語り部シルヴァ

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8/16/2025, 11:44:30 AM

『遠くの空へ』


「よし...じゃあやろか。」
おじいちゃんの言葉で
ゴロゴロしていた体を起こして川へ向かう。
川についてお盆でお供えしていた花をそっと川に流す。
昔からの習慣だ。

おじいちゃんはおばあちゃんを亡くしてから
ずっと一人で暮らしている。
歳は自分の年齢に六十を足した歳。
もう随分と歳をとっているがイメージする老人よりも
背骨は真っ直ぐだしボケてはいない。

今日はそんなおじいちゃんの奥さん...
おばあちゃんのお盆を終わらせた。

おじいちゃん曰く
「お坊さんにお経を呼んでもらって
孫の顔も見れたからきっと満足して帰っただろ。
帰る時に何も無いのは寂しいから
こうやって川を使って花を届けるんだ。」
とのこと。

おばあちゃんは俺が物心付く前に
亡くなっちゃったからどんな人かは覚えてない。
でも俺の顔を見て満足してくれるなら毎年会いに来るよ。

どうかあの綺麗な花がおばあちゃんに届きますように。
流れていく花におじいちゃんも俺も手を合わせて目を閉じた。

「ほな...帰ろか。」
おじいちゃんに返事して川を背にして歩き始めた。
バイバイおばあちゃん。また来年。

語り部シルヴァ

8/15/2025, 10:46:14 AM

『!マークじゃ足りない感情』

今はお盆の期間だ。
ご先祖さまや亡くなった家族が帰ってくるとはよく聞く。
よく聞くけれど...

「やっ!また会えたね!」
つい先月亡くなったいとこが
こっちに帰ってくるなんて誰が予想しただろう。
それも俺にしか見えてない。

「いやーお盆って本当に帰って来れるんだね。
なんでかこっちだけど(笑)」
そう言っていとこはまるで生きてるかのように陽気に話す。
こっちは聞きたいことが山ほどあるって言うのに...

「とりあえずお母さんたちに...」
「言っても信じてくれないでしょ(笑)このままでいいよ。」
いとこはそう言って俺の周りをぐるぐると回る。

いやほんとに聞きたいことがあるんだ。
俺のお父さんがいとこのお母さんとデキてたこととか
今も俺の両親がそれについてこっそり喧嘩してることとか...

いとこがこっちに帰ってきたことで
全ての疑問が確信に変わった気がした。

外は入道雲が低い声で唸っている。
もうすぐ嵐が来そうだ。
いとこが嵐に飛ばされないか心配だ。

語り部シルヴァ

8/14/2025, 10:48:15 AM

『君が見た景色』

君からの手紙を開く。
"これを読んでるということは私は..."
そんな冒頭から始まる手紙。

内容は私が記した場所に向かって欲しいとのこと。
早速出かける準備をする。
玄関を出て、角を曲がって、
いつもの駄菓子でアイスを買って...
そのまま真っ直ぐ、商店街を突き抜けて公園へ。
そこで休憩をして学校の正面の道を通って
3つ目の信号を曲がって...
田んぼに挟まれた
緩やかな曲線を描いた道をふちに沿って歩いく。

その先の十字路を曲がって、横を向けば...

「帰ってきちゃったぞ...?」
手紙を読み直したが間違ってはいない。
次のページがあり読んでみる。

"おかえり。私が君と見た景色。綺麗だったよ。
私との思い出を糧に前に進めますように。"

...帰って食べようとしてたアイスも
ドロドロに熔けてしまった。
君と一緒に食べていたアイスクリーム。
君との時間と同じようにもう元には戻らないだろう。

それでも...君の分まで俺は進まないと。
荷物を降ろしてもう一度アイスを買いに玄関を飛び出した。

語り部シルヴァ

8/13/2025, 11:30:25 AM

『言葉にならないもの』

気になる人が出来た。
告白しようと校舎裏に来てもらって
告白しようと思ったが言葉が詰まった。
そんな俺を見てその人はクシャっとした笑顔で
友達から始めよと言ってくれた。

その人はクラスのマドンナ...というほどでは無いが
人脈があって気さくなく人と関われる。
こんな恋愛漫画の相手みたいな人を気になった時点で
もう自分の負けな気がする。
さっさと諦めたらいいのにそれを
自分の中にある何かが許してくれない。

その笑顔をずっと見たいとか
二人で遊びに行ったりとか
そういうありきたりな思いの奥深くにある感情は
どうにも表せれない。

モヤモヤ?イライラ?
君ならわかるのかな。

友達と話してる君を見ていると
視線に気付いたのか君は笑顔で手を振ってくれた。

語り部シルヴァ

8/12/2025, 10:56:51 AM

『真夏の記憶』

いつもの通学路に屋台が並ぶ。
制服姿の友達はみんな私服や浴衣を着ている。
空は屋台の煙が薄く伸ばされ提灯がぼんやりと照らし、
雲が近くまで降りてきているようだ。

カステラ、焼けた鉄板に引かれた油、
虫除けの匂いがどこかしらから匂う気がする。

...昔の夏の思い出。
それだけで早く覚めたい気分だった。

「やっぱり人がいっぱいだよね。」
限りなく再現された声が聞こえて振り向く。
鮮やかな紅色の浴衣を着た君が隣に立っていた。

隣に映える赤い華。
この夢に咲く自分の罪。

語り部シルヴァ

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