昔、人に裏切られる経験をしてから本心を話すのが怖くなった。その影響か、人と対話をする時の殆どに嘘が混じるようになった。仲の良い友達や家族、学校の教職員や心理カウンセラーにも本心を話はしなかった。ただ、嘘にも限界はある。そんな時は、少しだけ本心を混ぜ込んで嘘をついた。すると、周りは打ち解けてくれていると勘違いするようになった。私は、嘘を魔法の様に感じていた。
そしていつからだったか、自分自身にも嘘をつくようになった。他者からの言葉に傷ついても、気のせいだと言い聞かせる嘘をこころに刷り込んだ、身体が鉛のように重く感じても、今だけだという嘘を心に刷り込んだ。けれど、嘘が私を守ってくれることはなかった。その事を自覚してから、あれほど、信じていた嘘に嫌悪感を覚えるようになった。私は精神的に疲弊することが多くなり、眠っている時間の方が長くなった。
目を開くと、私は椅子に座っており、手には鈍く光を放つナイフがあった。私は無意識にその手のナイフを首に添えて思い切り引いた。
夢だから、もう終わりにしよう。
お終い
皆で仲良く手を取り合おうなんて、口先だけで、実際に手を取り合う人なんて5人もいないと考えている。例え、5人以上いたとしても、その場の空気で合わせてるだけで、終われば、それぞれ別の事に手を伸ばしていくことだろう。けれど、中には本気で手を取り合おうなんて言う人もいる。現に、私の会社の社長は皆が平和で仲良く手を取り合えるような社会を作りたいなどと夢じみたことを言う人だ。
けれど、もし、そんな社会になったのなら、少しの勇気で結果が変わるというのなら手を取り合うのも悪くないと思える日が来るのかもしれない。そんな日がいつ来るかは分からないけれど、それでも未来を見据える選択を私は手に取る。
いつの日か、手を取り合う日まで未来を見据える。
お終い
私の夫は、いわゆる顔がいいと呼称されるタイプの人間だ。対して、私自身は至って普通の容姿ということもあり、どうしても劣等感を感じてしまう。その夫は、性格も私と違いひねくれておらず、優しさの権化のような人間だ。
けれど、1つだけ優越感を覚えることがある。それは、夫が最優先することが家族である私ということだ。私は、昔から家族に対する劣等感があったが、夫のおかげでそれが無くなった。だから、私は優越感を覚えるのだ。夫が、私にとって最高の家族でいてくれる事に嬉しさを隠しきれないのが最近の悩みであり、それを上手く隠す方法を模索中だ。
私は家族を愛している。
お終い
私は、今日まで務めていた会社を退職した。もう、随分と歳を食っていたということもあり上から定年退職を言い渡されたのが理由だ。けれど、いざ辞めてみると開放感と達成感でとても気持ちよく感じる。だが、同時に喪失感というものが体にのしかかってくるのを感じた。今まで、働いて実感していたものが失われるのだから当然といえるだろう。私は落ち着かない気持ちのまま家への道を進んだ。歩きながら、ふと周りを観察すると私が生まれた時から営業している駄菓子屋を見つけた。
別に特別、思い入れがある訳でもないのに、私は無意識にそちらに足を向けて動かしていた。そして、いざ、駄菓子屋の中に入ると懐かしさと安心感を覚えた。そして、私は気づいた。これまでずっと押し殺してきたものは、もう隠す必要が無いのだと思うと無意識に笑みをこぼした。
自分が隠し通した子供染みた思いが、何十年の時を経て蓋を開いた。
お終い
僕は、ポケットにしまっていたスマホを取り出すと1件だけLINEを送った。このLINEを、君が見てくれる確証はないけれど、儚い気持ちを抱いて、夜空を見上げる。君は、僕を許してはくれないと思うが、選択を変える気はない。決意を胸に僕は、崖端に立つとそのまま前へ足を進めた。当然、僕の体は重力に従い下へと落ちていく。次に、目が覚める時、僕は人間を辞めているだろう。僕を狂っていると言いながらも傍に居てくれた君と、この夜空を見ることができないのが唯一の心残りになるだろう。それでも、僕はなりたいんだ。最後に、遠くで何かが潰れるような音を耳にして意識が途絶えた。
彼は、夜空に輝く星になりたい。
お終い
秘話
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