題:激しい雷雨、彼は虹
遠雷が鳴り止まない。雨も窓を激しく叩く。
朝から曇ってはいたが、ここまで酷くなるとは、誰が予想出来ただろう。
「さて、彼が来るのはもう少し後ですし、皆、絵本の時間よ」
「「わ~い!」」
奥から可愛らしいたくさんのチコ達が出て来た。
(それにしても、この雷雨の中、彼は来れるかしら……?)
何だかモヤモヤしながら書斎に行く。
いくら強い彼でも、この雷雨は厳しいはず……。
迎えに行った方がいいかしら……。
「最近のママって、何だか浮いてるっていうか、一人のことを熱心に考えてるっていうか……」
「ふふん、それはね、ママは今、“恋”に堕ちてるのよ」
「こい?」
「そうよ。この雨の中をママのために走り抜ける、虹のような彼に夢中なのよ……」
「ふうん?」
……。
彼に逢いたくてたまらない……。
こんな気持ちになったのは初めてだわ……。
本を持っても、中々来ない彼を考えてただ膝の上に置くことしか出来ない……。
「ロゼッタ様、来客でございます!」
「……中にいれてちょうだい」
茶色の扉が静かに開く。
「……誰でしょうか?」
そこには、びしょ濡れの黒いフードを身に纏った人がいた。
何となく雰囲気がリンクさんに似ている。
「忘れちゃったんですか?こんなに頑張って来たのに……」
その人はフードを外すと……。
「来ましたよ、ロゼッタさん」
虹のような彼が、姿を現した。
心なしか、雨が弱まってきた気がした。
お題『遠雷』
8/24/2025, 9:57:43 AM