私は、今日まで務めていた会社を退職した。もう、随分と歳を食っていたということもあり上から定年退職を言い渡されたのが理由だ。けれど、いざ辞めてみると開放感と達成感でとても気持ちよく感じる。だが、同時に喪失感というものが体にのしかかってくるのを感じた。今まで、働いて実感していたものが失われるのだから当然といえるだろう。私は落ち着かない気持ちのまま家への道を進んだ。歩きながら、ふと周りを観察すると私が生まれた時から営業している駄菓子屋を見つけた。
別に特別、思い入れがある訳でもないのに、私は無意識にそちらに足を向けて動かしていた。そして、いざ、駄菓子屋の中に入ると懐かしさと安心感を覚えた。そして、私は気づいた。これまでずっと押し殺してきたものは、もう隠す必要が無いのだと思うと無意識に笑みをこぼした。
自分が隠し通した子供染みた思いが、何十年の時を経て蓋を開いた。
お終い
7/12/2023, 11:58:25 AM