽくなったよと仰っても、生き生きと鮮やかに蘇るように語られる昔話

おばあちゃんは、十七歳で
息子か初恋の人にもう一度会ったのか分からない、そんな昔話を聞いた。

おばあちゃんの頬は鮮やかに輝いて
カラフルな光のプリズムの向こうに消えた
初恋の彼なのか、会えなかった息子なのか分からない謎の少年の光る笑顔だけを鮮やかに記憶している様であった。

カラフルなぼんやりとしたけれど、最後まで覚えている笑顔。

おばあちゃんのカラフルな昔話を聞いた。


2024年5月1日

心幸


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