黄桜

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10/9/2023, 9:17:06 AM

束の間の休息でした。私は、人が嫌いです。勿論、人類を憎んでいるとかではなく、純粋に人という動物を受け容れるのに、私が適していないだけなのです。私も、同じ人だと言うのに感受性の違いと言うのでしょうか、誰も私の考えに理解できないと首を傾けたり、横に振ったり、終いには溜息を疲れる方もいます。
だから、私は1人の時間を望みます。本を読む時間が好き、音楽を聴く時間が好き、空を眺めるだけの時間が好き。けれど、これらはあくまで自分がテレビの画面を通してアニメやドラマを観るような感覚に近いのです。
ですから、やはり私が1番好ましいと思う時間は眠っていられる時間です。その間は、自分をテレビ画面のように眺める必要も、誰かを受け容れる必要もないからです。

束の間の休息、いつか永遠に。

お終い

10/3/2023, 11:57:54 AM

人は立場を時に、支配を目的に使う。親が子供に対して私の言うことが聞けないのかと言うのに対して、喉に魚の骨が引っかかっているような感覚が私にはあった。
どうせならば、自分と他者の線引きをした上で対等な言葉で話すことのできる人が、いや、何かに巡り会えたなら、私は馬鹿げた事を嬉々として話して笑ってくれるのを待ち望む事が出来たのだろう。
だが、現実の私は、目の前の誰も座っていない椅子に目線を掛けながら1人静かにため息をつくだけだった。

目の前の椅子は埋まらない。

お終い

9/30/2023, 8:46:22 AM

明かりのついた1階のリビングのソファに1人、風呂場からぴちゃんと小さく水音が鳴り響いており、もう1人。最後に、2階の子供部屋に1人ベッドで眠っている。
リビングには赤いスカートを履いた女が眠っていた。風呂場には赤いTシャツを着た男が赤い風呂に入っていた。子供部屋のベッドには赤い水玉模様のワンピースを着た幼女が眠っていた。
現場検証の結果、3名の死亡を確認。念の為、司法解剖を行うために死体を回収したが、殺害されてからの時間経過もあり犯罪の証拠を見つけ出すには時間がかかる模様。

静寂に包まれた部屋で、死体は眠っていた。

お終い

9/28/2023, 10:18:01 PM

釣った魚に、エサをやるのは生きている時だ。死んだ後に餌をやるなんて真似をするのは、よっぽどの物好きくらいなものだ。
だから、皆、求められたものに見合った対価を差し出す。恋も愛も浮気も、間引いても減らない人間の中で対価が等しい者達が手を取り合う事で初めて成り立つものだからだ。言い方を変えれば、大きすぎても小さすぎてもダメということだ。
仮に自分とは違うが、自分のパーソナルスペースに入れてもいい人間がいたとする。君達は、彼等が求めてくれるのを期待していたとする。けれど、彼等は求めるどころか意思表示すらしない。この場合、君達はまず彼等に対して呆れを持つだろう。そして、やがて自分の中のパーソナルスペースから徐々に追い出していく。
つまり、エサが欲しければ自分にも相手にも素直になるべきと言う事だ。

別れ際に、魚は餓死していた事に気づく。

お終い

エサ=見合った対価
餌=不釣合いな対価
餓死=自己満足

9/25/2023, 1:03:37 PM

窓から見える景色は、時間帯によって姿を変えている。私は、気まぐれに外を見ては代わり映えのない景色に興味を失って家事の続きをしたりする。
けれど、夕方の時間帯だけは窓から見える景色に目を凝らしている。すると、小さな複数の人影が我が家に向かって走ってくる。私は、それに気づくと窓からではなく玄関でその人影を迎える準備をする。5分もすれば、玄関は開き家に命が芽吹く。彼らは、疲れた様子も見せずに私の胸元に飛び込んで来てただいまと言う。
私は、それがたまらなく愛おしくおかえりと言うのだ。

窓から見える景色は、鮮やかな笑顔と共に輝く。

お終い

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