彗星

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題:百年後まで・続

「……倒した……」
 俺は、厄災を倒した。
 マスターソードの力と、英傑達の力を借りて。
 そして、最後まで頑張ってくれたゼルダ姫も。
「っ……」
 俺は、地面に膝をついた。
 いくら強くても、相手は厄災。それなりの怪我は負う。
 しかも、左の横腹を結構深くやられた。血の量も半端ではない。
 すると。
「私は……ずっと見守ってきました」
 聞き覚えのあるその声に、俺はハッとした。
 その声は続いた。
「貴方の運命も苦難も……戦いも。だから私……信じていました。貴方が必ず厄災ガノンを討ち倒してくれると」
 そして、その人が振り返った。
 全ての記憶に出て来た、忘れもしないあの女性の顔。
「ありがとう、リンク」
 名を呼ばれ、おもわず立ち上がる。
「ハイラルの勇者。私を……」
 そしてその女性は少し悲しそうな顔になると、微笑んだ。
「覚えていますか?」
(……もちろん、覚えていますよ)
 唇が震えているのが、自分でも分かる。
 あの時伝えられなかったことを、今。
 ……今、言う。
「俺は……ずっと知っていました。貴方の努力も悲しみも。だから俺……あの時言えなかったことを、言おうと思います」
 目の前の貴方の目をしっかりと見据えて。
「大好きでした。……ゼルダ姫」
 言い終えると、ゼルダ姫の顔がこの上なく美しい笑顔を咲かせた。
 まるで姫しずかのようなーー。

 ゼルダとリンクは、傷付いたハイラルを直すべく、調査に赴く。百年前の、あの時のように。
 そこには姫しずかが咲き誇り、二人を祝福していたーー。

お題『言い出せなかった「」』 

9/5/2025, 9:15:59 AM