寒さが身に沁みて来るなかで静かに酷く病んでいく。体以上に孤独が心をやませていく。深々と寒い日々を感じるなかであたたかそうな人々に憧れと羨ましさを感じて悲しみの中にいる。誰かと寒さを共感できれば少しは紛れるのだろうかと考えながら雪の降る静かな空を見上げている。穏やかで何処か寂しい。普通の顔をして孤独と一緒に、冷たい風から逃れるようにマフラーに顔を埋めて歩き出す。温かいものを食べよう、少しでも癒やされるように自分を甘やかして生きるためにそう思って、楽しそうに歩く家族連れの人々を見ないふりして何を食べようかを心の中で寄り添う孤独に問いかける。すれ違う、一人で歩く人の中にも孤独が寄り添っているのだろうかと考えながら目についた人が誰かと待ち合わせていたのが見えてため息が漏れた。
20歳の誕生日は随分と激しい雨だった。これといって何事もなく過ぎて行くのが寂しく感じて雨宿りに入ったカフェでケーキを食べた。なんとなく入った店のおすすめだというオペラというケーキは随分と濃厚な甘さとカカオの風味であまりケーキを食べたことがないせいもあって特別なものを食べた気がして少し楽しい気持ちを感じたのを覚えている。それ以来なんとなく誕生日はその店でオペラケーキを食べることにしている。年一回だから店員も覚えていないだろうが毎回丁重に応対してくれるお陰で自分の中でだけ、祝われているような気持ちになるせいかささやかな幸せを感じる。店を思えばもう少し頻繁に通うほうが売上には良いのだろうが、日常にすると特別な日に行く喜びが薄れそうでなかなか足が向かない。店にとってはあまりいい客ではないなと思いながらせめてもとネットのレビューに良い評価をつけておいた。
三日月のように笑っているのだろう声がする。楽しげに幸せに羨ましくて仕方がない笑いかけてられているその人の相手に嫉妬する。自分には手の届かない世界の人自分にはどう頑張っても振り向かないひと、それでも私は羨ましくて仕方がない幸せを願いながらでも多分そのために自分を捨てることができないのが悲しい苦しい辛い羨ましくて仕方がない。身を捨てられる人々の強さと賢さに憧れてだからといって努力をするには怠惰あきらめばかりが先にくる多分あとに回すほど苦労する苦しみの中に私がいる。逃げた、それにも多分ちゃんと理屈はつくけれどもそれが本当に幸せだろうかと随分と迷う。どんな道でもきっと考え次第なのはわかっているが、どれを選んでももうたすからない。
色とりどりの美しい者たちを見る幸せな輝きの中に本当に自分が混ざれないことをひどく悲しく感じる。何もしなかったただ時間だけが過ぎる中どちらも選べない間ただただどこまでもどうしょうもない悲しさと寂しさを感じる。頭のいい人たちに憧れと羨ましさを持ちただただ見るにせよそれすらも中途半端で真似ることすらうまくできない羨ましい本当に羨ましいただ少しだけその世界を覗き込む事ができたのは幸せなのか知らないほうがきっと幸せな日々を遅れたのだろうかあるいはそこにどうしょうもない羨望と嫉妬が交じる。諦めの中でいつかの終わりを思い静かに眠りたいと目をそらす。
新年早々に働きにでる。寒い中、足早に駅に行く途中で、楽しげな人たちや家族連れを見かける。自分の選ばなかった人生の道の先にそれらがあったのかもしれない等と思う。どのみち戻れないのだから今の人生が一番マシな選択の結果だと自分に言い聞かせながらも何処かでもしもを考えてため息がでる。正月から随分と嫌な思考になっている。さっさと仕事に行ったほうがマシだと思いながら、駅のホームで旅行に行くのだろう恋人らしい二人連れの話し声を避けて少し離れて電車を待つ。