黄桜

Open App

電車に揺られていると、街明かりの少ない私の故郷が見えてきた。誰かが、街明かりは誰かを祝福するための光だと言っていたのを思い出した。私は、どうにかその言葉を口にした人物を思い出そうとしたが、記憶の底に沈んでしまった人物は再び浮かび上がることは無かった。記憶の海から抜け出した私は、電車の扉が開くとゆっくりと階段をのぼり、Suicaで改札をぬけた。残高は、720円だった。私は、電車の長旅で喉が渇いたことに気づいた。確か、駅前の横に自動販売機があったことを思い出すと、足をそこへ向かわせた。目的の自動販売機を見つけると、私は酷く安心した。相も変わらず、商品を照らす自動販売機の明かりが、私の顔を照らした。私は、その中から120円の炭酸ジュースを見つけるとボタンを押して、SuicaをICタグ自販機リーダにかざして購入した。ガタンと金属とプラスチックのぶつかる音が私の耳に響いた後、Suicaの残高は、600円と表記された。

変わらぬ明かりが、そこにはある。

お終い

7/8/2023, 11:46:06 AM