題:激しい雷雨、彼は虹
遠雷が鳴り止まない。雨も窓を激しく叩く。
朝から曇ってはいたが、ここまで酷くなるとは、誰が予想出来ただろう。
「さて、彼が来るのはもう少し後ですし、皆、絵本の時間よ」
「「わ~い!」」
奥から可愛らしいたくさんのチコ達が出て来た。
(それにしても、この雷雨の中、彼は来れるかしら……?)
何だかモヤモヤしながら書斎に行く。
いくら強い彼でも、この雷雨は厳しいはず……。
迎えに行った方がいいかしら……。
「最近のママって、何だか浮いてるっていうか、一人のことを熱心に考えてるっていうか……」
「ふふん、それはね、ママは今、“恋”に堕ちてるのよ」
「こい?」
「そうよ。この雨の中をママのために走り抜ける、虹のような彼に夢中なのよ……」
「ふうん?」
……。
彼に逢いたくてたまらない……。
こんな気持ちになったのは初めてだわ……。
本を持っても、中々来ない彼を考えてただ膝の上に置くことしか出来ない……。
「ロゼッタ様、来客でございます!」
「……中にいれてちょうだい」
茶色の扉が静かに開く。
「……誰でしょうか?」
そこには、びしょ濡れの黒いフードを身に纏った人がいた。
何となく雰囲気がリンクさんに似ている。
「忘れちゃったんですか?こんなに頑張って来たのに……」
その人はフードを外すと……。
「来ましたよ、ロゼッタさん」
虹のような彼が、姿を現した。
心なしか、雨が弱まってきた気がした。
お題『遠雷』
題:心の傷
一人、小高い丘で泣いていると、誰かがやって来てこう言った。
「どうして泣いているの?」
「どうしてって……」
震える声で答える。
「なぜ泣くの?」
なぜも何も、自分の母親が死んだら誰でも悲しむだろう。
もしかしてこの人は、命を軽く扱っているのだろうか。
「ママのために泣くのはいけないと思うのだけれど……違うかしら?」
「……!」
確かに、そうかもしれない。
……その通りね。
「その、通りね」
「良かった、泣きやんで」
彼女はクスリと笑う。
別に、なぜ泣くのと聞かれたから答えただけ。
お題『なぜ泣くの?と聞かれたから』
題:甘い足音
もうすぐ、“彼”が来る。
そう、その“彼”とは……。
私の教え子のリンクさんのことです!
この前、天文台から見える景色をリンクさんに語ったところ……。
「では今度、天文台に遊びに行っても良いですか?」
と聞かれ、他の人に邪魔されずにいっぱい話せるチャンスなのでは!?と思い快諾したのですが……。
いざとなると緊張しますね。
「ロゼッタさーん、リンクですー!入っても宜しいでしょうかー?」
来ったーーっ!!!意外と早かったし!
でも無視は最低ですので、返事を。
「は、はい、どうぞ」
「ありがとうございます!」
甘い足音とノックの音と共に彼が入ってきました。
太陽を背景に映るリンクさんにドキドキするのは何故でしょうか。
「座ってください」
「ありがとうございます。ロゼッタプラネットで見るように、すごく素敵な天文台ですね」
「ふふっありがとうございます。とても嬉しいです」
「この景色も最高です。でも、ロゼッタさんの方が何倍も綺麗です」
「……」
驚きすぎて目を大きく開いたまま固まってしまいました。
「あ、すみません、こんな告白みたいになってしまって……。って、ええ!?」
いつの間にか顔が真っ赤になっていたみたいです。リンクさんを驚かせてしまいました。
ーー全く、ズルいなぁ、リンクさんは。可愛い。
全てが甘いリンクさんは、どうやら私を好きにさせたみたいです。
お題『足音』
題:願いを星に乗せて
8月と言えば【ペルセウス座流星群】。今年は12日深夜から13日未明にかけてが最も活発に見られると予想されていました。
その時私は、暗闇から降り注ぐペルセウス座流星群に、願いました。
ーーこれからもずっと、ピーチさん達と、それからチコ達と、幸せに過ごせますように。
この願いを流星群は受け止めてくれたのでしょうか。
でも、もし受け止めてくれて、遠くの空へと運んでくれていたら、星の女神様には感謝してもしきれません。
貴方の願いも、案外遠くの空へと運んでくれているのかもしれませんね。
お題『遠くの空へ』
題:驚きの域
「ロゼッタさん」
「はい」
「今度、レジェンドチーム一周年を記念して、3人で食事に行きませんか」
「あぁ、それはいい提案ですね。どこで食事しましょうか」
「せっかくなので、トーキョーのレストランにします?」
「いいですね!きっと幼いキノピーチは大喜びですよ」
「その笑顔が目に浮かぶようです!では早速予約してきます!」
「頼みました」
私は微笑みながらリンクさんとの会話を終えた。
3人で食事なんて、どんなに楽しいことでしょう。そもそも、他の人と食事に行ったのは何十年ぶりでしょうか……。考えただけで脳内がお花畑で埋め尽くされそうです。
キノピーチの部屋のドアを軽く2回叩くと、寝間着姿のキノピーチが顔を出しました。
「わぁ、ロゼッタさん、どうしたんですか?」
「実は今度、レジェンドチーム一周年を記念して、3人で食事に行くことになったんです」
「そうなんですか!それはそれは」
「予約はリンクさんが取ってくれるそうなので」
「ありがとうございます!いやぁ、楽しみですね」
「ふふ、ですね」
キノピーチに簡単に伝え、自分も床に就くことにしました。そして、あっという間に食事をする日に。
「お待ちしておりました、ロゼッタ様、リンク様、キノピーチ様。今から御席に案内いたします」
(ヤバい、今私の目の前にあのレジェンドチームがいる!!)※ウェイターの心境
私達は奥の席に通されました。
「それにしても、随分高そうなレストランですが……」
「あぁ、ここはNARISAWAっていうミシュランやベストレストランにランクインする日本屈指のレストランなんですよ」
「「え」」
キノピーチと声がハモりました。
いくら一周年記念とはいえ、そんな凄いレストランに……?
驚きの域を超えて、もはや無表情になっていると思います。
だって、リンクさんの顔が明らかに困惑してるんですもの……。
!マークじゃ足りない感情って、あるんですね。
お題『!マークじゃ足りない感情』