『無色の世界』
気が付いたら桜が散っていた。
どうでもいいことだと認識したせいだろうか。
人混みの中は「もう春終わっちゃうの?」
なんて聞こえてきた。
花粉症だとか花見の酔っぱらいとか
いなくなっていいじゃないか。
こっちはもうとっくに春が終わったんだ。
あんたと歩いた道ももう何も感じない。
ただただ幸せだった日々がチラついてイライラする。
あんたが隣にいなくなったと同時に世界に色が抜けた気分だ。
もうこの色は塗り直せない。
散った桜が来年咲いても同じ花びらじゃないのと一緒だ。
語り部シルヴァ
『桜散る』
空のピンクも気が付けば無くなって、
落ち着いた緑に染まっていた。
ピンクのカーペットも最近の春嵐に吹き飛ばされ
表面の荒いコンクリートが顔を出していた。
4月も中旬。桜のシーズンは気が付けば過ぎて
世間はまた次のイベントまで
ひとふんばりするように何食わぬ顔で街を歩く。
実際そう見えるだけで
あの春一杯な空気を惜しむのは僕だけじゃないはず。
なんて思いながら地面にある踏み潰され
春の形を忘れてしまった桜の花びらを見て思う。
また来年だ。来年も桜に心躍る感性が残ってますように。
青信号になりさっき見た花びらを
人混みに揉まれるまで見つつ歩き出した。
語り部シルヴァ
『夢見る心』
この窓の向こうにはどんな景色があっただろうか。
見えるのは空の景色だけ。
ビルとかいう鉄の塊の群れとか
家っていう家族ひとつ分専用の建物とか
コンビニっていう24時間いつでも開いてるお店とか...
この窓からは見えないけど...
いつか見れたらいいな。
...見れるのかな。
僕は生まれてから名前を貰ったことがない。
生まれた時から悪い人が入る場所で育った。
僕を見る人が言うには親が大罪人だった。らしい。
いつか...この窓の向こうの景色を歩けたらいいな。
そう思いながら今は星空を眺めている。
語り部シルヴァ
『届かぬ想い』
努力した。
嫌なことだって挑戦したし、
ありのままがいいって
言われても自分磨きを怠らなかった。
それなのに現実は残酷だ。
僕が一歩進めてたと思っても目標は
さらにその先へと延びてしまう。
そうやって目標をひたすら追いかけ続けていくのが
人生なんだろうか。
だとしたらこの人生に意味はあるんだろうか....
そうネガティブになりつつも手を伸ばす。
残念ながら伸ばした手には届かなかった。
台座も使ったのに。身体測定では身長も伸びてたのに。
あぁ...残酷だ。
語り部シルヴァ
『神様へ』
この世に生まれたことを知らせるために産声が聞こえる。
街中で聞くには雑音に聞こえるだろうその声は
我が子となると耳が幸せになってしまう。
人から聞いた話だと全く信じられなかったけど、納得がいく。
助産師さんに抱えられた重みが私の手に移る。
ずっしりと感じる重みに思わず涙があふれる。
さっきまでの苦しみも忘れてしまった。
ずっと、ずっと苦しかった。
それが今報われたって言うんだろうか。
私の元に来てくれてありがとう。
そして神様へ。
巡り合わせてくれてありがとう。
語り部シルヴァ