「あの花!」彼女が庭に咲いてある藤色の花に指を指して言った。「この花はね、草が枯れたあとに花が咲くのよ。不思議でしょ。花を輝かせるために、草は花に自分の全てを捧げるの。」花を眺めているのに、もっと遠くを見つめているような初めてみる彼女に僕は戸惑い、話を変えてしまった。
そんなことがあった数日後、僕は彼女の家へ向かおうとバスに乗っていた。最近はお互いに忙しくて会うのは一週間ぶりくらいだろう。彼女の住む町に着いてバスを降りようとしたとき、グラッと視界が揺れ、僕は倒れた。
「○○、、!お願い目を開けて、○○、、!!!」
騒がしい人の声に紛れて聞き慣れた声がする。手は力強く握られていて、啜り泣く声とともに雫が落ちてくる。あぁ、僕のためなんかに泣かないでくれ。
「絶対、絶対私が助けるから。」彼女のこの言葉を最後に、僕はまた気を失う。
ガバッ…飛び起きた僕は真っ白な部屋を見渡す。
そこには君の姿はなく、パタパタとやってきた医者が状況を説明してくれた。
………………彼女が、僕の変わりに、、、、。
彼女は、元々持っていた持病が悪化し、残りが短いと言われていたらしい。頭が真っ白になって、僕は黙り込んだ。
数日後、退院した僕はやっと家へ帰ることになった。玄関へ向かう途中、ふと僕は庭を見た。
「枯れ草だらけだった庭には、太陽に照らされたコルチカムの花が力強く咲いていた。」
「力強く」
10/7/2024, 11:25:43 AM