「あの花!」彼女が庭に咲いてある藤色の花に指を指して言った。「この花はね、草が枯れたあとに花が咲くのよ。不思議でしょ。花を輝かせるために、草は花に自分の全てを捧げるの。」花を眺めているのに、もっと遠くを見つめているような初めてみる彼女に僕は戸惑い、話を変えてしまった。
そんなことがあった数日後、僕は彼女の家へ向かおうとバスに乗っていた。最近はお互いに忙しくて会うのは一週間ぶりくらいだろう。彼女の住む町に着いてバスを降りようとしたとき、グラッと視界が揺れ、僕は倒れた。
「○○、、!お願い目を開けて、○○、、!!!」
騒がしい人の声に紛れて聞き慣れた声がする。手は力強く握られていて、啜り泣く声とともに雫が落ちてくる。あぁ、僕のためなんかに泣かないでくれ。
「絶対、絶対私が助けるから。」彼女のこの言葉を最後に、僕はまた気を失う。
ガバッ…飛び起きた僕は真っ白な部屋を見渡す。
そこには君の姿はなく、パタパタとやってきた医者が状況を説明してくれた。
………………彼女が、僕の変わりに、、、、。
彼女は、元々持っていた持病が悪化し、残りが短いと言われていたらしい。頭が真っ白になって、僕は黙り込んだ。
数日後、退院した僕はやっと家へ帰ることになった。玄関へ向かう途中、ふと僕は庭を見た。
「枯れ草だらけだった庭には、太陽に照らされたコルチカムの花が力強く咲いていた。」
「力強く」
毎朝、ただただぼーっとニュースを流し見する。
今日の日付を見て、私は動きが止まった。あの人の誕生日だ。もう、祝うことはないあの人の。なんだかんだ、一回も祝えないまま離れてしまったな。
そんなことを考えながら、ふうっと静かに深呼吸をして、私は朝の支度を進めた。もう、私にはなんの日でもないんだ。
「過ぎた日を想う」
帰り道にいつも1人で私を見守ってくれているあの星にも、いつも一緒に光る仲間がいるのかな。
日が暮れ始めた紫色の空にぽつんと光るあの星を眺めながら、ふとそんなことを考えた。
一際目立つともいえない、ぼんやりとした光をいつも纏っている小さな星。
たくさんある星座の中で、私はまだ君がどんな人生を送ってきたか分からないし、誰と仲良しかも知らないけど、ふと気付いたときに1人でも頑張ってる君を見ると、人生まだまだ始まったばっかだなって思うよ。
夜になると君のことは見失っちゃうけど、君は星座になって、また私に光を見せてくれる。
この世界も悪いもんじゃないね。
「星座」
空が暗くなって夜が世界を包んだ。
この時間だけは、私と君だけの時間だ。人の声も少なくなって、車の音がよく響く。君を想って月に祈って、君を想って言葉を綴る。
通知音と共にスマホが光った。君が来た合図だ。深夜2時、私はLINEを送る。
「踊りませんか?」
たとえ、星が降る日に一度だけしか会えなくても
君を想って毎晩空を眺めるよ。
「巡り会えたら」