題:髪を靡かせて
下校時刻の過ぎた学園は、校庭で遊んでいる人と、まだ仕事がある教師だけ。寮に向かう途中に机の中に筆箱を忘れたことに気が付いた俺は、筆箱を取りに戻った。
俺のクラスーー1ーSの教室のドアを開ける。と。
誰もいないばすの教室には、窓の枠に頬杖をついて、腰までの金髪を風に靡かせて校庭を眺める女生徒が居た。
ゼルダさん。
その人の名前を、俺は知っていた。校内では有名人だ。学年テスト1位、成績はもちろんオール5……。
そんな“完璧な”人。
その人の後ろ姿を眺めながらどんな人か思い出していると、自分は筆箱を取りに来たのだということを思い出した。
(あれ?)
机の中を漁っていると、筆箱が無いことに気付いた。
(授業出来ないじゃん……)
と思っていると……。
「貴方が探しているのはこれですか?」
突然声が聞こえ、声がした方に目をやると、ゼルダさんが左手の筆箱を振っていた。それは間違いなく俺の筆箱だった。
……来た時は無かった気がするが……、見えなかっただけだろうか。
「あ、ああ、ありがとうございます」
礼を述べながら筆箱を受け取る。校庭を眺めたままの横顔は大変美しく、その翡翠の瞳は暮れゆく日の光を映して、宝石よりも輝いていた。
綺麗な人だと聞いていたが、まさかこれほどまでに美しいとは。
「別に。ただ、誰も来ないと思っていたので少し驚きました」
「確かに。……いつもこの時間帯に?」
「ええ。誰にも邪魔されずに思いに浸れますし、こうして生徒が遊ぶ姿を見るのも飽きませんし」
「……なんかすみません」
「いいえ、私はなんだか友達が出来たようで嬉しいです」
そう言ってこちらを向いた彼女の顔は、横顔に負けず劣らず。まるで神話の時代に出てくる姫のような顔をしている。
これ以上見ていると吸い込まれてしまいそうだ。それに、ミファーを待たせているから、そろそろ行かないと。
「では、俺はここら辺で」
「分かりました」
短く答えた彼女は、また校庭へと視線を戻す。
……以前見かけた、神話の時代の姫が愛したとされる、姫しずかのような顔をしていた。
このお話は、リンク達が厄災を討ってから何千、何万も経った世界です。舞台はハテノ地方にある学校をイメージ(このお話の学園はもっと大きいです)。
クラスは成績の良さで決まります。上から順に、S、A、B、Cとあります。リンクは学年テストは2位だけど成績はオール5です。
これから二人はどうなるのか……。それは皆さんのご想像におまかせします。
お題『誰もいない教室』
9/6/2025, 2:34:41 PM