黄桜

Open App
7/10/2023, 11:16:03 AM

夢の中では、私は自由でいられる。私は、どんな自分にもなれる。アニメのようなヒロインにも、実写にいる顔がいいと呼ばれる人間にだってなれる。けれど、目が覚めると、現実が襲ってくる。平凡な顔に平凡な頭脳を持ち生まれた普通の人間が私だ。夢の中のように理想を完全に体現することはできないけれど、それでも、私は少しずつ理想の自分に近づく。だから、今日も新しいことにチャレンジする。私が、私を好きになるための1歩を自分の意思で踏み出す。

夢と現実、どちらの理想も私は愛する。

お終い

7/9/2023, 11:58:38 AM

昔から大人の喜ぶ事が手に取るようにわかった。大人は、私がテストで100点をとって学校から帰ると酷く気味の悪い顔で私を褒めた。大人は、手のかからない子供が好きなのだと知ると、何事にも細心の注意をはらって生活するようになった。大人は、確信を突かれると酷く怒りを爆発させるのだと知ると、大人を怒らせない言葉を慎重に選んでから発言するようになった。大人が、お前なんか産んだのが間違いだったと包丁を向けてくれば、逃げずに殺さないでくれと本心とはかけ離れた言葉を紡いだ。私は、大人の言うことを聞く、いい子でいた。
けれど、1度だけ大人の喜ぶことをできなかったことがある。それは大人が、私を愛してると言った時のことだった。その時、私の口は固く閉ざされたままであり、体は鉛のように重く心臓の音だけが頭の中にうるさく鳴り響いていたのをよく覚えている。人間は、幸福な記憶よりも恐怖や暴力と言った負の感情が煮詰まった記憶を優先して脳に記録する。だから私は今日もその記憶を思い出して、この言葉を口にする、愛していると、けれど、私はこの言葉を信用しない。なぜなら、この言葉は大人を喜ばせるための道具でしかないからだ。それでも、私はいい子を演じる。大人が大好きな、都合のいい人間に私はなるしかないのだ。

大人は、私の当たり前を支配している。

お終い

7/8/2023, 11:46:06 AM

電車に揺られていると、街明かりの少ない私の故郷が見えてきた。誰かが、街明かりは誰かを祝福するための光だと言っていたのを思い出した。私は、どうにかその言葉を口にした人物を思い出そうとしたが、記憶の底に沈んでしまった人物は再び浮かび上がることは無かった。記憶の海から抜け出した私は、電車の扉が開くとゆっくりと階段をのぼり、Suicaで改札をぬけた。残高は、720円だった。私は、電車の長旅で喉が渇いたことに気づいた。確か、駅前の横に自動販売機があったことを思い出すと、足をそこへ向かわせた。目的の自動販売機を見つけると、私は酷く安心した。相も変わらず、商品を照らす自動販売機の明かりが、私の顔を照らした。私は、その中から120円の炭酸ジュースを見つけるとボタンを押して、SuicaをICタグ自販機リーダにかざして購入した。ガタンと金属とプラスチックのぶつかる音が私の耳に響いた後、Suicaの残高は、600円と表記された。

変わらぬ明かりが、そこにはある。

お終い

7/7/2023, 2:23:24 PM

昔から行事ごとには、あまり興味がなかった。だから、大抵、行事のことは頭にこびりつかず、次こそはと意気込んでみた時もあったが、半日も覚えていなかったことを今、思い出した。そんな事が、毎年繰り返されてはリセットされる日々を私は送っている。
今日は、七夕だ。私にとってはいつもの日常とちっとも変わらない。わざわざ、短冊に願い事を書こうとも思えず、とりあえず頭に浮かんだ願い事を脳に数秒記憶する作業を行った。おそらく、この願い事は半日も記憶されないことだろう。だが、それでいいのだと思う自分がいる。なぜなら、それは忘れるほどの価値しかない願いだと、私の脳はすでに答えを出しているからだ。
この苦しみが、誰にもバレませんように。なんて願い事を知るのは彦星と織姫だけだろうか。なら、都合がいいと言えるだろう。なぜなら、彼らは現実の人間達に干渉するなんて真似はしないと分かっているからだ。だから、私は形に残さず祈ることを選ぶのだ。

いつか、また、星に願いをかけて。

お終い

7/6/2023, 10:57:29 AM

学校で本を読んでいると、クラスの同級生に肩を2回叩かれた。何事かと、本から肩を叩いた同級生に視線を向けると、その同級生に教室の外に貴方を呼んでいる人がいると言われた。仕方なく、教室のドアを開いて一足踏み出すと、肩を思い切り掴まれて思わず間抜けな声が漏れでた。
肩を掴んだのは、別のクラスの部活友達だった。その友達は、何度も声をかけたのに身じろぎもせずに、本を読み続けるから私のクラスの同級生に呼び出して欲しいと頼んだそうだ。
私が、一言謝罪をすると友達は屈託のない笑みで、そんな事より面白い話があると言って、私の手を引いて、友達の想い人がいる教室に足を運んだ。今日も、本を読み進めることができないと心の中で愚痴をこぼしたが、今、教室に戻ろうものなら友達に半殺しにされかねないと思うと、結局、友達の想い人の教室に留まる選択肢を取った。なんだかんだ、私は友達に甘いらしい。

何よりも、大切なことがある。

お終い

Next