『色とりどり』
砂浜のペールオレンジ、海の青、
綺麗な山の緑、澄んでいる空の水色。
いつも見ている景色もいざ見ずに描くとなると調子が悪い。
実際にキャンパスノートを持って
現地で見ながら描くとやはり全然違う。
潮風の香りや太陽の熱で少し温められた砂浜。
見るだけじゃ感じないものを表現できそうな気がする。
色鉛筆で全体像を塗って細部を色を変えつつ
影や濃さを表現する。
色鉛筆を戻し、別の色鉛筆を取り出す。
この繰り返し。けれどそれが楽しい。
真っ白だったキャンパスは
いつの間にか色鮮やかに敷き詰められていて、
白紙の部分はほとんど無くなった。
一通り描き終えて満足した。
...と思ったが手は何かを描きたいらしい。
次ページをめくって新しい白紙に次はどうしようと
にらめっこを始めた。
語り部シルヴァ
『雪』
雪が降ると気温が下がって寒くなっていく。
寒いのは嫌いだ。それでも雪のことは嫌いになれない。
雨と違って静かに降ってはじんわりと体温を奪っていく。
神秘的で触れると消えていく。
それにしても今日は一日晴れの予定だったはず...
空はすっかりどんよりした雲に覆われて振るいにかけたように雪が静かに落ちていく。
指先が冷えきっている。
晴れてるからと手袋を持ってこなかった結果がこれ。
あー...どんどん体温が逃げていく気がする。
カフェを見つけたらそこに逃げ込もう。
それまでの辛抱だと言い聞かせるように
指先を吐く息で温めた。
語り部シルヴァ
『君と一緒に』
都会の夜は眠らない。
すれ違う人は冷たい空気に酒とタバコを混じらせ
思わず空気に飲まれれば酔ってしまいそうだ。
隣からも甘い香りを含めた同じ空気を纏わせた
酔っ払いが歩いている。
手を繋いでいないとどこかへ
飛んでいってしまうんじゃないかと思うくらい
落ち着きのない足取りだ。
いつもの仕事っぷりはどこへやら。
今じゃ威厳も可愛げもないただの酔っ払い。
酒が強くて助かった。
ただ、この酔っ払いといるせいかな。
ひとりで飲むよりも酒が進んでしょうがない。
あぁ。俺もこの空気の一部か。
俺も酒とタバコを纏わせた空気なんだな。
どうりで俺も足取りがちょっと軽いわけだ。
お互いどっか行かないように強く手を握る。
握り返された手は弱く優しかった。
語り部シルヴァ
『冬晴れ』
外は憎たらしい風が吹いていない。
雲がいつもよりのんびりと流れていく。
濃い青い色が永遠と伸びる空。
太陽が睨みつけるからか
いつもより厚着する必要は無さそうだ。
...まあ今日に限って外に出る予定は無いのだけど。
コーヒー片手にベランダに出る。
コーヒーから出る湯気は優しくゆっくりと空に消えていく。
いいな。なんというか...この空気というか...
何も無いけどそれが心地良さを作ってくれている気がする。
今日はいい日だ。
そう思いながらコーヒーを運ぶも
湯気に触れた唇がまだ早いと飲むのを拒んだ。
語り部シルヴァ
『幸せとは』
自分は精神的な病気持ちだ。
夜は不安で眠れないし寝れたとしても
上司に叱責される夢を見る。
太陽の光は嫌いで最近はご飯を食べる気も失せてきた。
...辛いって感覚も薄れてきたかもしれない。
今生きてるのは死ぬ気力が無いから。
生きるのも死ぬのもめんどくさい。
今もベッドの上で天井を見つめることしか出来ない。
ため息をついているとスマホから
メッセージアプリの通知音が鳴る。
珍しい...誰だろう。
"やあ、今日はゆっくり眠れた?"
最近メッセージをくれる高校の同級生だ。
事情を説明してもないのに何か察したか話しかけてくれる。
人と話すのも久しぶりでちゃんと返せてるかな...
でも、返事を考えてるこの瞬間は心が少し軽くなる。
そんな気がするんだ。
語り部シルヴァ