彗星

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9/12/2025, 12:43:21 PM

題:悲しげな空

 台風が過ぎ去った後は空が綺麗に見えるらしい。それは台風が大気中の塵や砂を持っていくからだそうな。
 午前中に台風が去ったため、外に出たら案の定、空はこの上ないほどの快晴でした。
 他にも空を見上げている人がいて、あちこちから声が上がっています。
「ピーチさん!」
「あ、リンク!ど、どうしたのかしら」
「足の調子はどうですか?」
「ええ、だいぶ良くなったわ。あ、ありがとう」
 リンクさんとピーチさんが話しているようです。ピーチさんは四日前、足を捻挫してしまったのです。人一倍優しい彼は、皆さんを大切に思っているのです。
 ……何でしょうか、このモヤッとしたような、ピーチさんに対して軽い苛立ちを覚える感じは。
 これは……“嫉妬”?
 リンクさんと楽しそうに話すピーチさんに羨ましいと感じています。こんなことは、今まで初めてのことです。
 私はリンクさんのことが大好きなのに……。
 台風が過ぎ去った後の空は、少し悲しげに見えました。

お題『台風が過ぎ去って』

9/6/2025, 2:34:41 PM

題:髪を靡かせて

 下校時刻の過ぎた学園は、校庭で遊んでいる人と、まだ仕事がある教師だけ。寮に向かう途中に机の中に筆箱を忘れたことに気が付いた俺は、筆箱を取りに戻った。
 俺のクラスーー1ーSの教室のドアを開ける。と。
 誰もいないばすの教室には、窓の枠に頬杖をついて、腰までの金髪を風に靡かせて校庭を眺める女生徒が居た。
 ゼルダさん。
 その人の名前を、俺は知っていた。校内では有名人だ。学年テスト1位、成績はもちろんオール5……。
 そんな“完璧な”人。
 その人の後ろ姿を眺めながらどんな人か思い出していると、自分は筆箱を取りに来たのだということを思い出した。
(あれ?)
 机の中を漁っていると、筆箱が無いことに気付いた。
(授業出来ないじゃん……)
 と思っていると……。
「貴方が探しているのはこれですか?」
 突然声が聞こえ、声がした方に目をやると、ゼルダさんが左手の筆箱を振っていた。それは間違いなく俺の筆箱だった。
 ……来た時は無かった気がするが……、見えなかっただけだろうか。
「あ、ああ、ありがとうございます」
 礼を述べながら筆箱を受け取る。校庭を眺めたままの横顔は大変美しく、その翡翠の瞳は暮れゆく日の光を映して、宝石よりも輝いていた。
 綺麗な人だと聞いていたが、まさかこれほどまでに美しいとは。
「別に。ただ、誰も来ないと思っていたので少し驚きました」
「確かに。……いつもこの時間帯に?」
「ええ。誰にも邪魔されずに思いに浸れますし、こうして生徒が遊ぶ姿を見るのも飽きませんし」
「……なんかすみません」
「いいえ、私はなんだか友達が出来たようで嬉しいです」
 そう言ってこちらを向いた彼女の顔は、横顔に負けず劣らず。まるで神話の時代に出てくる姫のような顔をしている。
 これ以上見ていると吸い込まれてしまいそうだ。それに、ミファーを待たせているから、そろそろ行かないと。
「では、俺はここら辺で」
「分かりました」
 短く答えた彼女は、また校庭へと視線を戻す。
 ……以前見かけた、神話の時代の姫が愛したとされる、姫しずかのような顔をしていた。

 このお話は、リンク達が厄災を討ってから何千、何万も経った世界です。舞台はハテノ地方にある学校をイメージ(このお話の学園はもっと大きいです)。
 クラスは成績の良さで決まります。上から順に、S、A、B、Cとあります。リンクは学年テストは2位だけど成績はオール5です。
 これから二人はどうなるのか……。それは皆さんのご想像におまかせします。

お題『誰もいない教室』

9/6/2025, 5:52:18 AM

題:信号の先の一瞬

 ピーチさんとデイジーさんと都会に遊びに来た私、ロゼッタ。
 まず何をするか話し合うべく(何も決めてなかった)、カフェに行くことにしました。
 そこでピーチさんはカプチーノを、デイジーさんはカフェラテを、そして私は、フラペチーノを頼みました。
 少しして運ばれてきた飲み物を飲みながら、話し合いました。
 行き先が決まりカフェを出て目的地に向かっていると、信号につかまってしまいました。
「今日はツイてないわね~」
「そうよね、全部つかまってる」
「……」
 ピーチさんとデイジーさんが不満を漏らしている中、私は信号の先のある人をじっと見ていました。あっ、決して変態が見るような目ではありませんのでご安心を。
 その人は、なんだかたくさんの女性に囲まれている(絡まれている?)ようでした。
 その人は嫌そうな顔というか、苦笑いというか……。とにかく、困っているようでした。
 だから信号が青に変わった途端、私はその人に素早く近づき、前に出ました。
「!?」
「ちょっ、ちょっと、何なのアンタ!」
「何なのアンタはこっちのセリフ」
 私は女性達と真っ向から向き合いました。(こういう時に無表情は強いです)
 急に走り出した私に驚いたピーチさん達も、走って追いついてきました。
「ロゼッタ貴方、何やってるの!?」
「何って、この人が困っていたから」
 私のすぐ横に来たピーチさんが小声で問うてきました。私はチラッと後ろの方を見て簡潔に言いました。
「……なるほどね」
「で、貴方達は何をしていたのですか」
「何って、その方とお茶しようとしてたのよ!それをアンタが邪魔するから!」
「ふーん、だとしたら、お茶の誘い方が馬鹿ですね。もっといいお茶の誘い方ってものがあるでしょうが」
「なっ……!」
 話していて分かったのは、この女性達は学生だということ。学生時代から人気者なんて、羨ましい。
「この方は私の彼氏です。か・れ・し」
「っ………!!」
 言い終えた途端、学生達の顔が驚愕に変わりました。その後、あっさりと学生達は去っていきました。
「すみません、勝手に彼氏と言ってしまいまして。ただ、これしか手立てが無かったので」
「え、いえいえ、こちらこそすみません、助けていただいて」
「では、こちらは用があります故、おいとまさせていただきます」
 そう言って立ち去った私。ピーチさん達も傍観しているだけでしたが、慌ててついてきました。
 助けた方の顔が一瞬紅く見えたのは気のせいでしょうか。

 
 突然ですが、皆さんに問題です。ロゼッタが助けた相手は誰でしょう?
 ちなみに学生達は、彼の名を出すのは彼に見合う者だけだと思っているので言っていません。
 ロゼッタ「ぜひやってみてください。あ、心の中で答えを言っても良いです」
お題『信号』

9/5/2025, 9:15:59 AM

題:百年後まで・続

「……倒した……」
 俺は、厄災を倒した。
 マスターソードの力と、英傑達の力を借りて。
 そして、最後まで頑張ってくれたゼルダ姫も。
「っ……」
 俺は、地面に膝をついた。
 いくら強くても、相手は厄災。それなりの怪我は負う。
 しかも、左の横腹を結構深くやられた。血の量も半端ではない。
 すると。
「私は……ずっと見守ってきました」
 聞き覚えのあるその声に、俺はハッとした。
 その声は続いた。
「貴方の運命も苦難も……戦いも。だから私……信じていました。貴方が必ず厄災ガノンを討ち倒してくれると」
 そして、その人が振り返った。
 全ての記憶に出て来た、忘れもしないあの女性の顔。
「ありがとう、リンク」
 名を呼ばれ、おもわず立ち上がる。
「ハイラルの勇者。私を……」
 そしてその女性は少し悲しそうな顔になると、微笑んだ。
「覚えていますか?」
(……もちろん、覚えていますよ)
 唇が震えているのが、自分でも分かる。
 あの時伝えられなかったことを、今。
 ……今、言う。
「俺は……ずっと知っていました。貴方の努力も悲しみも。だから俺……あの時言えなかったことを、言おうと思います」
 目の前の貴方の目をしっかりと見据えて。
「大好きでした。……ゼルダ姫」
 言い終えると、ゼルダ姫の顔がこの上なく美しい笑顔を咲かせた。
 まるで姫しずかのようなーー。

 ゼルダとリンクは、傷付いたハイラルを直すべく、調査に赴く。百年前の、あの時のように。
 そこには姫しずかが咲き誇り、二人を祝福していたーー。

お題『言い出せなかった「」』 

9/2/2025, 6:13:37 AM

題:思い出

 輝かしい夏が終わり、燃え上がるような赤の秋が始まりました。
 夏の思い出は、秋の思い出へとバトンタッチする。
 何か大切なものは忘れていないかしら。
 マリオカートの皆さんとの思い出、レジェンドチームとの思い出、可愛い新人キノピーチとの思い出。
 うん、何もかも覚えている。秋も皆さんと楽しい思い出が作れますように。
 ……何でしょうか、この違和感は。
 何もかも覚えているはずなのに、何か違和感がある。
 ……何か、忘れているものがある?
 そうとしか思えない。なら、その忘れ物を探しに行かなくてはいけないわね。
 ーー夏の忘れ物を探しに。

お題『夏の忘れ物を探しに』

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