手紙での連絡でごめんなさい。携帯料金の事を考えると電話より手紙の方がこちらとしては都合が良かったので手紙という選択肢を取りました。
改めて、お久しぶりです。こちらは、気候が安定しているので体調を崩さないで元気にやれています。
ただ、言語の壁というのは乗り越えるよりもぶち破る方がいいのかもしれないと思うようになりました。
友達ができたみたいだけど、言葉が通じないのでジェスチャゲームを交えながら言語を取得しています。
たまに、変顔を入れられるので笑ってしまいます。
〇〇より
2人ぼっちといった俺から君へ
お前、俺からの電話を断った挙句に手紙でよろしくとはいい脳ミソをお持ちのようだな。
是非とも、どうすればそのような素敵な脳ミソが出来上がるのかじっくりと観察してみたいものだ。
改めて、久しぶり。元気にやれているようで、安心した。
友達ができたみたいってなんだよ。お前、そいつとの会話の時特に考えずうんうん頷いてただけだろ。
お前は、ただでさえストレスに強くないんだから体調管理を怠らないように。
後、人間関係でも無理をしないように。
△△より
2人ぼっちの会話は、文通の方がお似合い。
お終い
誰かが褒めてくれる時は、星を透明な瓶の中に入れる。折り紙で作った偽物のお星様。踏んだら潰れてしまう、紙のお星様。
とても、とても大事なお星様。でも、その瓶に入っていたはずのお星様がいつからか溜まらなくなった。
「〇〇、好きだよ。」
「〇〇が大事なんだよ。」
『どうして分からないんだよ。』
『お前なんか産まなきゃよかった。』
どうして、溜まらなくなったのか分からない。愛情が分からない、誰かを愛することも、愛される喜びも分からない。愛し方が書かれた本を読んで、試しに行動に移してみたけれど何も感じなかった。
「〇〇って優しいけど、人に興味無いよな。」
「そう?私あの子優しくて好きだけどな〜」
「うーん、なんて言うか〜優しいけど冷酷って感じ?」
「何それわかんねー」
知人の話す会話の種、無視すればいいと言うが噂の情報は耳から入ってくるのだから正確には耳を塞いで過ごせというのが正しいと思うのは私だけだろうか。
愛は溢れた、星は潰され元には戻らない。
お終い
この人の瞳は笑っている時と笑っていない時がある。前髪が長めだから瞳に光が入らないのかと思っていたこともあったけど、それは違うと分かった。
つい先週、前髪を切った影響かいつもの大人っぽさから少しばかり子供っぽさが出た。前髪の長さも目にかかるくらいから眉毛が見えないけれど瞳を隠さない長さに切られていた。
でも、それでもこの人の瞳はちっとも笑っていない。
「これぇあと」
「…あぁ、さっきの煎餅ね。よかったね〜」
この人は、わたしと遊ぶ時は瞳に光が入る。子供が好きなのだろう、だってわたしが他の人に感じる面倒だという感情がこの人には無い。
わたしの頭を撫でるこの人の手は少し冷たい、冷え性だからか体から冷気が漂ってると家族から文句を言われていた。
「〇〇ちゃん、またね〜」
あの人は帰ってしまう、私と血が半分だけ繋がっている姉はいつもこの家には居てくれない。
安らかな瞳が見れるのに、この家には居てくれない。
お終い
「俺、〇〇の事もっと知りたいわ。だから付き合わね?」
そう言った男は、世間全体で見れば好青年だと評価される人間だ。だが、実際は下半身に正直で女を取っかえ引っ変えするのが日常の下半身馬鹿である。
「ねぇ、〇〇聞いてるー?」
煩わしい声だ。男の声は明らかに機嫌をとるための猫撫で声であり、背筋と脳ミソに電気信号が流れる時特有の痺れが生じた。
何度私が仕事帰りの疲れた体が求めていた睡眠をお前の連れ込んだ女とお前のせいで邪魔されたと思っている。
「そう、ならこの前くれたプレゼントのお返しをしたいから君の家に行っていいかな?」
「その時に返事もするからさ。」
「マジ?ちょー嬉しい!プレゼント楽しみにしてる。」
「えぇ、私も楽しみよ。じゃ、おやすみない。」
そのまま電話を切ると、私は1階に降りて食事の用意を始めた。男の顔を浮かべながら、何を送ればあの男が酷く怒り狂うか考えながら調理をした。
もっと知りたいは、命取り。
お終い
秘話
前回の話と繋がっています。
犯人が男を殺した理由の正体がこの話であり、男が誰かと言い合っていたという話の真実。
「隣の〇〇さん、急死したそうよ。」
「え!あの若い子よね。」
「なんでも、一昨日誰かと言い合ってたらしいのよ。もしかしたら、他殺じゃないかって。」
「えーでも、あの人恨み買うタイプじゃないでしょ〜 」
「そうだけど、分からないじゃない。最近は、ニュースで殺したいからって理由で殺されちゃうんだからさ。」
ゴミステーションの前を独占する夫人達の話は、今朝のニュースの話である。警察は、一見では自殺としか言えないと話し込んでいるのを現場で盗み聞いた。
「〇〇ちゃんも、気をつけるのよ!あなたも〇〇さんと歳近いんだから!」
「そんな大袈裟ですよ。こんな冴えない女狙うやつの方が少ないですって。」
「それより、早く解決してほしいです。私、ストレスには弱いんで。」
本当に早く解決してほしい。これから、やる事が多いのにストレスで倒れたなら逃げきれなくなってしまう。
平穏な日常に溶け込んでいる人間は、良い人間だけとは限らない。
お終い